GINZA MAISON HERMÈS

Le Forum

「エマイユと身体」展

シルヴィ・オーヴレ、ジャン・ジレル、内藤アガーテ、ユースケ・オフハウズ、小川待子、フランソワーズ・ペトロヴィッチ、安永正臣

“Enamel and Body/ Ceramics”

by Sylvie Auvray, Jean Girel, Agathe Naito, Yusuké Y. Offhause, Machiko Ogawa, Françoise Pétrovitch, Masaomi Yasunaga

2023.6.17(土)~9.17(日)

2023年夏、エルメス財団は、自然素材を巡る職人技術や手わざの再考、継承、拡張を試みる「スキル・アカデミー」の一環として、書籍『Savoir & Faire 土』を岩波書店より出版いたします。本書は、アクト・スッド社と弊財団の共同編集による仏語版『Savoir & faire La terre』(2016)から選ばれたエッセイやインタビューの翻訳と、日本の作家による8つのオリジナルテキストやインタビュー、ポートフォリオが掲載される予定です。本書籍の刊行を記念し、銀座メゾンエルメス フォーラムでは、関連する陶芸作品を集めたグループ展「エマイユと身体(からだ)」を開催します。

本展では、陶芸に用いられ、火と空気によってガラス質へと変容するエマイユ(釉薬:うわぐすり)という素材に注目しながら、粘土と身体の関係を考察します。陶芸家ジャン・ジレル(1947年フランス サヴォア県生まれ)は本書に寄せた論考「Les Emaux(釉薬)」で、エマイユの性質を下記のように観察しています。

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製陶術が発明されるはるか以前、自然界の産物に魅せられた先史時代の人類は、貝殻、歯、亀の甲羅、ターコイズやラピスラズリや翡翠などの奇石を収集しては、宝石や装身具や副葬品にしている。こうした収集物は、のちに釉薬になるものとどこかしら奇妙な共通性がある。磁器〔ポルセーラ〕という命名の由来になったのはある貝の名前ではなかったか?歯のエマイユ〔=エナメル質〕と言われはしないか?
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7人のアーティストたちは、それぞれ、エマイユがもたらす色彩や光沢、強度などの効果を用いながら、制作の手を進めます。やがて、造形物は身体と融合してゆくかのように、しかし火によって一旦分たれ、新たな生命を抱きながら出現するようにも感じられます。エマイユが悠久の時を奏でるジャン・ジレルの風景画、光沢を持つなめらかな表面から感情が誘い出されるフランソワーズ・ペトロヴィッチ(1964年フランス・パリ生まれ)の動物たち。安永正臣(1982年日本・大阪生まれ)の造形は、灰や骨が私たちのからだ身体の一部であることを思い出させ、シルヴィ・オーヴレ(1974年フランス・パリ生まれ)のフェティッシュな箒は、私たちの日常的な儀式をユーモラスに振り付けます。

また、エマイユがもたらす被膜効果は、私たちの身体を保護する皮膚や幼少期の隠れ家を想起させます。ユースケ・オフハウズ(1985年日本・東京生まれ)は、自分の記憶だけを頼りに小さな建築物を建て、内藤アガーテ(1986年スイス・モルジュ生まれ)は、セラミックの儚さと共に生きるために、あるいはそのパフォーマティブな器の中に隠れるために作品を用いるのです。大地や水に還元されるかのような小川待子(1946年日本・北海道生まれ)の白い地層は、ひびや欠けに現れるエネルギーとともに、私たちを原始の豊穣さで包むでしょう。
 

展覧会ブックレット

展覧会の様子を記録したブックレットをオンラインでご覧いただけます。

「エマイユと身体」展 ブックレット(PDF版)

