GINZA MAISON HERMÈS

Window Display

「メッセンジャー」
El mensajero (The messenger)

2025.2.20(木)~5.27(火)
銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイは、街にひらかれた劇場です。さまざまなクリエイターの独創的な視点を通して、エルメスの世界観を表現します。

エルメスの2025年のテーマは「ドローイング」。ウィンドウという空間を使い、さまざまな夢の世界に誘います。

今年最初のウィンドウディスプレイを手掛けるのは、バルセロナ在住のスペイン人アーティスト、ARYZ(アリーズ)です。
アリーズの作品制作は、まずコラージュから始まり、さまざまな要素を組み合わせたベースを作ります。コラージュが完成すると、それをガイドに絵を描きます。イメージのある部分はより細部までリアルに描き、他の部分はより緩やかで抽象的なままに描きます。こうすることで、最終的な作品にコラージュのような雰囲気を残すことができ、細部と流動的な要素の両方を混ぜ合わせることで、ダイナミックで重層的な効果を生み出します。
最近では、歴史的な絵画とより現代的な要素(現代的な対象や言語の使用など)との相互作用を一貫して追求しています。伝統との対話は彼にとって不可欠であり、過去と現在を対話させることで、異なる時代の芸術表現の架け橋を生み出していると言えるでしょう。
今回のウィンドウ制作に際し、アリーズはエルメスを、手工芸の伝統に深いルーツを持ち続けながらも現代世界で生き生きと活動する、まさに伝統と現代を融合した存在として捉えました。そこで、ベラスケスの作品と古典的な大理石の彫刻からインスピレーションを得て、ギリシャ神話のヘルメス(Hermes)神の姿を形作りました。ヘルメス神は迅速な配達や巧みな計画で神々と人間、神々の間を取り持つ使者、翼の生えたサンダルと帽子で世界を飛び回る運動能力の高い青年として書かれることが多いですが、彼は単なるメッセンジャーには留まりません。ヘルメス神はまた、機知に富んだ鋭い頭脳を持ち、旅人や商人、さらには盗賊の守護神でもあります。魂を冥界に導くにせよ、人間界と神界を潜り抜けるにせよ、ヘルメス神は常に動き回り、常に一歩先を行きます。このようなヘルメス神の二面性は、今回のウィンドウの古典的なものと現代的なもの、媒介となることと先導すること、そうした二項のバランスをも映し出しています。
一方で、ペガサス、この壮大な翼を持つ馬の誕生は、少しドキリとするような逸話です。神話では、ペルセウスがメドゥーサの首をはねた瞬間、ペガサスはそのメドゥーサの血の中から飛び出したとされています。そしてこのメドゥーサ討伐という危険な任務に際し、ペルセウスに手を貸すために、いや、むしろ翼の生えたサンダルを貸すためにいたのがヘルメス神でした。この魔法のサンダルはペルセウスに空を飛ぶ能力を与え、メドゥーサの隠れ家に到達し、メドゥーサを倒した後に素早く脱出するためのカギとなりました。そして、強力な翼を持つ純粋なるペガサスは、スピードと優雅さの象徴となります。ゼウスは、ペガサスを星座の中に置くことでペガサスを称えました。そこで、アリーズは今回のウィンドウでペルセウスを通してヘルメス神と関わりのある翼のある馬、ペガサスを右のウィンドウに配置しています。尚、興味深いことに、空飛ぶ馬というアイディアは、古代アジアの文化に起源があるのではないかという説もあります。
 

アーティストプロフィール Artist Profile

アリーズ - オクタヴィ・アリサバラガ ARYZ - Octavi Arrizabalaga

1988年カリフォルニア州パロアルト生まれ。幼少期に移住したスペインのカルデデウを拠点に現在も制作を続けている。同世代の多くがそうであったように2000年代初頭にグラフィティを描き始め、アリーズというニックネームで作品を発表。バルセロナ近郊の冷たく無人の工業地帯を背景に彼のキャラクターや静物画がコントラストを放つパブリックスペースアートで注目を集めた。
その後2008年以降、約10年の間にパブリックスペースアートの舞台は世界各地に広がり、ヨーロッパ以外にもアジア、アメリカ等多数を数える。ここ数年は、アトリエで制作することで絵画の可能性を試しており、壁画制作の即時性にはないコンセプトやアイディアを発展させることができると考え、年間制作する壁画の数を制限し、スタジオワークに力を入れている。2019年には、フランス国内3カ所で開催された展覧会『Pugna』を開催、闘争と権力の乱用をテーマに、人体の動きとダイナムズムを探求した作品群を発表した。
2019年にはルーアンのサンテロワ教会での最初の作品を皮切りに、サイトスペシフィックな大型のインスタレーションでのインターベンションアートを実施。壁画とスタジオ・ペインティングを組み合わせたハイブリッドな形式でより洗練された作品を定期的に生み出している。2024年、プラハでの展覧会『Vestigio』では、アリーズの関心をひいたバロック絵画、彫刻、写真との対話から生まれたシリーズを展示。断片化、解剖学、動きの表現への新たな探求を見せている。同年、国際絵的に有名なポロック・グラスナー財団の助成金授与。