GINZA MAISON HERMÈS
Skills Academyスキル・アカデミー
金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス
スキル・アカデミー「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」展示風景(2026年)
© Nacása & Partners Inc./ Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
エルメス財団では、2021年より自然素材を巡る職人技術や手わざの再考、継承、拡張を試みるプログラム「スキル・アカデミー」を開催しています。木(2021~2022年)、土(2023~2024年)に続く三つ目の素材として、「金属(メタル)」をテーマにとする2025~2026年は、書籍『Savoir & Faire金属』の出版、展覧会、ワークショップの開催など様々な体験を通して、広い観客層のみなさまと、一緒に探求を行ってゆきます。
金属は、はさみ、機械、建物など私たちの生活に欠かせない素材でありながらも、自然の中にある身近な素材として感じることは少ないのではないでしょうか。地球上にある全元素のうち約80%を占めると言われ、青銅器時代から現代まで人類の文明と共に歩んできた金属は、原材料となる鉱物や加工技術の多様性、そして解釈の両価性といった特有の性質を持っています。
本企画「夏のオープンクラス」 は、2026年の春と夏の2つのピリオドで、金属のものづくりに間近に触れ、素材の本質に迫る体験プログラム「金属に学ぶ、五感で考える」の一環として、中高生を対象に開催した「春のワークショップ」の報告展示を入り口に、実験的な手つきで金属と対話を行う3組のアーティストによるグループ展「結合」を通して、より多くの方々と金属について探求を深める学びのプラットフォームを目指します。目で触れる展示に、手や耳で考えるワークショップやトークなどの体験イベントを組み合わせながら、金属の自在で多様な表情(テクスチャ)をみなさまと共に発見し、金属との関わりを再構築することを目的としています。
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ART EXHIBITION
「結合」4組のアーティストによるグループ展
「夏のオープンクラス」の中心となるグループ展「結合」は、金属のミクロな構造やメカニズムの探究によって進化してきた科学・技術史を参照しながら、実験的な手つきで金属と対話を行う4組のアーティストの実践を通して、金属と身体の連鎖的な「結合」の在り方を探るものです。
前近代的な知識や見過ごされてきた技法に、人間以外の存在との関係性を変容させる「想像の道具」としての可能性を見出すレオノール・セラーノ・リヴァスは、無機物(金属)と有機物(植物)が結合したハイブリッドな生態系へと観客を誘います。電解溶液の中で金属の被膜を生成する電気鋳造を応用することで、朽ちゆく植物の身体を、金属の「第二の皮膚」で保護し、金属が植物を宿主として結晶化する様を作品とします。過去の時間が凝縮された鉱物から精製された金属は、再び鉱物という自然界へと永い時間をかけて還っていき、その時間の蓄積がひとつの生を超えたフォルムとして立ち上がるように見えます。
ハイブリッドなリヴァスによる植物の傍らで、金属の甲羅に覆われたPlayfoolによるカメ型ロボットは、周囲の環境に呼応しながら自律的に動き、私たちに接近します。カメに手で触れ、コミュニケーションを図ろうとする時、私たちは電気や電子機器を通して、目に見えない金属のふるまいに日常的に関わっていることに気づかされます。
また、熱を加えられることで金属原子から分離した電子は、その不安定な状態から安定した軌道に戻ろうとする瞬間に金属固有の「色(光の波長)」として知覚されます。この炎色反応の原理を応用したのが花火です。また、花火に欠かせない火薬の主成分である硝石が採取できなかった日本ではかつて、土壌中の微生物の働きによって有機物とカリウム(金属)を結合させることで硝石を製造してきました。花火師としても活動する島田清夏は、魔除けや祝祭、鎮魂など人々の様々な想いを投影する求心的なスペクタクルとなってきた花火の背景にある物質性を問いかけます。
ジュエリーを手掛ける奥山慎は、伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生み出されるフォルムを用いてサイトスペシフィックなアプローチを行います。空間にジュエリーと身体の親密なアニマを解放するかの如く、SKACの空間に奥行きをもたらしてゆきます。
