GINZA MAISON HERMÈS
Le Studio
『内なる檻』
Ariaferma
フォーブルの魂:ともに在る
2024.5.4(土・祝)~ 5.26(日)
(c) Gianni Fiorito
ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2024年のテーマは「フォーブルの魂」。
5月は、ドキュメンタリー映画監督であるレオナルド・ディ・コスタンツォが、閉ざされた環境下における人々の心理的攻防戦から近代社会を問う『内なる鑑』を紹介いたします。
かつて実際に刑務所として使われていた19世紀のパノプティコンを舞台に、非人間的な管理システムの綻びから浮かび上がる、受刑者と刑務官の新たな共同体のかたちを描き出します。
『内なる檻』
Ariaferma
2021年/イタリア、スイス/122分/カラー/ブルーレイ上映
監督・脚本:レオナルド・ディ・コスタンツォ
脚本:ブルーノ・オリヴィエーロ、ヴァリア・サンテッラ
撮影:ルカ・ビガッツィ
製作:カルロ・クレスト=ディーナ
出演:トニ・セルヴィッロ、シルヴィオ・オルランド、ファブリツィオ・フェッラカーネ、
サルヴァトーレ・ストリアーノ、ピエトロ・ジュリアーノ
協力:イタリア文化会館、朝日新聞社、チネチッタ
(イタリア映画祭2022上映作品)
トニ・セルヴィッロとシルヴィオ・オルランド、イタリアを代表する名優が魅せる珠玉の人間ドラマ。イタリアのとある地方、岩山の合間に建つ古い刑務所が閉鎖されようとしていた。受刑者の移送が進められる中、移送先の都合で、急遽12人の受刑者が留まることが通達される。新しい移送先が決まるまでの間、古株の刑務官ガルジューロは残された少数の職員と共に刑務所の監督に当たることに。だが受刑者たちは、面会も許されず、食事はまずいケータリングという状況に不満をつのらせていく。そんな中、古参の受刑者ラジョーイアから、厨房を使わせてくれれば自分が料理を作ると提案があり、ガルジューロはそれを承諾する。囚人と看守、立場の異なる両者を隔てていた境界は、この取り残された空間の中で次第に曖昧になってゆく。
監督について Director
レオナルド・ディ・コスタンツォ/Leonardo Di Costanzo
1958年、イタリア、イスキア生まれ。ナポリ東洋大学を卒業後パリに移り、アトリエ・ヴァランで映画製作を学ぶ。その後、「Prove di stato」('98)など、いくつかのドキュメンタリー映画を監督する。2012年に『日常のはざま』で長編劇映画を初監督、第58回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞、新人監督賞を受賞。2017、『侵入する女』が第70回カンヌ国際映画祭の監督週間で上映。2021年の『内なる檻』は第67回ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞、オリジナル脚本賞を受賞している。
作品について About Film
刑務所という密室を舞台にしながらも、『内なる檻』は暴力と恐怖に満ちた「刑務所映画」とは似ても似つかない。刑事施設に収容されることの不条理を扱ってはいるが、これは第一にヒューマニズムの物語だ。個人の反逆行為としてではなく共同体の利益のために規則を変えることを、人間がいかに自分自身に許容すべきかを語っている。
イタリア語の原題「Ariaferma(閉じられた空気)」は閉塞的で空気の薄い環境を思い起こさせる。ほとんど忘れ去られた刑務所にいる刑務官と受刑者たちが共有する、閉じられた空間の空気だ。時間が止まっているかのようなこの孤立した要塞の中で、見捨てられた二種類の集団が共存しなければならない。本作の脚本は食べ物に中心的な役割を与えている。生存のためのエネルギー源であると同時に、味覚の喜びをもたらすのが食べ物である。そして、食べ物は争いの源にもなりうるが、争いを収めるのもまた食べ物だ。さながら宴会の様相を呈したある夜の食事を通して、二つの集団は親密になり、しまいには一つにまとまる。人間らしさを取り戻した囚人と牢番たちは、料理のレシピまで教え合うに至る。料理が慎ましいものであればあるほど——自生のハーブと和えた簡単なパスタだって祝宴にふさわしい——料理が持つ寛容や分かち合いという価値が高まるのだ。
監督のレオナルド・ディ・コスタンツォは和解の舞台として、ドームの天井を備えた円形の建物を選んだ。本来、監視のために設計された空間が転用され、あたかも奇蹟が起きて、あの現実離れした相互理解の瞬間が生まれたかのごとく、聖なる場所へと変貌する。このシーンのキリスト教的な引用はそれだけではない。そして、コスタンツォ自身は無神論者であるものの、私たち皆が共有する人間性を信じていることに疑いはない。
コスタンツォはこの映画を作るために各地の刑務所を訪問し、時には会議にも立ち会って、所長、職員、囚人らの話を聞いた。現場にいる人々の多種多様さはキャスティングでも再現され、刑務所暮らしを経験したプロではない俳優が集められた。対峙する二人の中心人物はイタリア映画界の人気俳優、トニ・セルヴィッロとシルヴィオ・オルランドが演じている。演技のバランスを崩さないよう、監督は彼らに個性を抑え、シンプルで含みのある演技をするように求めた。前者は平静さの仮面をかぶった刑務官のリーダーで、当局が定めた規則から徐々に解放されていく。後者は知恵に富む改悛したマフィアで、規則ではなく共感をもとにした新たな取り決めを確立しようと仕向ける。
(翻訳:手束紀子)
アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
公開スケジュール Schedule
【上映日】
5月4日(土・祝)、5日(日・祝)、6日(月・祝)、10日(金)、11日(土)、12日(日)、18日(土)、19日(日)、25日(土)、26日(日)
【上映時間】
11:00/14:00/17:00
会場 Access
銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
予約 Reservation
※このプログラムの上映は既に終了いたしております。
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