『アリス』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『アリス』
Alice

オブジェに宿るもの:アリスの工場
2017.4.1(土)~4.30(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2017年のテーマは「オブジェに宿るもの」。
幕開けとなる4月は、ユーモラスなオブジェたちが彩る長編ファンタジー『アリス』をお届けします。

 

『アリス』 Alice

1988年/スイス=西ドイツ=イギリス/84分/カラー/35mm

監督・脚本・美術:ヤン・シュヴァンクマイエル
原作:ルイス・キャロル
アニメーション:ベトリフ・グラセル
撮影:シュヴァトプルク・マリー
音響:イヴォ・シュパリ、ロベルト・ヤンサ
編集:マリエ・ゼマノヴァー
共同美術:エヴァ・シュヴァンクマイエロヴァー、イジー・ブラーハ
製作:ペーター=クリスティアン・フォイター
出演:クリスティーナ・コホウトヴァー、カミーラ・バウアー
フォトクレジット:© CONDOR FEATURES. Zurich/Switzerland. 1988
ウサギを追いかけたアリスが迷い込んだのは、不気味で摩訶不思議な世界。
ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を原作に、実写とストップモーション・アニメを組み合わせた本作は、チェコの人形アニメーション作家、ヤン・シュヴァンクマイエルが3年の歳月を注ぎ完成させた初の長編映画。釘の生えたバゲット、靴下のイモムシ、くるくると動き回るカツラ、バターまみれの懐中時計……。不思議なオブジェに彩られ、不気味ながらもユーモラスで愛らしいキャラクターたちがおりなす、奇想天外なワンダーランド。
 

作品について About Film

ルイス・キャロルは、不気味なものを描くために『不思議の国のアリス』を書いたのではないだろうか。フロイトがのちに概念化するこの「不気味なもの」に、ヤン・シュヴァンクマイエルもまた魅せられている。

チェコスロヴァキアに生まれたヤン・シュヴァンクマイエルは、その想像力、夢幻性、ブラックユーモアによって多くの同業者たちを惹きつけてきた。プラハにおけるシュルレアリスム運動のメンバーであり、ありとあらゆるものを集めるコレクターとしても知られている。シュヴァンクマイエルの『アリス』は、少女の夢の世界を再現するのではなく、むしろ彼自身の宇宙に深く沈潜していく。生身のアリスが登場し、シュヴァンクマイエルの陳列室に迷いこむ。シュヴァンクマイエル自身のオブセッションを反映するその場所には、遊び心と恐怖が共存し、日用品と怪物たちが同居する。

伝統的なアニメーションでは、オブジェがまるで人間のように動きだす。たとえば、ラディスラス・スタレヴィッチの鉛の兵隊やピノキオの操り人形などが、その典型である。シュヴァンクマイエルの場合はむしろ、オブジェそのものが自律的に動きはじめる。そのことでかえって、オブジェが生きているように見えるのだ。

シュヴァンクマイエルは、しばしば、古びたガラクタを積みかさねたり壊したりする。そうすることによって、日常の隙間をこじ開け、人間の心のうちを暴こうとするのである。「どんなオブジェも、連想や類推によって意識下のイメージと結びつく」。シュルレアリスムの原理にしたがって、シュヴァンクマイエルはそう述べていた。雑多なオブジェを画面いっぱいに並べるのも、既成秩序や美術に対するシュルレアリスム的な抵抗ではなかったか。

ストップモーションを用いながら、シュヴァンクマイエルはあえて滑らかな映像を求めることなく、ぎくしゃくとした動きを重ねていく。そして突然、同じ技法をつかって、アリスを生身の少女から人形に変えてしまうのだ! 血のかよった肉体が、命のない機械仕掛けの物質に変わる。同時に、無機的な物質が生き物のように動きだし、奇怪な動物たちが少女を責めさいなむ。

作品の冒頭、少女が観客にむかって、映画をちゃんと見るには目を閉じなきゃいけない、と語りかける。画面から聞こえてくる響きに、耳をそばだてなければならないのだ。だが、音楽の類いは何も聞こえてこない。ものが触れあう音、きしむ音、歯車のかちかちという音、金属がぶつかる音、奇妙な物音ばかりが耳に響く。様々な効果音が、しばしば映像とずれながら、このユニークな作品にリアリティと幻想性をもたらす。この映画はまさに、目で見るだけでなく耳で聞くべき作品なのだ。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
4月1日(土)、4月2日(日)、4月8日(土)、4月9日(日)、4月15日(土)、4月16日(日)、4月22日(土)、4月23日(日)、4月29日(土・祝)、4月30日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。