『ジョッキーを夢見る子供たち』『ピナ・バウシュ 夢の教室』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ジョッキーを夢見る子供たち』
Lads & Jockeys
『ピナ・バウシュ 夢の教室』
Dancing Dreams

夢を追いかけて:学ぶ・夢みる・成長する
2019.11.2(土)~ 11.30(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2019年のテーマは「夢を追いかけて」。

11月・12月は2カ月間にわたり、夢をめぐる特別プログラムをお届けします。
ご紹介する4本の映画のうち、3本は過去に上映した作品からリクエストの多かった作品を選びました。

11月は、こどもの夢をめぐる2つの物語。
自分の可能性を信じ、未来のスター騎手を目指して青春を捧げる『ジョッキーを夢見る子供たち』。
舞台経験ゼロの子供たちが、ダンスを通して自分や他者との関わり方を学んでいく『ピナ・バウシュ 夢の教室』。
どうぞお楽しみください。

 

『ジョッキーを夢見る子供たち』Lads & Jockeys

2008年/フランス/99分/カラー/デジタル上映

監督:バンジャマン・マルケ
製作:ダニエル・マルケ
撮影:セバスチャン・ビュシュマン、ロラン・シャレ、バンジャマン・マルケ
出演:スティーヴ・ル・ゲルン、フロリアン・ボスケット、フラヴィアン・マセ、武豊
フォトクレジット:© 2008 Groupe Deux

「ジョッキーになりたい、僕のあこがれの仕事だから!」子供たちを馬のスペシャリストに育てるための、フランス国立厩務員・騎手養成学校。そこには親元を離れ、未来のスター騎手を目指して必死に生きる子供たちがいる。人間よりも馬が優先される厳しい世界のなかで、馬の繊細さ、力強さにおののきながらも、馬とともに力強く成長してゆく子供たち。才能のある者、自分の夢を疑いはじめる者、誰よりも馬を愛しながらも落ちこぼれてしまう者…。皆の夢は世界最高峰のレース、凱旋門賞への出場。しかし、ジョッキーになれるのはほんの一握りなのだ。世界的ジョッキーである武豊も出演する本作は、人生の試練に立ち向かう子供たちの姿を追う清々しいドキュメンタリー。『皇帝ペンギン』の名カメラマン、ロラン・シャレが繊細なサラブレッドの躍動感を見事に捉えている。

 

『ピナ・バウシュ 夢の教室』Dancing Dreams

2010年/ドイツ/89分/カラー/デジタル上映 原題:Tanz Träume

監督:アンネ・リンゼル
撮影監督:ライナー・ホフマン
プロデューサー:ゲアト・ハーグ、アンネ・リンゼル
音楽:ウーヴェ・ドレッシュ、トーマス・ケラー、トビアス・リンゼル、ポール・オベルレ、ティム・ドーンケ
編集:マイク・シュレマー
出演:ピナ・バウシュ、ベネディクト・ビリエ、ジョセフィン=アン・エンディコット
フォトクレジット:© TAG/TRAUM 2010

世界的な舞踏家、ピナ・バウシュのもとに、ダンスも演劇も経験のない40人のティーンエイジャーが集まった。「男女の愛」をテーマにしたピナの代表的演目『コンタクトホーフ』を演じるため、10ヶ月間の無謀とも言える猛特訓が始まる…。志望の動機も様々な少年・少女たち。「できない」「意味がわからない」と、最初はダンスに二の足を踏んでいた彼らも、ピナやコーチたちの指導を受けながら稽古に励み、他者の肌に触れ合い、感情をさらけ出す濃密な時間の中で、動作にキレが生まれ、表情が輝き出し、また彼ら自身も自らの変化に気づき始めてゆく…。2009年6月30日、ピナ・バウシュは68歳でこの世を去る。がんの宣告を受けたわずか5日後のことだった。本作は彼女の生前最後の映像を収めた貴重なドキュメンタリーとなっている。

 

監督について Director

バンジャマン・マルケ Benjamin Marquet

1970年生まれ。フランスの映画監督、脚本家、フォト・ディレクター。1988年にレ・フィルム・アラン・サルドにて研修。2000年、フランコ・アメリカン・フィルムにて演出助手を務め、同時期にディズニーランド・パリのための広告も手掛けている。2002年、ニコール・ガルシアの『L'Adversaire』、ダニエル・トンプソンの『シェフと素顔と、おいしい時間』で演出助手。監督作品としては、デビュー作『La Vie en Beau』('02)、セネガルに一年間滞在し撮影されたドキュメンタリー『L'Humanologue』('05)がある。『ジョッキーを夢見る子供たち』では、パリ郊外のフランス国立厩務員・騎手養成学校、ル・ムーラン・ナ・ヴォンの新入生たちの一年を追った。
 
アンネ・リンゼル Anne Linsel

ドイツ、ヴッパタール生まれ。芸術・文化評論家、ジャーナリストでありながら、多くのTVドキュメンタリーの監督を手掛けるほか、ラジオやTV番組の司会、執筆活動なども行う。美術および美術史、ドイツ文学を学び、1984年〜1989年まで、ZDF(第二ドイツテレビ)社の文化誌『Aspekte』に携わる。雑誌や新聞への執筆活動などでも活躍し、エルゼ・ラスカー=シューラーの詩集『Deine Sehnsucht war die Schlange』の共同編集も手掛けた。また映像作家としても、主にアーティストや芸術に関するTVドキュメンタリーの監督として数々の作品を世に送り出している。本編『ピナ・バウシュ 夢の教室』は、映画監督としての長編デビュー作である。
 

