『天空の時間』 + 「ジョルジュ・メリエス三作品」『メランコリア』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『天空の時間』 + 「ジョルジュ・メリエス三作品」『メランコリア』
Le temps du ciel / Georges Méliès films / Melancholia

“時”の恵み:天体のメカニズム
2012.12.1(土)~12.30(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『天空の時間』Le temps du ciel

1999年/フランス/26分/カラー/デジタル・ベータカム
監督:ステファン・ドリュエ
解説:ウンベルト・エーコ
字幕:松岡葉子
製作・配給:Les Films d'Ici

何世紀にもわたり、太陽や月、星の動きを観察する中で、人間はいかに時間の概念を発達させてきたのか? 『天空の時間』は、6つのドキュメンタリーからなる作品集『時よ、早く! LE TEMPS, VITE !』に収録された科学的ドキュメンタリーである。各作品に、哲学者で小説家のウンベルト・エーコによる紹介が付されている。数多くの資料を駆使し、映像を織り交ぜながら、歴史的、科学的、哲学的なアプローチを用いて、芸術や科学、社会における人間と時間との関わりを描く。
 

『日食』Eclipse de soleil en pleine lune

1907年/フランス/9分/モノクロ/35mm
監督:ジョルジュ・メリエス
音楽:アレグザンダー・ラニー
出演:ジョルジュ・メリエス
 

『月まで1メートル』La Lune à un mètre

1898年/フランス/3分/モノクロ/35mm
監督:ジョルジュ・メリエス
音楽:ドナルド・ソシン
出演:ジョルジュ・メリエス
 

『不可能な世界への旅』Voyage à travers l’impossible

1904年/フランス/20分/カラー/35mm
監督・脚本:ジョルジュ・メリエス
原作:ジュール・ヴェルヌ、アドルフ・デネリ
音楽:アレグザンダー・ラニー
出演:ジョルジュ・メリエス

映画創世記、誰よりも映画を愛し、その可能性を追求したジョルジュ・メリエス。『日食』には若い娘に変身した星たちが、『月まで1メートル』では過食症の巨大な月が登場。『不可能な世界への旅』では、人々は空飛ぶ列車に乗って星座を横切り太陽へと向かう。
 

作品について About Film

「昔の人々は太陽の時間で生きていた。現代人は時計を気にしながら暮らしている」。ウンベルト・エーコはそう主張する。『天体の時間』は、太古の人類が骨に刻んだカレンダーから始まり、現代の空港の掲示板で幕を閉じる。哲学者、物理学者、天文学者たちは、天体と星の動きを観察することによって、人類の時間の観念を発達させてきた。古代の人々が憧れた普遍的な時間、同じ時間の流れる世界は、今や現実のものとなった。
ステファン・ドリュエは、天体のメカニズムに関する一連の理論をアニメーションで解説し、明晰で教育的な科学ドキュメンタリーを作り上げた。人類が発明した、時を計るためのさまざまな装置や、天体の時間を描いた絵画を前にして、私たちは人類の歴史、知の歴史、そして宇宙における人間の存在の歴史を、生き生きと実感することになる。
自らの製作会社を「スター・フィルム(Star Films)」と名づけたジョルジュ・メリエス(1861〜1938)もまた、天体に魅了された人だった。夢と映画的実験の場であったそのスタジオで、彼は天体を舞台としたSF映画を製作した。映画という第7芸術の開拓者であり、数々の映像トリックや特殊効果の発明者であるメリエスに先見の明があったこと、進歩と新たな発見に敏感だったことを疑う者はいない。しかし、何よりもまずイリュージョンとスペクタクルの人であったメリエスの科学に対するアプローチは、空想的で、荒唐無稽ともいえるものであった。彼は私たちの想像力をかき立て、私たちを幼年時代へと旅立たせようとする。自らも魔法使いに扮した天文学者を演じてみせ、奇想天外な乗り物に乗って異星人の住む惑星へと飛んでいったりする。
当時の映画は演劇の原理を模倣したものであったが、それを十全に活用した彼の映画は、演劇における驚き、動き、バーレスク的ユーモアを混ぜ合わせた場面が次々に登場する。メリエスは舞台から受け継いだ複雑な仕掛けを取り入れ、美術セットとして素晴らしい書き割りを製作した。そのディテールの豊かさや、意図的に用いられた稚拙なスタイル、独創性は、今日でもなお新鮮さを失っていない。
『日食』では、いたずらっぽく魅力的な若い娘に変身した星たちが楽しげに練り歩く。『月まで1メートル』では過食症の巨大な月が登場する。
人間の顔をした月の目に爆弾が突き刺さる場面を思いついたとき、これが自分の死後も生き続け、映画の魔法を象徴するイメージとなることを、メリエスは想像しただろうか? この有名な『月世界旅行』の二年後、メリエスは続編としてさらに野心的な作品『不可能な世界への旅』を発表した。果敢な、そしてエキセントリックな探検隊が、今回は太陽へと向かう。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