※掲載内容(文章、画像)の一部及び全てについて、無断での複製、転載、転用などの二次利用はご遠慮ください。

アーティストプロフィール 
Artists Profile

Sylvie Auvray シルヴィ・オーヴレ
1974年パリ(フランス)生まれ。同地を拠点に活動。オーヴレにとって陶芸とは、焼成時に訪れる魔法のような驚きとともに、しなやかで快い量感を力強く造形するものである。作品は、ジュエリーや仮面のように身に着けるものや、人や動物の似姿のトーテムなど、親密で童話のような物語性を持つ。同時に、それらは幼少期の曖昧な恐怖や野蛮な実験など、どこか破壊的な喜びにも溢れているのである。パリ市近代美術館(2021/2017)、ジュネーブ近代現代美術館(2018)、FRACシャンパーニュ・アルデンヌ地域現代美財団(2018)、ル・コンソーシアム(ディジョン、2015)、デイリーアートセンター(ロンドン、2013)、ジャン大公近代美術館(ルクセンブルク、2010)、国立ジョルジュ・ポンピドゥー・センター(パリ、2009)、サーキット現代美術センター(ローザンヌ、2007)、パレ・ド・トーキョー(パリ、2004)などで展示を行うほか、滋賀県立陶芸の森(2022)、カリフォルニア州立大学(ロングビーチ、2019/2017)やチナティ財団(テキサス州マーファ、2016)のレジデンシーにも参加。

Jean Girel ジャン・ジレル
1947年サヴォア県(フランス)生まれ。クリュニー近郊に自身で窯を構え、制作を行う。
14歳から伝統的な陶芸を学び、パリで造形美術の学位を取得した後、画家として活動を始めたが、中国宋王朝時代の陶芸に魅了され、1975年以降、陶芸のみに専念することを決意する。以来「曜変天目」の探求を続け、西洋の技術と極東の伝統が融合した作品を生み出している。 2000年にフランス人間国宝(メートル・ダール)に認定。日本では、東京国立博物館「フランス人間国宝展」(2017) で展示を行うほか、大阪市立東洋陶磁美術館、北京故宮博物館(北京)、国立セーブル装飾美術館(セーブル)、パリ装飾美術館(パリ)、サンカントネール美術館(ブリュッセル)、バウアー財団(ジュネーヴ)、台北国立故宮博物館、青磁博物館(韓国甘津)などで世界各地の多数の博物館に作品が所蔵されている。

Agathe Naito 内藤アガーテ
1986年モルジュ(スイス)生まれ。ローザンヌを拠点に活動。身体とそれを取り巻く環境の相互作用を問う内藤のインスタレーションは、ハイブリッド性を巧みに用いて、相反する知覚を喚起する多義的な世界を生み出す。大学で美術史を学んだ後、CEPV(応用美術学校)及び日本の著名な窯元で陶芸の実習を行った後、ECAL(ローザンヌにある美術学校)で修士課程を修了。ローザンヌを中心に様々な展覧会に定期的に参加するアーティスト活動と並行して、州立病院での「VU.CH, 病院における美術」プログラムの学芸員としてアート作品の展示を通して、患者のグローバル・ケアにも関わる。また、CEPVでは美術の世界に関する知見を生徒たちと共有している。

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■内藤アガーテのインスタレーションを用いたパフォーマンスを会期中に開催いたします。
開館時間を使って、どんなパフォーマンスが見られるでしょうか?詳細は後日オンラインにて公開いたします。
アーティスト:ソー・ソウエン
日時:7月31日(月)、8月2日(水)、8月5日(土) 11:00~19:00 ※申込不要