作品について About Film

ジョッキーを夢見る子供たち  バンジャマン・マルケ(仏2008年)

信仰の道にはいるように、スポーツを始めることがある。世間から隔絶された僧院のような環境で、幼いころから、昼夜を分かたず、情熱の対象に身を捧げる。パリ近郊の騎手養成学校でジョッキーをめざす少年たちが送るのも、まさにそんな生活である。晴れの日も雨の日も、学校の授業と練習、馬の世話といった日課を早朝からこなす。思春期にさしかかったばかりの頼りない少年たちが、厳しいコーチや、手に負えないほど血気盛んな馬たちに立ちむかう。

バンジャマン・マルケ監督は、アーカイブ映像をもちいながら、観客を競馬と馬術の世界へといざなう。馬への情熱と賭けごとの思惑が絡みあった、知られざる世界を垣間見せてくれる。その世界には独自の儀式があり、エリートや憧れの存在といった人々がいる。騎手志望の少年たちの日常を追う監督のまなざしは、愛情にみちて優しい。少年たちの恐れや不安の表情を、手持ちのカメラで至近距離からとらえる一方で、乗馬訓練の場面では、全速力で駆ける馬たちのギャロップを、目がくらむようなトラッキング・ショットで撮影する。堂々たる馬にまたがる子供たちの華奢なシルエットが、しだいに逞しくなっていく。

家族と離れ、閉ざされた世界で成長し、レースや競技といった機会にしか外の世界に出ない若き騎手見習いたち。ここで思い出されるのが、同じような年齢で、同じように過酷な規律にしたがいながら、エトワールになることを夢みて、踊ることに全身全霊を捧げるバレエ学校の生徒たちだ。かれらと同じように、おおぜいの騎手見習いたちが成功を夢みるが、プロになれるのはひと握りにすぎない。将来の活躍の舞台となる競馬場をおとずれるだけで、少年たちの顔は輝き、日頃のつらさも吹きとんでしまう。苦しさや恐怖を感じたとしても、逃げるわけにはいかない。スポーツでも、人生でも、子供から大人になるときでも、学びの過程には、苦労がつきものなのだ。


ピナ・バウシュ夢の教室

稽古を始めて間もないころは、思春期のぎこちなさばかりが目立った。14歳から18歳までの若者たちは、誰もがまったくの初心者だった。ダンスを踊ったこともなければ、演技をした経験もなく、舞台のうえで、すっかり戸惑っているように見えた。それから早くも一年が過ぎた。若者たちはもう何のためらいもなく、舞台のうえで腰を振り、大声で笑い、歯をむきだし、お互いの顔をなであうようになった。どれもこれもありふれた仕草だが、ここではそのすべてが異様で唐突なものに映る。コンテクストが何もなく、どの仕草がどんな意味をもつのか、まったく分からないのだ。しかし若者たちは、成熟した大人や、舞台慣れしたプロのダンサーのように、どんな動きでも自信たっぷりにやってのける。

若者たちがそんなふうに見事に変貌をとげたのは、ピナ・バウシュの世界に入りこんだからである。ピナ・バウシュは、1970年代からドイツ表現主義の流れをくんで「タンツテアター」(ダンス演劇)と呼ばれる独自の世界をきづいてきた。男と女の出会いや関係性をテーマに、踊り手ひとりひとりの身体がもつ表現の可能性を探求してきた。ピナ・バウシュが振り付けるのは、バレエダンサーの理想的な身体とは真逆の、どこにでもいる平凡な人々のごく普通のからだである。

1978年に初演されたピナ・バウシュの代表作『コンタクトホーフ』のジュニア・バージョンともいうべき今回の舞台には、初演当時の舞台装置がそのまま再現されている。大広間かダンスホールのような殺風景で謎めいた空間。左側の壁には、外の景色がほとんど見えない大きな窓があり、舞台奥にはカーテンが下がり、その向こうには、おそらく、もうひとつ別の舞台がある。若者たちは、この空間で、自分のからだや他人の視線を学んだのだ。

演技やダンスをつうじて、若者たちは愛情や絶望を表現できるようになった。自分のからだを、自信をもって自由に動かせるようにもなった。かれらは、自分たちがたどってきた道のりをはっきりと意識している。このかけがえのない経験を思い出すとき、かれらは幸福に眼を輝かせ、情熱と感謝に身をふるわせる。この1年間に経験したことが、今後の人生の支えとなることをしっかりと理解しているのだ。

本作は、新米ダンサーたちがたどった1年間の軌跡と本番のパフォーマンスを映しだすだけでなく、振付家ピナ・バウシュとふたりの助手ベネディクトとジョーの「導き手」としての才能にも敬意をしめす。若者たちは、この3人に導かれて自分自身を見出した。おのれを知り、おのれを超えるために、経験に目をむける術を学んだ。そしておそらく、子供から大人へと変わるこの難しい時期を生き抜くための力を、彼女たちから得たのではないだろうか。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
[ジョッキーを夢見る子供たち]
11月2日(土)、3日(日・祝)、4日(月・休)、9日(土)、10日(日)

[ピナ・バウシュ 夢の教室]
16日(土)、17日(日)、23日(土・祝)、24日(日)、30日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。