GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『桜桃の味』
Taste of Cherry

驚きの発見:片道切符
2023.5.3(水・祝)~ 5.28(日)

(c) 1997 Abbas Kiarostami

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2023年のテーマは「驚きの発見」。

5月は、人生に絶望した中年男が、車を運転しながら、街ゆく人々に声をかけては、ある奇妙な仕事を持ちかける一風変わったロードムービー『桜桃の味』をお届けします。
 

『桜桃の味』
Taste of Cherry

1997年/イラン・フランス/99分/カラー/デジタル上映

監督・脚本・製作・編集:アッバス・キアロスタミ
撮影:ホマユン・パイヴァール
録音:ジャハンギール・ミルシェカリ、モハマッド・レザ・デルパック
助監督:ハッサン・イェキタ、バフマン・キアロスタミ
出演:ホマユン・エルシャディ、アブドルホセイン・バゲリ、
アフシン・バクタリ、アリ・モラディ、ホセイン・ヌーリ

配給:ユーロスペース

第50回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したイランの巨匠アッバス・キアロスタミの名作。テヘラン郊外を車で徘徊する中年の男バディ。彼は、通りすがりの人に声をかけ、丘の中腹まで連れていっては、高額の報酬とともに、ある仕事を持ちかける。“明日の朝、ここへ来て、穴の中に横たわっている私の名前を2度呼んでほしい。もし返事があれば助け起こし、返事がなければ土をかけてくれ”と。最初に乗せたクルド出身の兵士と次に乗せたアフガニスタンの神学生は依頼を拒否するが、最後に乗せた老人は、子供の治療費のために仕事を引き受ける。しかし、帰りの道中、死を望む理由を語らぬバディに対して、老人は、かつて自らも自殺を試みたことがあると明かし、この世界の美しさと生きる喜びについて語りはじめるのだった……。

監督について Director

アッバス・キアロスタミ/Abbas Kiarostami

1940年6月22日テヘラン生まれ。幼い頃より芸術を好み、18歳の時に絵画コンクールで優勝。テヘラン大学芸術学部で絵画とグラフィックデザインを学ぶ。60年代に広告の世界でキャリアをスタートさせ、ポスターデザインやCF制作に携わる。1969年、児童青少年知育協会の映画部門を設立、処女作となる短編『パンと裏通り』('70)を監督する。1974年に『トラベラー』で長編デビュー。その後『友だちのうちはどこ?』('87)や『クローズアップ』('90)で世界にその名を知らしめた。1997年、『桜桃の味』でパルムドールを受賞。2010年、ジュリエット・ビノシュ主演の『トスカーナの贋作』を監督。2012年には日本を舞台とした『ライク・サムワン・イン・ラブ』を撮影した。2016年7月4日、76歳で死去。2017年、死後に完成した『24フレーム』が公開された。

 

作品について About Film

イラン出身のアッバス・キアロスタミは、独裁政権によって表現の自由を制限されながらも、長いあいだ亡命することなく母国にとどまって映画を撮りつづけた。シンプルな物語と映像によって、イランの都市と農村を描きつづけたのだ。

『桜桃の味』も、物語はとても単純である。バディという中年男が、自殺を手伝ってくれる相手を探してテヘラン近郊を車で走りまわっている。要約すれば、たったこれだけである。カメラワークも物語と同じくシンプルで、3種類のショットだけで構成されている。

車内のシーンでは、ハンドルをにぎる主人公と乗客の顔が切り返しのアップで映しだされる。そして、荒涼とした風景のなかを走る車がロングで捉えられる。車は、埃っぽいジグザグ道をひたすら走りつづけ、その途中に、アフガニスタン人、クルド人、トルコ人が、バディの車に乗り込んでくる。彼らはバディの非常識な依頼を聞いて、それぞれの信条や社会的な立場に応じて異なった態度をみせる。この3人の乗客は、イランの民族、文化、宗教の多様性をあらわし、その国で起きているさまざまな軋轢とひとびとの移動を暗示しているのだ。

この映画は、ドキュメンタリー的な手法も用いながら、いくつもの哲学的な問いを立ちあげる。生と死について考え、また、自ら命を絶つことが犯罪とみなされるイランで、自殺についても思索をめぐらせるのだ。旅の途中、バディは他人への思いやりを示し、他人からの好意を受け入れもする。バディは本気で死を求めているのだろうか。それとも、その振りをしているだけなのだろうか。

バディはキアロスタミの分身であり、キアロスタミ自身の問いを口にする。希望のない人生を生きることに意味があるのか。答えのない問いを、他人に投げかけても良いのだろうか。バディの車に最後に乗った老人が、人生の美しさを詩人のように力づよく賛美するとき、キアロスタミはその老人にも自らを重ねている。謎を解く鍵は、映画的な身振りのうちに見出される。たとえ答えが見つからなくても、映画を撮ることは根源的な問いを考えることに等しいのだ。そして、映画は、人生に意味を与えることができるのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

 

公開スケジュール Schedule

【上映日】
5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)、7日(日)、13日(土)、14日(日)、20日(土)、21日(日)、28日(日)

【上映時間】
11:00/14:00/17:00

 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。

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