GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ピクニック』
Une Partie de Campagne 

もっと軽やかに:水の流れに沿って
2022.6.4(土)~ 6.26(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2022年のテーマは「もっと軽やかに」。

6月は、長閑な自然の中、永遠に消えることのない愛の輝きを巨匠、ジャン・ルノワールが印象派絵画のように描き出した中編『ピクニック』をお届けします。
 

『ピクニック』
Une Partie de Campagne

1936年/フランス/40分/モノクロ/デジタル上映

監督・脚本・台詞:ジャン・ルノワール
製作:ピエール・ブロンベルジェ
原作:ギィ・ド・モーパッサン『野あそび』
撮影:クロード・ルノワール
音楽:ジョゼフ・コズマ
助監督:ジャック・ベッケル、ルキーノ・ヴィスコンティ、
    アンリ・カルティエ=ブレッソン
出演:シルヴィア・バタイユ、ジャーヌ・マルカン、
アンドレ・ガブリエロ、ジョルジュ・サン=サーンス、
ジャック・B・ブリュニウス、ポール・タン、
ガブリエル・フォンタン、ジャン・ルノワール
配給:クレストインターナショナル

永遠に消えることのない一瞬の愛の輝きを、巨匠ジャン・ルノワールが印象派を思わせる映像で描く美しき名作。1860年、夏のある晴れた日曜日、パリの金物商デュフール氏は妻と義母、娘アンリエットと未来の娘婿アナトールを連れ、郊外へピクニックに出かけた。川沿いに建つレストランを見つけ、昼食を取ろうと傍らの草地に腰を下ろす一行。その様子を店の中から眺めていた地元の青年アンリとロドルフはアンリエットを誘惑しようと彼女に近づく。父親たちが釣りに夢中になっている間に、二人はアンリエットとその母親を各々のボートに乗せ舟遊びへ誘い出すのだが……。1936年に撮影された本作のプリントは完成前に第二次世界大戦が勃発しドイツ軍によって破棄された。だがオリジナルネガはシネマテーク・フランセーズの創設者アンリ・ラングロワによって救出されており、その後プロデューサーのブロンベルジェの執念により編集作業が進められ、1946年にパリで初公開された。

監督について Director

ジャン・ルノワール/Jean Renoir​

1894年9月15日、印象派の画家ピエール=オーギュスト・ルノワールの次男としてパリに生まれる。幼い頃に南仏に移り住み、少年時代を過ごす。1913年に騎兵隊に入隊、第一次世界大戦では銃撃を受け負傷。終戦後は南仏で陶芸制作を行う。1920年、父の絵のモデルであったカトリーヌ・ヘスリングと結婚。4年後、妻を映画女優にすべく陶芸をやめ、A・デュードネと共同で『カトリーヌ』('24/27)を監督した。しばらくは父親の絵を売り資金を捻出する厳しい時期が続くが、1931年の『牝犬』で商業的成功を収める。その後『大いなる幻影』('37)、『ゲームの規則』('39)などを発表。1940年に戦火を逃れて米国に渡り、当地にて映画製作を行った。50年代に入ると『黄金の馬車』('53)など、再びヨーロッパで映画を撮影する。60年代以降は主に伝記などの執筆活動に精力を注いだ。1975年、アカデミー名誉賞受賞。1979年2月12日、カリフォルニア州ビバリーヒルズで死去、フランスのシャンパーニュ地方エッソワで父の近くに埋葬された。

 

作品について About Film

主要な映画監督であれば、未完成の作品が1本くらいはあるものだ。撮影が中断し、未編集のフィルムだけが残される。それが後にドキュメンタリーの素材となり、観客やファンを喜ばせる。ルノワールの中編『ピクニック』も、もう少しで同じ運命を辿るところだった。野外ロケが悪天候に見舞われ、スタジオで撮影するはずだったシーンは手つかずのまま、作品はお蔵入り。ルノワール監督自身もすでに次の現場に移動してしまった。『ピクニック』が日の目を見るのは、その10年後。作品として完成させることをプロデューサーが決意した。撮影済みのカットを編集し、説明的な字幕を2枚加えて物語が整えられた。こうして、ある種の共同制作の結果として『ピクニック』は公開され、各方面から称賛を集めた。ルノワール自身はこの作品の復活に寄与しなかったが、これ以降、『ピクニック』はルノワールの代表作のひとつに数えられるようになった。

しかし、『ピクニック』という作品には、確かに、ルノワールのエッセンスが凝縮されている。他の作品と同じく、ここにも階級関係に対する鋭い観察眼と、恋愛感情の賛美がみられる。ルノワールはこの作品において、恋する気持ちがいかに社会構造によって押しつぶされるかを描きだした。妙齢のアンリエットは、父親から欲得ずくの結婚を強いられ、内なる欲望を抑えていた。

作品の冒頭、パリからやってきたアンリエットと家族は、陽光に満ちた自然にすっかり心を奪われる。アンリエットが楽しそうにブランコをこいでいるあいだ、地元の若い船頭ふたりが誘惑の策略を練っている。牧歌的な雰囲気につられて、アンリエットと母親は感情に身を委ね、若者の誘いを受け入れる。爽やかな日差しのなか、朗らかな時間が流れる。しかし突然の雨によって、愛の歓びに終止符がうたれる。悪天候が人間の心を左右し、悲しい結末を予告する。

この作品において、ジャン・ルノワールは、偉大な画家であるオーギュスト・ルノワールの息子として、父親の印象派時代にオマージュを捧げている。息子のルノワールは父親と渾然一体となりながら、父親にインスピレーションを与えたのと同じ風景を撮影し、同じモチーフを扱い、同じタイプの人間を画面に登場させた。もしわたしたちが、父親が描いた『ぶらんこ』や『セーヌの水浴』、『散歩道』の前に立てば、映画と同じ人々がそこに集い、同じ木漏れ日が川面に揺れているのを見るだろう。自然の美しさは儚く、またたく間に消え去ってしまう。しかし、その儚い美しさが、わたしたちに幸福をもたらす。『ピクニック』は、そのような自然に捧げられた讃歌である。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

公開スケジュール Schedule

【上映日】
6月4日(土)、5日(日)、11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)、25日(土)、26日(日)

【上映時間】
11:00/14:00/17:00

 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。