これらのミクロな電子のふるまいからもたらされる多様な作品たちは、相反する要素においても互いを変容させ、錯り(まざり)あうことができる開かれた素材としての「金属」の姿を表しています。金属と非金属、人工と自然、生命と非生命などの結合は、一見対立するものが、互いの可能性を補完しながら、共にひとつの新たな現象や環境を作り出す、不可分な存在であることを私たちに意識させることでしょう。
ARTISTS
レオノール・セラーノ・リヴァス Leonor Serrano Rivas
1986年、マラガ(スペイン)生まれ。同地を拠点に活動。前近代的な知識や見過ごされてきた技法に関する研究から始まり、彫刻、映像、舞台美術の狭間で、非線形で流動的な夢の領域へ誘うように、虚構と現実の境界を曖昧にする空間体験を構築する。作品は個別のオブジェクトとしてではなく、道具のようにふるまい、物質、光、時間が相互に作用し、変容するプロセスを活性化させながら、空間、イメージ、構造、そして身体の階層関係を解体し、不安定かつ開かれた知覚を生成させる環境として機能する。近年の主な個展に、「Here Be Dragons」(Carlier | Gebauer、ベルリン、2025)、「Para un ser sumergido」(Le Lait Centre d’Art、アルビ、フランス、2025)、「Natural magic」(ソフィア王妃芸術センター、マドリード、2022~23)など。スレード美術学校で博士号を、ゴールドスミス・カレッジで美術学修士号を取得。
Playfool
ダニエル・コッペン(ロンドン生まれ)とマルヤマ・サキ(福島生まれ)によるアート・デザインユニット。現在はロンドンを拠点に活動。あそびを媒介に、人間の主体性とテクノロジーとの変わりゆく関係性に介入しながら、実験的なゲームやインタラクティブなインスタレーションといった参加型の作品形式で、鑑賞者と共にテクノロジーを想像し直すような体験をつくる。 Science Gallery (モンテレイ、メキシコ、2025)、アルスエレクトロニカ(リンツ、オーストリア、2024)、V&A Museum (英国、2022)など世界各地で作品が紹介されている。CCBT(Civic Creative Base Tokyo)2023年度フェローシップ。
島田清夏 Sayaka Shimada
東京生まれ。同地を拠点に活動。大学で映像を学ぶ過程で花火と出会い、卒業後は花火師として活動。花火の物質性・火薬学・文化的背景に至る領域横断的な研究を通じて、メディウムの再構築による新たな問いを提示する。花火の他にも、火・雷・放射線・水などの現象をモチーフに作品制作を行っている。東京藝術大学大学院で博士課程修了。近年の主なグループ展に、「文化庁メディア芸術支援事業成果展」(東京、2026)、「ATAMI ART GRANT 2022」(静岡、2022)、「第12回恵比寿映像祭 - 時間を想像する-」(東京、2020)など。野村美術賞受賞(2026)。また、国内外の花火大会に演出家として参加しており、2025年にはドイツ開催の国際花火競技会で優勝。
奥山慎 Shin Okuyama
ジュエリー・デザイナー。1982年、長崎生まれ。同地を拠点に活動。伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生み出されるそのフォルムには、素材や身に纏う人のアニマを内包しながら解放する、オブジェとしての重厚感と現代的な軽やかさが共存する。東京藝術大学工芸科卒業。
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REPORT OF SPRING WORKSHOPS
中学生・高校生向け「春のワークショップ」の報告展示
2026年春の5日間、10組の様々な専門家を迎え、中学生・高校生のみなさまと共に、橋、タワーなど人間の身体スケールを超えたものづくり、はさみ(道具)や時計など職人の手わざ、また、彫刻、ダンス、音楽といった芸術表現を通して、「金属のスキル」の入り口に立った春のワークショップの成果を、体験を通して紡ぎだされた言葉、実際の道具や記録映像とともに報告します。
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EVENT
関連企画
