GINZA MAISON HERMÈS
Skills Academyスキル・アカデミー
「金属に学ぶ、五感で考える」夏のオープンクラス
Leonor Serrano Rivas, 《Where We Expect to Find Flowers n3》, 2025 Courtesy of the artist and carlier | gebauer
Photo: Roberto Ruiz
エルメス財団では、2021年より自然素材を巡る職人技術や手わざの再考、継承、拡張を試みるプログラム「スキル・アカデミー」を開催しています。木(2021~2022年)、土(2023~2024年)に続く三つ目の素材として、「金属(メタル)」をテーマにとする2025~2026年は、書籍『Savoir & Faire金属』の出版、展覧会、ワークショップの開催など様々な体験を通して、広い観客層のみなさまと、一緒に探求を行ってゆきます。
金属(メタル)は、鋏、機械、建物など私たちの生活に欠かせない素材でありながらも、自然の中にある身近な素材として感じることは少ないのではないでしょうか。地球上にある全元素のうち約80%を占めると言われ、青銅器時代から現代まで人類の文明と共に歩んできた金属は、原材料となる鉱物や加工技術の多様性や解釈の両価性といった特有の性質を持っています。
本企画「夏のオープンクラス」は、今春に開催した中高生対象のワークショップ「金属に学ぶ、五感で考える」に得た出会いを入り口に、より多くの方々とともに金属について学びのプラットフォームを目指します。目で触れる展示、手や耳で考えるワークショップやトークなどのイベントを組み合わせながら、「金属(メタル)」の自在で多様な表情(テクスチャ)をみなさまと共に発見し、金属との関わりを再構築することを目的としています。
1.金属と対話する:3組のアーティストによるグループ展「結合」展
本展は、金属のミクロな構造やメカニズムの探究によって進化してきた科学・技術史を参照しながら、実験的な手つきで金属と対話を行う3組のアーティストの実践を通して、金属と身体の連鎖的な「結合」の在り方を探るものです。
前近代的な知識や見過ごされてきた技法に、人間以外の存在との関係性を変容させる「想像の道具」としての可能性を見出すレオノール・セラーノ・リヴァスは、無機物(金属)と有機物(植物)が結合したハイブリッドな生態系へと観客を誘います。電解溶液の中で金属の被膜を生成する電気鋳造を応用することで、朽ちゆく植物の身体を、金属の「第二の皮膚」で保護し、金属が植物を宿主として結晶化する様を作品とします。過去の時間が凝縮された鉱物から精製された金属が、再び鉱物:自然界へと永い時間をかけて還っていく時間の蓄積が、ひとつの生を超えたフォルムとして立ち上がるように見えます。
ハイブリッドなリヴァスによる植物の傍らで、金属の甲羅に覆われたPlayfoolによるカメ型ロボットは、周囲の環境に呼応しながら自律的に動き、私たちに接近します。カメに手で触れ、コミュニケーションを図ろうとする時、私たちは電気や電子機器を通して、目に見えない金属のふるまいに日常的に関わっていることに気づかされます。
また、熱を加えられることで金属原子から分離した電子は、その不安定な状態から安定した軌道に戻ろうとする瞬間に金属固有の「色(光の波長)」として知覚されます。この炎色反応の原理を応用したのが花火です。また、花火に欠かせない火薬の主成分である硝石が採取できなかった日本ではかつて、土壌中の微生物の働きによって有機物とカリウム(金属)を結合させることで硝石を製造してきました。花火師としても活動する島田清夏は、魔除けや祝祭、鎮魂など人々の様々な想いを投影する求心的なスペクタクルとなってきた花火の背景にある物質性を問いかけます。
これらのミクロな電子のふるまいからもたらされる多様な作品たちは、相反する要素においても互いを変容させ、錯(まざ)りあうことができる開かれた素材としての「金属」の姿を表しています。金属と非金属、人工と自然、生命と非生命などの結合は、一見対立するものが、互いの可能性を補完しながら、共にひとつの新たな現象や環境を作り出す、不可分な存在であることを私たちに意識させることでしょう。
ARTISTS
Leonor Serrano Rivas レオノール・セラーノ・リヴァス
1986年、マラガ(スペイン)生まれ。同地を拠点に活動。前近代的な知識や見過ごされてきた技法に関する研究から始まり、彫刻、映像、舞台美術の狭間で、非線形で流動的な夢の領域へ誘うように、虚構と現実の境界を曖昧にする空間体験を構築する。作品は個別のオブジェクトとしてではなく、道具のようにふるまい、物質、光、時間が相互に作用し、変容するプロセスを活性化させながら、空間、イメージ、構造、そして身体の階層関係を解体し、不安定かつ開かれた知覚を生成させる環境として機能する。近年の主な個展に、「Here Be Dragons」(Carlier | Gebauer、ベルリン、2025)、「Para un ser sumergido」(Le Lait Centre d’Art、アルビ、フランス、2025)、「Natural magic」(ソフィア王妃芸術センター、マドリード、2022~23)など。スレード美術学校で博士号を、ゴールドスミス・カレッジで美術学修士号を取得。
