『注目すべき人々との出会い』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『注目すべき人々との出会い』
Meetings with remarkable men

語りつがれる“ものがたり” Ⅴ
2010.10.23(土)~11.27(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『注目すべき人々との出会い』Meetings with remarkable men

1979年/アメリカ/カラー/107分/35mm/ 英語​

監督:ピーター・ブルック
製作:スチュアート・ライオンズ
原作:G・I・グルジェフ
脚色:ジャンヌ・ド・ザルツマン、ピーター・ブルック
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:トーマス・ド・ハルトマン、ローレンス・ローゼンタール
出演:ドラガン・マクシモヴィッチ、テレンス・スタンプ、ウォーレン・ミッチェル、ドナルド・サンプター
フォトクレジット:© IAGF
少年グルジェフは日常生活のなかで起こる説明し難い体験を、常識という名の平凡な言葉で説明し、やり過ごしながら生きることに疑問を感じていた。民間伝承の語り部でもあった父親は、生に関するグルジェフの質問に示唆に富む答えを与え、「自分は将来何になるべきか」という問いかけに対してはこう答えた。「自分自身になりなさい」と。
グルジェフは青年となってもなお、人間の生についての疑問を持ち続けていた。高価な古文書も、書物も真実を示してはくれなかったが、同じような問題意識を分かち合う心強い仲間たちとの出会いが彼をさらなる探求へと導いた。ある日、偶然ある遺跡で見つけた羊皮紙に、紀元前2500年に設立され、今なお活動をしている秘密教団「サルムング」の存在に関する記述を発見、その事実に魅了されたグルジェフは危険を押し切ってその教団を見つける旅に出る。エジプト、ペルシア、アフガニスタン、チベットを行き来し、大河や砂漠を越える過酷な旅の果て、彼は厳重な秘密主義体制に守られたサルムング教団の僧院に到着する。そこでは不思議な音とリズムがこだまし、古代から連綿と継承されている思想を、身体的な動きを通じて理解するための、聖なる舞踏や音楽を媒介とした鍛錬が続いていたのだ。
 

作品について About Film

『注目すべき人々との出会い』(邦訳:めるくまーる、1981年刊)はゲオルギー・イヴァノヴィチ・グルジェフの若かりし日の冒険物語である。これは日記でもなければ、ありふれた物語でもなく、さまざまな出来事と心揺さぶる出会いとを次々と綴ったものである。これらの体験に大いに啓発されて、グルジェフは人生や生命の秘密に開眼し、さらに、おそらく何らかの啓示を受け、これに導かれて二十世紀屈指の非凡、かつ賛否両論を呼んだ魂の冒険に挑んだに違いない。
グルジェフの前半生は謎に包まれたままである。アジアを巡る旅に何度も出掛け、訪れる人もほとんどいない国に足を踏み入れ、道々いたるところで、まさしく「注目すべき人々」に出会い、真の叡智とその力、肉体と精神のパワー、忘れ去られた諸科学の原理を教えられた。
これらの冒険のなかで、不思議な符合や巡り合わせが決定的な役割を演じることがしばしばあったため、それが単なる偶然の重なりではなく、すべてが、ある一つの必然によって導かれた一連の行為であることが明らかになる。この必然が我々に何を伝えようとしているのかは理解できないが、それがやがて眼に見えない人間の思考や行為の下に隠れた領域で大きく広がり、そこに深く刻み込まれることになる。
こうした理由もあって、宇宙の秘密を解き明かそうと決意した一握りの同志たちで結成され、グルジェフが「真理の探求者たち」と命名した小集団は、遠い国に向かって旅立つ前にミーティングを重ねた。これらの国は往々にして危険で、強烈な色彩にあふれ、焼け付くような光が降り注いでいる……。
秘密発見の旅。一部のロマン派も同じ目的で旅をした。なかでもドイツ人作家ノヴァーリスは、『ハインリッヒ・フォン・オフターディンゲン』(邦訳:『青い花』岩波文庫、1989年)の物語のなかで、不可思議なものを続々と登場させ、この世と並行してもうひとつの魔法の世界が存在することを示してみせた。
こうして、物語とそのメタファーは一編の寓話となった。
ピーター・ブルック監督は、傑作映画『注目すべき人々との出会い』において、私淑するグルジェフの思想を決してねじ曲げたり、滑稽化したりしなかった。
出会いの不思議さ、風景の圧倒的美しさ、微妙な色の移ろい、ざらつく土にまみれる布。台詞はほとんどないが、ピーター・ブルックの映画作家、演劇人としての眼を通すと全てのものが命と意味を帯びてくる。
この映画を見てもなお、グルジェフがはたして本当に豪語する通り、人間の行動や自然界の変動を説明する世界共通の秘密の表象記号の一部を発見したのかと訝しむ者がいるだろうか?その教えは代々伝承されてきたのだが、時代の闇の中に埋もれてしまっているという。
聖修道院に向かう道の曲がり角から、いきなり踊り手たちが現れ、グルジェフから実際に教わった方法(これは今日もなお、門外不出の秘伝とされている)で体を動かすのを目の当たりにするとき、我々はそれらの身振りの放つ知性と心地よい調和とに驚かされる。
コマのように回転するイスラム教修道僧たちの秘伝の教えはグルジェフの世界に通じるところがある。彼らは己の身振りを他の司祭らの姿勢と完璧に調和させている。
第二次大戦中、多くの研究者、芸術家、著述家がこれらのワークグループを追いかけた。そこでは、即興的にグルジェフ自らが教えることもたびたびあった。
ピーター・ブルックはグルジェフの相続人ザルツマン夫人と知遇を得て、彼女の主催する活動グループのいくつかに参加していたため、グループを卑俗化から護っている慣習、伝統、沈黙主義をよく心得ている。
グルジェフは繰り返し言ったものだ:「教えを受けるには、それを受け取る能力がなければならない」と。
ただし、師から弟子への伝授は、通常の言語や言説を介することはめったになく、むしろ次々と啓示を与え、それがもたらす効果を介して伝えられるのが原則だ。
だから、これは決して本来の意味での「知」ではなく、「真理」であり、その次元はフロイト、ニーチェ、ホフマンスタールらが教えたものに迫る。
現存する数少ないグルジェフの写真をまじまじと見つめると、石のなかにはめ込まれた二片の小さな金塊を思わせるその瞳に宿る強さと不安に驚かされる。この男は極限の「真理」と、その最も深遠な帰結とに関わり合ってしまったに違いない。
この全編に詩情をたたえる、素晴らしい映画を撮ったピーター・ブルックに感謝しなければならない。
グルジェフの本当の教えは、彼の生き方の原則のなかにある。それが何なのかを、これらの燃えるように鮮やかな映像が我々にはっきりと指し示してくれる。

パトリック・バンサール(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
10月23日(土)、10月30日(土)、11月6日(土)、11月13日(土)、11月20日(土)、11月27日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。