「望郷―TOKIORE(I)MIX」山口晃展 | エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Forum

「望郷―TOKIORE(I)MIX」山口晃展
TOKIORE(I)MIX by Yamaguchi Akira

2012.2.11(土・祝)~5.13(日)

もっとも注目される現代美術作家のひとりである山口晃の手により、銀座メゾンエルメスのフォーラムに東京の都市風景が現れるような展覧会が行われます。山口は1969年生まれ。東京藝術大学にて油画を専攻、同大学院修了後、日本美術史と大和絵の深い造詣と、精緻な技術をもとに、独特の想像力とユーモアを持って日常と空想が混ざり合うような作風を確立してきました。2001年には、第4回岡本太郎記念現代芸術大賞優秀賞を受賞、近年では美術展のみならず、書籍や新聞挿絵、パブリックアートなど、活躍の幅を広げています。

東京・広尾に生まれた山口は群馬県桐生市で育ったのち、大学入学にあたり再び東京での生活を始めました。東京というモチーフは、日常的な都市景観のおかしみにおいて際立っており、山口は今までも幾度となく描き作品としてきました。諧謔を織り交ぜつつ、甘美な哀愁に流されつつ、今はなき、慣れ親しんだ風景を色鮮やかにたどることで、故郷への思慕を現してきたのでしょうか。

新作で構成された会場はさながら、山口の代表的な作風のひとつでもある鳥瞰図のみならず、電柱のシリーズやノスタルジックな仕掛け小屋など、さまざまな要素によって立ち現れる東京の街並みそのもの。東京という街が歴史の中で纏ってきた美意識にどこまでも忠実でありながら、時間軸だけがデフォルメされたこの風景に身を投じるとき、私たちは“望郷”の想いを共有します。私たちの身体に染み付いている都市の記憶、日常の中では、見過ごしてしまうようなささやかなその光景。それを丁寧にすくいとり、軽やかに時をとどめ、超越する感覚は、古の街歩きに似た風情があるのです。

トウキョウリミックス、トキヲリミックス、トキオリミックス。
タイトルに含まれる「言葉あそび」に惑わされるように、観るものの感覚もミックス(撹拌)され、見慣れた東京の街が、過去、現在、未来と、時が幾重にも重なった不思議な姿で浮かびあがります。洒脱な現代の絵師とともに、そぞろ歩きへと出かけましょう。

アーティストメッセージ

本日は展覧会にお越し下さり有難う存じます。
主催者よりのお達しで、此(こ)のチラシ用に一文をしたゝめましたので、ご観賞の一助にしていたゞければ幸いです。

さて、電柱の様なものが立っておりますが、〈忘れじの電柱〉と題しました作品です。
「男子メカごころ」とでも云うような心持ちで制作致しました。題名の英訳「エレクトリック・ポールズ」などは、其の辺をよく表わしています。
機能はまるで無く、既存の柱に取りつけられて澄ましているあたり、頼りなくも不逞々々(ふてぶて)しい限りです。
実際の電柱の仕様よりも通信線や低圧線を間引いてすっきりさせておりますので、造花に依(よ)る活け花と云(い)った趣もあります。

次は、床の傾いた部屋様の作品で〈正しい、しかし間違えている〉。
通常私たちは、建物の垂直軸と重力方向が等しい環境に居る訳ですが、この二つがズレると目眩(めまい)や、甚(はなは)だしい場合は転倒を引きおこします。これは経験による体勢維持が、知覚に依る体勢維持を阻害する為におこるもので、経験上の正しさが不適合につながった訳です。
この「正しい」「間違え」「垂直軸」「重力」、他にも立脚面や経験則、床の傾き等々に色々あてはめてお楽しみいたゞこうと云うのが、作品としての言い訳なわけですが、正直な所その昔「豊島園」のアトラクションで体験したあの感覚をもう一度!と云うのが実際です。
ですから、此の場合制作者のエゴとして「作品にかこつけて作っちゃえ!」と云うのは、むべなるかなと頷けるところですが、人としての私は「間違えている」のかもしれません。

そうして最後は〈Tokio山水〉と題しました平面作品でありますが、こちらは今の私が俯瞰しうる東京です。
年代の違う6種類の地図とグーグルマップ、個人的な記憶や思い込みなどに依って描かれています。
筆に墨をつけて描画しますが、描くうちに墨がきれて薄くかすれてきて、終(しま)いにはソフトフォーカスの様になります。また、筆先が擦れてチビてきますので、だんだん描線が太くなってきて線描を諦めなくてはならない所もでてきます。一方の墨は、水分が蒸発してどん〲濃くなるので、かすれた線の後で墨を足した一筆目は、いつも違和感とやりにくさで始まります。そんな事の繰り返しです。
下描きの鉛筆線が其のままの所は、街の表皮が剥がれた様にも建物が払底した様にも見えて、始まる様でも終わった様でもあり、描いた所との配分をどうして呉(く)れようかと、頭を悩ませています。

以上、ごく簡単にさわりだけ申し上げましたが、あまりくだくだしいのもご興を削ぎましょうから此の辺で。
どうぞごゆっくり御覧下さい。
本日は有難う存じます。

山口 晃拝

アーティストプロフィール Artist Profile

山口晃 Akira Yamaguchi
1969年東京生まれ、群馬県桐生市に育つ。96年東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了。
 

開館時間 Opening Hours

月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日   11:00~19:00(最終入場は18:30まで)

基本情報 Information

会期
2012年2月11日(土・祝)~5月13日(日)
休館日: 会期中無休
入場料:無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5‐4‐1 8階 TEL: 03-3569-3300)
主催: エルメス財団