パフォーマンス:Soh Souen ソー・ソウエン
1995年、北九州生まれ。福岡を拠点に活動。「わたし」や「身体」への興味をもとに絵画、インスタレーション、パフォーマンスなど国内外にて発表を行う。
京都精華大学芸術学部造形学科洋画コース卒業(2019)。主な個展に「絶えず壊れてきたし、壊れ続けている(壊れてはいない)」(rin art association、群馬、2023)、「Why do I have two hands, eyes, and nipples on my both sides? どうして私の手は、目は、乳首は二つあるの?」(GALLERY SOAP、福岡、2022)、「Al Borde」(Taller Sangfer、オアハカ、2022)、「ささやかな叫び」(The Mass、東京、2020)など。また「エグササイズ」(科学技術館エントランス、東京、2023/ 福岡アジア美術館エントランス、福岡、2022)、「Bellybutton and Breathing -お臍と呼吸」(福岡アジア美術館あじびホール、福岡、2022)などパフォーマンス・プロジェクトにも取り組んでいる。福岡アジア美術館レジデンスプログラムに参加(2022)。
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Yusuké Y. Offhause ユースケ・オフハウズ
1985年東京生まれ。フランスと日本にルーツを持ち、現在はジュネ―ヴと東京を拠点に活動を行う。陶器と建築に強い関心を寄せて制作される彫刻やインスタレーションは、アートとデザインの境界の狭間で、ものを本来意図されていた用途からずらしながら、ありふれた形を過去、あるいは未来からの遺物のように考古学的な手法で発見させることを試みる。
ムダック現代デザイン応用芸術美術館(ローザンヌ、2022)、アリアナ美術館(ジュネーヴ、2022)、クラスター・クラフツ・フェア(ロンドン、2021)、シャルメ美術館(シャルメ、2021)、スモールヴィル(ヌーシャテル、2020)、カルージュ国際陶芸ビエンナーレ(スイス、2019)、グラン・ラルジュ=オー・ド・フランス現代美術センター(ダンケルク、2019)、ラ・マレシャルリー・アート・センター(ヴェルサイユ、2018)などで展示を行う。作品はスイス・デザイン賞2018やスイス・アート賞2019で紹介されたほか、美術館にも収蔵されている。ローザンヌ・レナード財団文化助成金を受賞(2019)。

Machiko Ogawa 小川待子
1946年北海道生まれ。現在、神奈川県湯河原町を拠点に活動。
東京藝術大学工芸科卒業後、1970年からパリ国立高等工芸学校を経た後、人類学者の夫の助手として西アフリカ各地へ渡り、同地で陶芸を学ぶ。鉱物の美しさの中に「かたちはすでに在る」という考え方を見いだした小川は、ひびや欠け、釉薬の縮れなどの性質を生かし、つくることと壊れることの両義性を内包する「うつわ」として、始原的な力を宿す作品を制作している。
日本国内の他、ロンドン・フランクフルト・ニューヨークでも個展開催。また、東京国立近代美術館(東京)、神奈川県立近代美術館(神奈川)、豊田市美術館(愛知)、東京オペラシティ アートギャラリー(東京)、ギメ美術館(フランス)、カタール国立美術館(カタール)、メトロポリタン美術館(米国)、ボストン美術館(米国)、ヴィクトリア&アルバート美術館(英国)、岐阜県現代陶芸美術館(岐阜)、愛知県陶磁美術館(愛知)、北海道立近代美術館(北海道)、イェール大学美術館(米国)、アシュモレアン美術館(英国)など国内外多数の美術館に作品が収蔵されている。第58回藝術選奨文部科学大臣賞受賞(2008)。

Françoise Pétrovitch フランソワーズ・ペトロヴィッチ
1964年、パリ(フランス)生まれ。ヴェルヌイユ=シュル=アヴルを拠点に活動。陶芸、ガラス、淡彩画、絵画、版画、映像など多様なメディアを用いて作品制作を行う。動物や花など生命体が宿る作品には、親密さ、生の断片、消失、二重性、移行、残虐性といったテーマが通底しており、曖昧な世界を果敢に侵略しながら、従来の境界を弄び、流動性を重んじ、いかなる解釈からも逃れていくギミックに溢れている。ロマン主義博物館(パリ、2023)、フランス国立図書館(パリ、2021-2022)、エレーヌ&エドゥアール・ルクレール財団(FHEL)(ランデルノー、2020-2021)、ルーヴル美術館ランス別館(2018)などフランス国内外で多数の個展、グループ展に参加。国立ジョルジュ・ポンピドゥー・センターの子供ギャラリー、上海西外灘博物館、ノール県立バレエ・カンパニーなど、大型の壁画や集作の制作も行う。国立ジョルジュ・ポンピドゥー・センター(フランス)、ワッセナーのフォールリンデン私営美術館(オランダ)、国立女性美術館(米国)、イェーニッシュ美術館(スイス)などにコレクションとして収蔵。

