「みにくいアヒルの子」| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Window Display

「みにくいアヒルの子」
The Ugly Duckling

2012.1.18(水)~3.21(水)
今回のウィンドウデザインに際し、山口晃さんにデザインのコンセプトを依頼したところ、400字詰め原稿用紙に手書きで原稿をお寄せいただきました。さすが、ご自身でも執筆されるだけあって、彼らしい機知に富んだ文章です。ウィンドウと共にぜひご鑑賞ください。



さて、展覧会期に重なるのでショーウィンドウのディスプレイもどうだ、と持ちかけられて意匠を考えるハメになった。もとい、考えさせて頂ける事になった。

街で見かけるショーウィンドウは大抵、親切で間抜けだ。急ぎ足の一瞥にも、立ち止まっての凝視にも堪えられる様にしつらえてあり、意思ではなく意匠のみが目に入るようになっている。

其う云うのも悪いとは思わないが、好みから言うと、谷中あたりの小窓なんかが好きだ。あれは商売屋ですらない家の一角に、何故か通りに向けて窓が切られてあって、主好みの小物や手(て)遊(すき)び物が置いてある。ほほえましくもいじましい空間であるが、其う云うものの向こうから、主個人がギラッと透けて見える瞬間がある。

銀座の大通りに、其う云ったギラつきは不要かとも思うが、自分がやるのなら其の辺をそこはかとなく漂わせ、間の抜けないものにしたい。波板を選んだのは、工業製品としての完成度の高さと、にもかかわらず手遊び感を醸し出せる所による。何より自体がとても美しい。光を通し、反射し、ゆらめかせる事を、安価な部材が為す様は全く愉快だ。

これに白木を合はせるのはベストマッチングで、他に何をせずともよいのだが、ショーウィンドウなので品物を置く訳だ。更に、今年のテーマ「時」を盛り込め、との指示に応えるべく、前面を波板で覆ってみた。所々に開いた隙間から中を覗く時、その人は能動的な時間を手にしているはずだ。

そんな所が此れのコンセプトである。実物の見てくれや如何に。

アーティストプロフィール Artist Profile

山口晃 Yamaguchi Akira​

1969年東京生まれ、群馬県桐生市に育つ。96年東京芸術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程終了。時空の混在し、古今東西様々な事象や風俗が、卓越した画力によって画面狭しと描き込まれた都市鳥瞰図・合戦図などが代表作。書籍の装丁や広告も多く手がけ、五木寛之氏による新聞小説『親鸞』の挿絵も担当した。2012年2月メゾンエルメスにて個展を開催する。
フォトクレジット:© Satoshi Asakawa / Courtesy of Hermès Japon