GINZA MAISON HERMÈS

Window Display

「Wave Machine」
ウェーブマシン

2026.2.26(木)~6.2(火)
銀座メゾンエルメスのウィンドウディスプレイは、街にひらかれた劇場です。さまざまなクリエイターの独創的な視点を通して、エルメスの世界観を表現します。

エルメスの2026年のテーマは「冒険の呼び声」。ウィンドウという空間を使い、さまざまな夢の世界に誘います。

今年最初の銀座メゾンウィンドウは、「Wave Machine/ウェーブマシン」。波という自然現象をめぐる科学的探究と、海への憧れという精神的な旅を重ね合わせたダイナミックな装置が組み込まれたウィンドウです。
18世紀に考案された波動装置は、光や振動といったミクロの現象を目に見える形にすることで、数式に頼らずとも直感的に理解させる教育ツールとして開発されました。今回、ヘンドリーはそうした“波を機械によって表す”試みを出発点に、古代の海図、木造船の建造技術、鞍づくりの木型、伝統的な木工技法、さらには初期の機械仕掛けの劇場装置や木製オートマタ(からくり玩具)といったところまでリサーチを重ねながらこのウィンドウを構想しました。
海は、潮流や風、うねりが絶えず循環する「生きた機構」とも言える存在。その壮大な運動を、木という有機的な素材と手仕事によって表現することで、大自然と人の営みを繋いでいます。同時に、ドローイングやパターンといったものづくりの過程を示す要素も取り入れ、クラフトと創造、それぞれの間を行き交う世界観を立ち上げました。
右の大掛かりな波の装置に対して、左のウィンドウでは鞍の木型や波の下のパターンカッティングの造作が、“波の工房”という空間を演出することで、エルメスのクラフトマンシップの精神を物語っており、年間テーマ「L’appel du Large(冒険の呼び声)」とも深く呼応しています。機械仕掛けのシンプルな構造美は、都市の中にも静かに息づくエルメスの洗練と変わらぬものづくりの姿勢を想起させ、同時に、制作のプロセスそのものをあらわにすることで、アナログな創意工夫と精緻な手仕事への敬意を示しています。
さらに中を覗いてみると、地図や設計図といった現実を作る絵図と、空想上の地図や自由な線描を並べることで、探究心と創造性の関わり合いを表現しています。正確さと直感、計算と夢想は対立するものではなく、相互に響き合う力であるというメッセージが込められています。
ウィンドウは左右ともに、下部には構造や仕組みを、上部には自由で詩的な表現を配した二層構造となっており、これは「旅立ちと帰還」という循環を象徴しています。木の波を渡る船は、未知なる航海への船出であると同時に、創造の本質へと立ち返る行為のメタファーでもあります。
その奥には水平線が広がっています。このウィンドウは、遥か彼方にあるもの、今まだ見ぬ世界を求める、そんな姿勢そのものを“旅”として捉え、伝統と革新のあいだを絶えず行き来しながら進む冒険へのいざないなのです。
 

アーティストプロフィール Artist Profile

ホリー・ヘンドリー Holly Hendry

ホリー・ヘンドリーは、イギリス・ロンドンを拠点に活動するアーティスト。主にサイトスペシフィックな彫刻やインスタレーションを手がけ、地中空間や水道システム、人体の内部構造など、「表面の下にあるもの」を主題として探究している。建築空間の構造そのものを取り込み、ときにそれを強調しながら、スケールや素材、さらには動きを用いて空間認識を揺さぶる作品を展開。機能性とどこか不条理でカートゥーンのようなユーモアを併せ持つ表現が特徴である。
近年では、メキシコのカーサ・ワビでのレジデンスを修了。2024年にはアメリカで初の個展をジョージア州サヴァナのSCAD美術館で開催した。