Masaomi Yasunaga 安永正臣
1982年大阪生まれ。三重県伊賀市を拠点に活動。一般的な焼き物のつくり方を遡行するように、釉薬に石や金属、ガラスなどを混合した独自の材料を成形し、砂やカオリン(磁器の原料)の地層に埋めて焼成する制作過程に焦点を当てた作風は、実用に縛られない陶芸の新しい表現を模索した戦後日本の前衛陶芸集団「走泥社」の星野暁の実験的な精神を受け継いでいる。大阪産業大学大学院環境デザイン専攻修了。近年の個展に「石拾いからの発見」(ノナカ・ヒル、ロサンゼルス、2023)、「In Holding Close」(Jule Collins Smith Museum of Fine Art、オーバーン、アラバマ、2023)、「夢の交点」(パロマー、ポニャーナラリオ、イタリア、2022)、「遠くを見る」(リッソン・ギャラリー、ニューヨーク、2022)、「Empty Landscape(空虚な風景)」(リビー・レシュゴールド・ギャラリー、バンクーバー、2020)、「安永正臣」(ノナカ・ヒル、ロサンゼルス、2019)、「オリエントの記憶」(ギャラリーうつわノート、埼玉、2018)など。アリアナ美術館(スイス)やヒューストン美術館(アメリカ)に作品が収蔵されている。滋賀県陶芸の森アーティスト・レジデンシ―に参加(2010/ 2020)。

基本情報 Information

会期:2023年6月17日(土)~9月17日(日)
休館日:7月19日(水)、8月9日(水)
※ギャラリーは基本、銀座店の営業に準じております。
※開館日時は予告なしに変更の可能性がございます。随時こちらでお知らせ致します。
入場料:無料
会場:銀座メゾンエルメス フォーラム 8・9階
(中央区銀座5-4-1 TEL 03-3569-3300)
主催:エルメス財団
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

 

関連イベント

1.ギャラリーツアー

展覧会の背景やそれぞれの作品について、フォーラム担当者が解説いたします。
どなたさまもお気軽にご参加ください。

【日時】
7月25日(火)16:00~/18:00~
8月14日(月)16:00~
8月18日(金)18:00~
9月7日(木)16:00~/18:00~


(各60分 日本語のみ)
※予約不要

2.パフォーマンス

本展の出展作家のひとりである内藤アガーテのインスタレーションを用いて、下記の日時でソー・ソウエンとのパフォーマンスを開催いたします。
「わたし」や「身体」への興味をもとに絵画、インスタレーション、パフォーマンスなどの発表を行ってきたソー・ソウエンが、内藤のインスタレーションをひとつの「家(庭)」や「環境」として身を寄せ、開館時間を通して、住む/棲むように過ごします。
また、内藤自身も一部パフォーマンスに加わることで、ソーと共にダイアローグを紡ぐ予定です。

日時:7月31日(月)、8月2日(水)、8月5日(土)
11:00~19:00 ※申込不要

アーティスト:ソー・ソウエン

(終了しました)

ご来場に際してのお願い・ご案内

◆銀座店内混雑緩和のため、ソニー通り側のエレベーターからご案内いたします。
※当面の間、フォーラムへの入退場に店舗内のエレベーターをご使用頂くことができませんのでご注意ください。

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