『血を吸うカメラ』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『血を吸うカメラ』
Peeping Tom

オブジェに宿るもの:カメラのまなざし
2017.9.2(土)~9.30(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2017年は「オブジェに宿るもの」をテーマにお届けいたします。
9月はファインダー越しに繰り広げられるサイコ・ホラー『血を吸うカメラ』を上映いたします。

 

『血を吸うカメラ』 Peeping Tom

1960年/イギリス/101分/カラー/ブルーレイ

監督・製作:マイケル・パウエル
原案・脚本:レオ・マークス
撮影:オットー・ヘラー
美術:アーサー・ローソン
音楽:ブライアン・イースデイル
出演:カール・ベーム、アンナ・マッシー、モイラ・シアラー、マキシン・オードリー
フォトクレジット:© STUDIOCANAL
圧倒的な恐怖の前で、人はどんな顔を見せるのか--。映画の撮影助手をしているマーク・ルイスは、一見、どこにでもいる平凡な青年。そんな彼が、恐るべき犯罪を次々と計画し実行していく。マークの亡き父は、人間の「恐怖」についての研究に生涯を捧げた学者で、幼いマークはその実験材料だった。やがて青年となったマークは、女性の断末魔の、恐怖におののく表情に途方もなく惹かれるようになり……。
時代に先んじて猟奇殺人犯の心理を描いた本作は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』と並び称されるサイコ・ホラーの金字塔。巨匠マイケル・パウエルの問題作にして傑作である。
 

作品について About Film

1960年、イギリス出身の2人の映画監督が、30年にわたる輝かしいキャリアの果てに、それまでの作品とはまったく異なるスタイルの暗鬱な作品を世に問うた。

どちらの作品も、期せずして、血腥い犯罪の原因となる性的抑圧をテーマにしていた。犯人の青年はいずれも威圧的な親に育てられ、家族以外に親しい知り合いもなく、内気な若者という見かけの下に深刻な神経症を抱えていた。

『サイコ』と『血を吸うカメラ』は、公開後すぐに「スラッシャー映画」というB級ジャンルに分類されたが、今ではむしろサイコホラーとみなされ、その実験的な側面もひろく認知されている。アルフレッド・ヒッチコックの『サイコ』は、ラストに登場する精神科医の説明が観客を安心させたことも功を奏して大ヒットを記録した。一方、マイケル・パウエルの『血を吸うカメラ』は、批評家から変態的な作品と酷評され、興行的にも大失敗に終わった。

しかし、ヒッチコックもパウエルも観客にショックを与えるために作品をつくったのではなかった。むしろ、映画における「のぞき」の構造を考え、新しい演出法を創造しようとしたのである。映画の観客は暴力に対してどんな態度をとるだろうか。悪に魅せられた観客は、暴力がやむことを願うとともに、暴力がもっと続けばいいと思うのではないだろうか。

独特の魅力をもつ『血を吸うカメラ』(原題『のぞき魔』)は、作品そのものが映画のメタファーとなっている。被写体を撮影するところから始まり、フィルムを上映し、その映像を観客が見るところまで、映画の仕組みのすべてが再現される。つまり、被害者が撮影され、その映像を犯人と私たちが眺めるのだ。

殺人犯の若いカメラマンにとって、カメラは第2の眼であり、おのれの欲望を解放し、妄想を実現するために必要な道具であった。こうしてカメラが犯罪の凶器となり、その一方で、スクリーンに映しだされた映像が犯行の動かぬ証拠となった。

奇妙なことに、劇中の回想シーンに、マイケル・パウエル自身が息子といっしょに登場する。単なるお遊びか、それとも自分自身の心の闇をぬぐい去ろうとしたのか。その答えは誰にも分からない。いずれにせよ、パウエルは観客と被写体に対して監督の力を誇示したのである。

『血を吸うカメラ』は、映画へのオマージュである。映画とは、心に秘めた幻想を具体化する最良の方法である。しかし、それは同時に危険な方法ともなる。パウエルの作品に沿って言えば、愛する者はときに殺人さえも犯すからである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
9月2日(土)、9月3日(日)、9月9日(土)、9月10日(日)、9月16日(土)、9月17日(日)、9月18日(月・祝)、9月23日(土・祝)、9月24日(日)、9月30日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。