『メランコリア』Melancholia

2011年/デンマーク/135分/カラー/35mm
監督・脚本:ラース・フォン・トリアー
製作:ミタ・ルイーズ・フォルデイガー、ルイーズ・ヴェス
撮影:マヌエル・アルベルト・クラロ
編集:モリー・マレーネ・ステンスガード
出演:キルスティン・ダンスト、シャルロット・ゲンズブール、キーファー・サザーランド
字幕:松浦美奈
配給:ブロードメディア・スタジオ

世界が終わる——。カンヌ国際映画祭でも話題を呼び続ける鬼才、ラース・フォン・トリアー監督(『奇跡の海(’96』『ダンサー・イン・ザ・ダーク(’00)』)の最新作は、地球に異常接近する惑星メランコリアをめぐり、圧倒的な映像美をもって人々の心の葛藤を描く、壮大な叙事詩。スローモーションで動く絵画のような幻想的なシーンの数々、少しずつ壊れてゆく姉妹と、ワーグナーの優雅な調べ。圧倒的なエンディングは観る人の心を強く激しく揺さぶる。
フォトクレジット:『天空の時間』@Film d'Ici (左上)/ 『不可能な世界への旅』@Lobster Films(右上)/『メランコリア』@2011 Zentropa Entertainments ApS27(下)
 

作品について About Film

『メランコリア』の冒頭をよく見てほしい。次々現れる謎めいた映像に、この映画のすべてが凝縮されているからだ。逃れようとする花嫁に絡みつく蔦、聖書における天罰を思わせる奇妙な現象、地球に衝突する巨大な青い惑星。
ラース・フォン・トリアーは自ら先回りしてこのサスペンス映画を要約してみせ、世界の終焉という運命の結末に向け、観客に心の準備をさせる。しかしながら、世界の終わりを描くにあたり、デンマーク出身のトリアー監督はSFらしいリアルで劇的な破壊シーンを多用する代わりに、それを審美的な現象として描き出す。ワーグナーのロマン主義的な音楽とともに展開する映像の中で、時は止まり、また流れをよどめる。この映画で破滅をもたらすのは核戦争や異星人の侵略ではなく、交差しようとしている二つの惑星の変えようのない軌道という、宇宙規模の不可避な運命なのである。
『メランコリア』のテーマは何よりも、人類滅亡の危機を前にした人々の行動や人間関係にある。たとえばこの作品に登場する、性格も外見も正反対の姉妹。金髪で官能的なジャスティン(キルスティン・ダンスト、本作にて第64回カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞)は、結婚式当日に深い鬱状態に陥り、黒髪で厳格な姉クレア(シャルロット・ゲンズブール)が計画した結婚披露宴を台無しにしてしまう。対照的な二人の姉妹、世界の終わりに直面したときのそれぞれの反応。空に並んだ二つの惑星が落とす反転した影。内容的にも形式的にも、「二重」と「反対」という概念がこの映画を特徴づけている。そして、二つの特徴的な撮影手法が用いられていること。たとえば、さまざまな登場人物の行動により、家族の抱える神経症的側面が噴出するさまを描く最初の披露宴の場面は、ラース・フォン・トリアー作品らしく、監督自身の手持ちカメラで至近距離から撮影される。より思索的な後半部分では、姉妹が対峙しつつ、社会から隔絶された環境で終末の時を待つ。それらの映像は、絵画的なスタイルと写真のような精密さを併せ持ち、過去の画家たちが憂鬱を描いた有名な絵画の数々を思い起こさせる。ある場面ではジャスティンが、神聖な月の光の中で裸体を晒す。諦念と恍惚の中で、彼女は青い惑星の到来を待つ。それが起こることを、彼女は前から知っていたかのように見える――あるいは、彼女こそがそれを引き起こしたかのように。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
12月1日(土)、12月2日(日)、12月8日(土)、12月9日(日)、12月15日(土)、12月16日(日)、12月22日(土)、12月23日(日・祝)、12月24日(月・祝)、12月29日(土)、12月30日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。