「つむじ風」| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Window Display

「つむじ風」
A Windy Scenery

2013.1.24(木)~3.18(月)
2013年のテーマ「スポーツは素敵!」を飾る第1回目のメゾンエルメスのウィンドウは、ユルゲン・ベイが率いるスタジオ・マッキンク&ベイが日本人にゆかりの深い風景をウールフェルトに施された刺繍で見事に表現しています。街角の劇場の今回の演目は、柔らかなテキスタイル、浮遊する動き、つむじ風、日本の画匠、そして空想の風景をオランダの伝統的なウールフェルトで手作りする職人の物語です。

右側のウィンドウは、一陣の風にはためくカレの優雅な動きを表現しています。軽やかなカレが、光と風の作用によってはためき、波打つ時、色彩豊かなそのカレの複雑な模様の細部が自然と浮かび上がります。この情景をスポーツに関連づけ、「動き」というテーマに沿って展開しています。

この風景の原図は、版画家・葛飾北斎の「富嶽三十六景 駿州江尻」です。突然のつむじ風に、懐紙や菅笠を吹き飛ばされ、人々が慌てふためいているシーンを描いた作品です。背景に描かれた北斎の人物たちの持ち物が、今まさに天高く舞い上がろうとしています。凧揚げは風を相手に楽しむスポーツであり、ファッションによっても表現される一種の優雅さを備えた娯楽でもあります。このウィンドウディスプレイでは、ウールフェルトに縫いつけられた木立ち、その周りをよろめきながら歩く人々という情景の中で、エルメスの色鮮やかなカレが、凧になって空中を泳いでいます。

一瞬の力学をとらえた右側のウィンドウに対し、左側では、ひとりの職人がミシンに向かって穏やかに、理想とする世界をもくもくと描いています。彼はアトリエの中で、柔らかなフェルトに繊細な糸を縫いつけながら、カレが映える舞台装置づくりに工夫を凝らしているところです。彼の背後に貼られたポスターには、星、月、太陽、雲の分類、天然元素、風向計、星、月などが描かれ、職人が未加工の天然ウールフェルトをキャンバスに宇宙を創造するためのインスピレーションを与えています。職人が敢えて処理をせずに残している糸の流れはあたかも風向きを可視化していているようで、自然をも取り込んだスポーツの雄大さを表しています。

アーティストプロフィール Artist Profile

ユルゲン・ベイ Jurgen Bey

1965年オランダ・ゾースト生まれ。リアーネ・マッキンク(Rianne Makkink)とともにデザイナーのチームを率いてスタジオ・マッキンク&ベイを設立した彼は、物とその使い手の関係を探求しています。同スタジオの仕事はプロダクト、家具、インテリア、公共空間など多岐に渡り、その発想法は教育、講演、展覧会を通じて、オランダ内外の多くの同業者や学生に影響を与えています。今回は、オランダを拠点に活動するドイツ人デザイナー、アンネ・ヴァイス(Anke Weiss)とのコラボレーションにより行われました。彼女の持ち味は、どんな素材からでも人を惹きつける心地良いものを作り出す能力にあります。金細工師として学び、リサイクル素材から高級素材まであらゆる素材を扱ってきた彼女の持ち味は、どんな素材でも人を惹きつけてやまない心地よい物を作り出す能力があります。
 
富嶽三十六景 駿州江尻・・・
葛飾北斎の代表作で、36の異なる地域から望む富士山の景観を描いた浮世絵のひとつ。駿州江尻は、現在の静岡県清水市。
フォトクレジット:© Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon