GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『街角 桃色の店』
The Shop Around the Corner

フォーブルの魂:街角のクロニクル
2024.9.1(日)~ 9.23(月・祝)

(c) 1940 WBEI

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2024年のテーマは「フォーブルの魂」。

9月は、ブダペストの街角にある革製品の店を舞台に、それぞれ未だ見ぬ文通相手に思いを馳せる男女の物語『街角 桃色の店』。
 

『街角 桃色の店』
The Shop Around the Corner

1940年/アメリカ/99分/モノクロ/ブルーレイ上映

監督・製作:エルンスト・ルビッチ
脚本:サムソン・ラファエルソン
原作:ニコラウス・ラズロ(ミクローシュ・ラースロー)
撮影:ウィリアム・H・ダニエルズ
音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン
出演:マーガレット・サラヴァン、ジェームズ・スチュアート、フランク・モーガン
ジョセフ・シルドクラウト、ウィリアム・トレイシー、フェリックス・ブレサート

原作はハンガリーの戯曲で、映画『ユー・ガット・メール』の元にもなった、名匠エルンスト・ルビッチによるロマンティック・コメディ。ブダペストの街角にある革製品の店“マトチェック商会”。クラリクはこの店のトップセールスマンで、オーナーのマトチェック氏の覚えめでたく、同僚からの信頼も厚い。そんな彼には思いを寄せる女性がいた。それは新聞広告で知り合った文通相手なのだが、私書箱を通じて匿名で手紙をやりとりしているため互いに相手の素性は知らないという。そんなある日、店にやってきたノヴァクという女性を販売員として雇うことになる。だが、ノヴァクとクラリクは顔を合わせるたびに口論ばかりで、まったくもって反りが合わない。そして、彼女にもまた名前も知らない憧れの文通相手がいるという……。

監督について Director

エルンスト・ルビッチ/Ernst Lubitsch

1892年、ドイツ・ベルリン生まれ。俳優を志し、16歳で高校を中退。人気喜劇俳優ヴィクトル・アーノルトに弟子入り、端役から大役までをこなし、ヨーロッパで巡回公演を重ねた。1911年、マックス・ラインハルト率いる名門ドイツ座へ入門。翌年、同監督の映画に喜劇俳優として出演し、映画の世界への興味を抱く。1914年に『シャボン玉嬢』で監督デビュー。1922年に渡米し、さまざまな映画会社に招かれ製作を行う。「ルビッチ・タッチ」と呼ばれた彼のエレガントで洒脱な映像表現は、ビリー・ワイルダーなど多くの後進に多大な影響を与えた。『ニノチカ(’39)』『生きるべきか死ぬべきか(’42)』など、洗練されたシチュエーション・コメディの傑作を数多く残している。

 

作品について About Film

エルンスト・ルビッチのコメディは、いつも、優雅な上流階級を舞台とする。タキシードやイブニングドレスを身にまとった上品な紳士淑女が、シャンパンを片手に、喜劇を繰り広げるのだ。しかし、本作『街角 桃色の店』に映しだされるのは、洗練されたエレガンスとは無縁の庶民的な労働の世界である。

ハリウッドのスタジオに再現されたブタペストの街角に、何の変哲もない一軒の革製品の店が建っている。ごく普通の品物がならび、ごく普通のひとびとが働く、小さな店だった。店主のマトチェックをはじめ店員の名前がすべて中欧風なのは、アメリカでの成功を夢見て故郷をあとにした移民たちへのオマージュである(ルビッチ自身も1920年代にアメリカへ移住した)。

アメリカに渡る前、ルビッチは、ドイツのベルリンで俳優としてキャリアをスタートさせた。そのときの経験が反映したのだろうか、本作の冒頭では、役者がひとりずつ舞台に登場するように、雑貨店の面々が順番に画面にあらわれる。若く野心的な配達員、自分の意見をいわない従業員、人間関係のごたごたに巻きこまれる優柔不断な店主など、どのスタッフも個性豊かで人間的な魅力を感じさせる。ルビッチは彼らの弱さや偏見も露わにするが、その眼差しはいつも温かく優しい。

この映画は、小さな商店の日常を描いたハートフルコメディである。店員同士のいつものいざこざ、客を獲得するための策略、休暇を取るための工夫、昇進するための努力などが描かれている。しかし、そこに本作のオリジナリティがある。この世界はメロドラマのようにロマンチックだが、社会的、職業的な現実にしっかり根ざしているのだ。登場人物たちはすでに多くの悩みを抱えているが、そのうえ、失業におびえたり、セクハラ的な言動を受けたりするのである。

さまざまな誤解が重なって進展するこの物語は、もともと、演劇の脚本として書かれたものである。その戯曲を映画化するにあたり、ルビッチは対話を重視した。主人公のジェームズ・スチュワートとマーガレット・サラヴァンは、おたがいに相手が恋人だと気づかない恋人同士をこまやかに演じているが、ふたりの対話は、ルビッチがいかに笑いと感情をむすびつけるのに巧みであったか、そして、暗示や仄めかしを駆使しながら物語を少しずつ前進させる術に長けていたかを良く示している。主人公のふたりは、自分たちの思いを遠回しに表現するばかりで、けっして率直に語らない。そのため、対話の相手は、語られた言葉の本当の意味を手探りで見つけなければならない。しかし、観客である私たちはその言葉の意味をすでに知っているのだ。観客の知性に訴える見事な手法である。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

 

公開スケジュール Schedule

【上映日】
9月1日(日)、5日(木)、7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)、16日(月・祝)、21日(土)、22日(日)、23日(月・祝)

【上映時間】
11:00/14:00/17:00

 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。

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