GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ラッチョ・ドローム』
Latcho Drom

エルメスのオデッセイ:旅する民
2021.7.3(土)~ 7.23(金・祝)

(c)KG Productions

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2021年のテーマは「エルメスのオデッセイ」。

7月は、インドから始まりスペインへと至るロマの音楽と踊りで彩られた旅。ロマの千年にわたる歴史と記憶を辿る『ラッチョ・ドローム』をお届けします。

『ラッチョ・ドローム』
Latcho Drom

1993年/フランス/103分/カラー/35mm

監督・脚本:トニー・ガトリフ
製作:ミシェル・レイ=ガヴラス 
撮影:エリック・ギシャール
音楽:アラン・ヴェベール
美術:ドニ・メルシェ
録音:ニコラ・ネジュロン
出演:タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、ケ・ラン、ザ・ミュージシャンズ・オブ・ナイル、チャボロ・シュミット、ドラド・シュミット、レメディオス・アマジャ、ラ・カイータ
協力:アダンソニア

トニー・ガトリフが自らのルーツであるロマをテーマにした長編作品。インドから始まりスペインへと至るロマの歴史を辿るこの作品は、ドキュメンタリーでもなく史劇でもない、千年にわたる旅の記憶である。ガトリフは本作を音楽映画と位置づけるが、ロマの音楽はそれ自体が彼らの歴史を刻んだメモリーだ。ルーマニアのチャウシェスク政権崩壊を歌った「独裁者のバラード」、スロバキアの老女が歌うホロコーストへの鎮魂歌「アウシュビッツ」。フランスのロマの祭りでは守護聖人サラの像の前でギターとバイオリンが奏でられ、アンダルシアの丘ではフラメンコの手拍子の中、魂の叫びとも言うべき絶唱が響き渡る。苦悩とともにありながらも生きる力と歓びに溢れたロマの人々を描いた本作は、ガトリフによる民族への賛歌である。

監督について Director

トニー・ガトリフ/Tony Gatlif

1948年アルジェリア生まれ。父親はカビール人、母親はアンダルシア地方出身のロマ。60年代にフランスに渡り演劇を学ぶ。1975年に長編映画を初監督。1990年『ガスパール/君と過ごした季節(とき)』で人気を博す。2004年『愛より強い旅』で第57回カンヌ国際映画祭監督賞を受賞。2009年『Korkoro』でモントリオール世界映画祭最優秀作品賞を受賞。その他に『ガッジョ・ディーロ』('97)、『ベンゴ』('00)などロマを題材にした作品を多数発表している。2012年にはステファン・エセルの著書に端を発するINDIGNADOS(怒れる者たち)運動を扱った『怒れ!憤れ! ステファン・エセルの遺言』を監督した。
 

作品について About Film

長い伝統をもつ放浪の民。彼らは、ジプシー、ロマ、ボヘミアン、ツィガーヌと複数の名前で呼ばれる。本作は、そんな彼らにカメラを据えたドキュメンタリーにみえるかもしれない。一族郎党と馬をひきつれ、彼らは隊列を組み、インドを旅立った。砂漠を渡り、村々を抜け、季節の移ろいに合わせ、目的地のスペインまで、はるかな道のりを進んでいく。
ロマーニ語で「よい旅を」を意味する『ラッチョ・ドローム』は、事実、音楽にみちた長い旅そのものである。画面には、その土地土地の歌と踊りがひたすら映しだされる。詩人ボードレールが「炯々と瞳の燃える、預言者の力を持つた一族」*と詠った者たちの魂は、歌と踊りでできているのだ。
数世紀にわたる流浪の日々が、ナレーションもセリフも挟まずに淡々と映しだされる。彼らはその長い月日のあいだに、いくつもの堅固なアイデンティティを鍛えあげた。イスタンブールでも南仏でも、彼らは自分たちの言葉、儀式、所作をかたくなに守りながら、それぞれの土地に順応していった。いつ消えてなくってもおかしくない固有の文化を、彼らは慎重に若い世代に伝えていく。歌と踊りに彩られたこの旅は、かならずしも事実そのものではない。トニー・ガトリフは彼らに演技の指示を出しているし、おそらく、色とりどりの華麗な衣装もガトリフが着せたものである。しかし、ガトリフは、エキゾチシズムを狙っているわけではない。民族学的な記録映画を意図したわけでもない。母親がロマだったガトリフにとって、この映画は自分のルーツを探すための内省の旅であった。ガトリフがとった手法の正しさに疑いの余地はないだろう。祖国を失い、無数の試練を受けながら、決して誇りを失わなかったひとびとの姿がリアルに表現されている。映画は子供たちの映像で始まり、同じく子供たちの映像で終わる。どの子供の歌声も力づよく、どの子供もおどろくほど大人びている。まるで、人生の過酷さを今から担っているかのようだ。それにもかかわらず、彼らの姿や声には、生命力と希望が感じられる。
カンヌ映画祭で『ラッチョ・ドローム』が上映された夜、メイン会場前の大階段で、即興のコンサートがにぎやかに開催された。ふだんは、きらびやかなドレスをまとった女優たちの舞台となるレッドカーペットに、ガトリフは、本作に出演したミュージシャンのうち数名を呼びよせたのだ。いつもは邪険に追い払われるロマが、このときだけは、ひとびとの賞賛を浴びることになった。

*シャルル・ボードレール『悪の華』1857年(鈴木信太郎訳)

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

公開スケジュール Schedule

【上映日】
7月3日(土)、7月4日(日)、7月10日(土)、7月11日(日)、7月17日(土)、7月18日(日)、7月22日(木・祝)、7月23日(金・祝)
※7月24日(土)以降は、8月のプログラムの上映を予定しております。

【上映時間】
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。