『ひとで』『詩人の血』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ひとで』
L'étoile de Mer
『詩人の血』
Le Sang d’un Poète

夢を追いかけて:アヴァンギャルドの眼差し
2019.8.3(土)~ 8.31(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2019年のテーマは「夢を追いかけて」。 8月は、詩人の空想から生み出されたアヴァンギャルド映画2本をお届けします。

 

『ひとで』L'étoile de Mer

1928年/フランス/15分/モノクロ/デジタル上映

監督:マン・レイ
脚本:ロベール・デスノス
出演:モンパルナスのキキ(アリス・プラン)、アンドレ・ドゥ・ラ・リヴィエール、ロベール・デスノス
フォトクレジット:© MAN RAY 2015 TRUST/ADAGP, Paris & JASPAR, Tokyo, 2019 C2918
 

『詩人の血』 Le Sang d’un Poète

1930年/フランス/51分/モノクロ/デジタル上映

監督・脚本:ジャン・コクトー
撮影:ジョルジュ・ペリナル
音楽:ジョルジュ・オーリック
出演:リー・ミラー、ポリーヌ・カルトン、エンリケ・リベロ、オデット・タラザク
フォトクレジット:© Studiocanal

『ひとで』はマン・レイがロベール・デスノスの詩をもとに撮った作品。ある晩、友人のデスノスに彼の脚本で映画を撮りたいと話したところ、翌朝デスノスは脚本の形にした詩を持って来たという。マン・レイ曰く「その詩は彼のベッドの近くに置いてある鉢の中のひとでから着想され、その夜のうちに書き上げられました。半分が夢から、半分が現実から生れたのです。」
『詩人の血』はジャン・コクトーの初監督作品にしてアヴァンギャルド映画の古典的名作。四つのエピソードで構成される本作は、詩人、彫像、メキシコ人など様々な登場人物によって、ミステリアスで寓話的なストーリーが断片的に続いてゆく。劇中に出てくるモチーフは、ジャンルを超越し活躍していたコクトーの他の作品にも共通しており、彼の芸術家としての姿勢が如実に示されている。

 

監督について Director

マン・レイ

1890年、アメリカ、フィラデルフィア生まれ。画家、写真家、彫刻家、映像作家として知られ、ダダやシュルレアリスムにおいて重要な役割を果たした。絵画や写真作品の他に『エマク・バキア』(’26)や『サイコロ城の秘密』(’29)など実験的な映像作品も手掛けている。1921年にパリに移住。1940年に戦火を避けカリフォルニアに移るが、1951年に再びパリに戻る。1976年パリにて死去。

ジャン・コクトー

1889年、パリ近郊に生まれる。1909年に初の詩集『アラジンのランプ』を自費出版。1929年には小説『恐るべき子供たち』を発表。映画では『詩人の血』(’30)、『美女と野獣』(’46)、『オルフェ』(’50)などの作品を監督した。詩人、小説家、劇作家、映画監督だけでなく、評論家、画家、造形作家など多岐にわたって芸術活動を行ない、1955年にはアカデミー・フランセーズの会員に選出された。1963年、74歳で死去。
 

作品について About Film

『詩人の血』と『ひとで』の最初と最後の場面を見てほしい。『詩人の血』は、煙突が崩れはじめる場面からはじまり、同じ煙突が地面に崩れおちる場面で終わる。まるで、夢は、煙突が倒れるほんの一瞬しか続かないと表現しているかのようだ。『ひとで』では、最初のシークエンスで窓がひらき、最後の場面で窓がとじる。窓がひらいている間だけ、無意識の断片が垣間見えるのである。

『詩人の血』も『ひとで』も、現実の世界をそのまま描こうとはしない。直線的な物語や物理的なリアリティを廃し、ひたすら主観に徹し、目に見えないものを追い求める。ジャン・コクトーもマン・レイも、自分自身の内的ヴィジョンを映像化しようとしているのだ。ふたりとも当時のパリのアートシーンを代表する人物であり、特にシュルレアリスムの芸術家たちと親しく付き合っていた。詩人、小説家、画家として知られたジャン・コクトーと、画家、写真家として有名だったマン・レイは、どちらも1920年代末から映画に取り組みはじめた。

当時、あらゆる分野の前衛芸術家たちが、まだ生まれて間もない映画という芸術ジャンルに挑み、革新的な表現スタイルや技術を創造していた。もちろん、シュルレアリスムの芸術家たちも映画に無関心ではなかった。この時代の芸術家たちにとって「シネマトグラフ」は、かつて写真がそうであったように、新たな世界の到来を予感させる壮大な実験場であった。

コクトー自身によれば、『詩人の血』は夢よりも記憶にかかわる作品である。死の気配が色濃くただようなかを、創作の苦しみに囚われたひとりの詩人(コクトーの分身)があてどもなくさまよい、幼いころの心象風景のうちに迷いこむ。コクトーにとって初の長編映画となった『詩人の血』には、オルフェウスの神話をはじめ、鏡を通り抜けるシーンや、彫像が生きて動きはじめる場面など、後の作品につながるモチーフやスタイルがいくつも認められる。メリエスから継承した特殊撮影をもちい、映像を逆回転させたり、二重写しにしたり、セットを逆さに設置したりと様々な工夫をこらし、素朴ではあるが魔術的な効果をうみだしている。

『ひとで』には、マン・レイらしさがよく表れている。写真家として数々の技法を考案し、抽象画家としても活躍したマン・レイだからこそ表現できた作品ではないだろうか。静止画と動画、有機物と鉱物、生物と事物が一見したところ何の脈絡もなくつながるその映像は、コクトーの『詩人の血』よりもはるかにシュルレアリスム的な傾向を示している。マン・レイのこの作品には、死への欲動はまったく感じられない。そこにあるのは神秘であり、肉体への欲望である。マン・レイの欲望は、数多くの画家たちから愛されたモデル、キキ・ド・モンパルナスの褐色の肌にむけられている。

どちらの作品も、ときおり挿入される謎めいた言葉によって、詩的な映像が句切られていく。物語は、現実世界(かろうじて現実的といえる世界)と想像の世界を往復する。わたしたちは、そのすべてに身を委ねなければならない。ジャン・コクトーもマン・レイも、5つの枝を伸ばした奇妙な形に執着した。マン・レイは海の星(ヒトデ)に魅せられ、ジャン・コクトーはヒトデのような空の星を独特の筆致で描きつづけた。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
8月3日(土)、8月4日(日)、8月10日(土)、8月11日(日・祝)、8月12日(月・休)、8月17日(土)、8月18日(日)、8月24日(土)、8月25日(日)、8月31日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation 

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。