ワークショップ:金属の遊び場(申込不要)
はさみやトンカチなど、金属製の道具を使ったり、アルミ棒など金属の素材を用いたりして、工作してみましょう。不思議な楽器で遊んだり、腕時計の小さなパーツをピンセットでつまんでみたり、関根秀樹さんと一緒に体験しましょう。
講師:関根秀樹(和光大学)
申込:不要日にち:① 2026年8月2日(日) ② 2026年8月9日(日)
時間:13:00 ~ 16:00のあいだ、出入り自由。
ただし、状況によって時間と人数を制限させていただきます。対象:10歳以上~年齢制限なし
※ご参加いただく場合、みなさまに「参加許諾書および同意書」にご署名いただきます。※未成年のかたのみでのご来場・ご参加はできません。受付時に保護者の方による「参加許諾書および同意書」へのご署名をいただきます。※本ワークショップは当日の任意参加のイベントのため、レクリエーション保険が適用されません。ご了承ください。
ワークショップ:線香花火を作ろう
出展作家のひとりであるアーティスト/花火師の島田清夏さんと、線香花火をづくりを体験します。つくった花火を最後はみなさんで鑑賞しましょう。
講師:島田清夏日時:① 2026年8月15日(土)17:00-19:30 ② 2026年8月16日(日) 17:00-19:30対象:10歳以上※工具や刃物をつかった作業をする可能性があります。※花火の鑑賞は、近隣の公園に移動して行います。
人数:各回15名程度 申込: こちらから | 抽選制 【申込期間】7月17日(金)~8月3日(月)23:59
※当選発表8月4日(火)
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展示ガイドツアー
申込不要、出入り自由のガイドツアーです。解説を通して金属を身近に感じましょう。日時: 毎週 金・土・日曜日 16:30-17:00対象:10歳以上申込:不要
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プレ・ワークショップ:スチールの足場で、建築する
工事現場で使われる「足場」を見たことはありますか。「足場」はふつう、建物が完成すると取り外されてしまう脇役的存在ですが、会場となるSKACでは、「足場」が主役となるアクティブな空間が作られています。このワークショップでは、DAIKEI MILLSと一緒に、足場の仕組みを学びながら、建築づくりを体験しましょう。
講師:DAIKEI MILLS 日時:① 2026年7月11日(土)14:00-16:00 ② 2026年7月12日(日)14:00-16:00 対象:10歳以上 ※工具をつかった作業や高所の作業をする可能性があります。人数:各回15名程度 終了しました
アーティスト・トーク1:レオノール・セラーノ・リヴァス
日時:7月18日(土)14:00-15:10対象:中学生(13歳)以上 ※英日の逐次通訳あり人数:各回40名程度終了しました
アーティスト・トーク2:Playfool
日時:7月19日(日)14:00-15:10対象:中学生(13歳)以上 ※英日の逐次通訳あり人数:各回40名程度終了しました
ワークショップ:素材がジュエリーになるまで
鍛金(たんきん)を知っていますか。金属を叩いて延ばし、形を作る技法です。このワークショップでは、金属線や金属板が、チェーンやモチーフとなり、そして身につけられるジュエリーになるまでをジュエリー・デザイナーの奥山慎さんと一緒に体験しましょう。
講師:奥山慎(ジュエリー・デザイナー)日時:① 2026年7月25日(土)13:00-16:00 ② 2026年7月26日(日)13:00-16:00対象:10歳以上 ※工具をつかった作業が発生する可能性があります。人数:各回15名程度終了しました
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スキル・アカデミー
金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス2026年7月15日(水)~8月16日(日)
開館時間:11:00~19:00休館日:月曜日・火曜日※ただし、7/20(月・祝)、8/11(火・祝)は開館会場:SKAC (SKWAT KAMEARI ART CENTRE)〒125-0002 東京都葛飾区西亀有3-26-4
主催:エルメス財団
これまでの活動
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