Playfool
ダニエル・コッペン(ロンドン生まれ)とマルヤマ・サキ(福島生まれ)によるアート・デザインユニット。現在はロンドンを拠点に活動。あそびを媒介に、人間の主体性とテクノロジーとの変わりゆく関係性に介入しながら、実験的なゲームやインタラクティブなインスタレーションといった参加型の作品形式で、鑑賞者と共にテクノロジーを想像し直すような体験をつくる。 Science Gallery (モンテレイ、メキシコ、2025)、アルスエレクトロニカ(リンツ、オーストリア、2024)、V&A Museum (英国、2022)など世界各地で作品が紹介されている。CCBT(Civic Creative Base Tokyo)2023年度フェローシップ。
島田清夏 Sayaka Shimada
東京生まれ。同地を拠点に活動。大学で映像を学ぶ過程で花火と出会い、卒業後は花火師として活動。花火の物質性・火薬学・文化的背景に至る領域横断的な研究を通じて、メディウムの再構築による新たな問いを提示する。花火の他にも、火・雷・放射線・水などの現象をモチーフに作品制作を行っている。東京藝術大学大学院で博士課程修了。近年の主なグループ展に、「文化庁メディア芸術支援事業成果展」(東京、2026)、「ATAMI ART GRANT 2022」(静岡、2022)、「第12回恵比寿映像祭 - 時間を想像する-」(東京、2020)など。野村美術賞受賞(2026)。また、国内外の花火大会に演出家として参加しており、2025年にはドイツ開催の国際花火競技会で優勝。
SCENOGRAPHY
奥山慎 Shin Okuyama
ジュエリー・デザイナー。1982年、長崎生まれ。同地を拠点に活動。伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生み出されるそのフォルムには、素材や身に纏う人のアニマを内包しながら解放する、オブジェとしての重厚感と現代的な軽やかさが共存する。東京藝術大学工芸科卒業。
EVENT関連企画
プレ・ワークショップ:スチールの足場で、建築する
工事現場で使われる「足場」を見たことはありますか。「足場」はふつう、建物が完成すると取り外されてしまう脇役的存在ですが、会場となるSKACでは、「足場」が主役となるアクティブな空間が作られています。このワークショップでは、DAIKEI MILLSのみなさまと一緒に、足場の仕組みを学びながら、建築づくりを体験しましょう。
講師:DAIKEI MILLS 日時:① 2026年7月11日(土)14:00-16:00 ② 2026年7月12日(日)14:00-16:00 対象:10歳以上 ※工具をつかった作業や高所の作業をする可能性があります。 人数:各回15名程度 申込:2026年6月18日(木)より/抽選制 | ご応募はこちら
ワークショップ:素材がジュエリーになるまで
鍛(たん)金(きん)を知っていますか。金属を叩いて延ばし、形を作る技法です。このワークショップでは、金属線や板が、チェーンやモチーフとなり、そして身につけられるジュエリーになるまでをジュエリー・デザイナーの奥山慎さんと一緒に体験しましょう。
講師:奥山慎(ジュエリー・デザイナー)日時:① 2026年7月25日(土)13:00-16:00 ② 2026年7月26日(日)13:00-16:00対象:10歳以上人数:各回15名程度 ※工具をつかった作業が発生する可能性があります。申込:2026年6月18日(木)より/抽選制 | ご応募はこちら
展示ガイドツアー
申込不要、出入り自由のガイドツアーです。解説を通して金属を身近に感じましょう。日時: 毎週 金・土・日曜日 16:30-17:00対象:10歳以上申込:不要
今後予定しているイベント
・アーティスト・トーク:レオノール・リヴァス 7月18日(土)14:00-15:10・アーティスト・トーク:Playfool 7月19日(日)14:00-15:10・金属で遊ぶ体験イベント(申込不要) 8月2日(日)、9日(日)・花火ワークショップ
2.中学生・高校生向け「春のワークショップ」の成果発表プレゼンテーション
2026年春の5日間、10組の様々な専門家を迎え、中学生・高校生のみなさまと共に、橋、タワーなど人間の身体スケールを超えたものづくり、はさみ(道具)や時計など職人の手わざ、また、彫刻、ダンス、音楽といった芸術表現を通して、「金属の入り口」に立った春のワークショップの成果を、金属に触れることで紡ぎだされた言葉、実際の道具や記録映像とともに報告します。
スキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える」夏のオープンクラス2026年7月15日(水)~8月16日(日)
開館時間:11:00~19:00休館日:月曜日・火曜日 ※ただし、7/20(月・祝)、8/11(火・祝)は開館会場:SKAC (SKWAT KAMEARI ART CENTRE) 〒125-0002 東京都葛飾区西亀有3-26-4
主催:エルメス財団
これまでの活動
メゾンエルメスのアート・ギャラリー「ル・フォーラム」、ミニシアター「ル・ステュディオ」、そのほかのイベントのご予約については以下より承っております。イベントの予約システムはこちら(アカウント新規登録、予約の確認・変更)