『ひきしお』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ひきしお』
Liza

自然――軽やかなギャロップ:二人のアイランド
2016.10.1(土)~10.30(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2016年は「自然 ― 軽やかなギャロップ」をテーマにお届けいたします。
10月はエーゲ海の孤島を舞台とした愛の寓話『ひきしお』をご紹介します。

 

『ひきしお』Liza

1971年/フランス=イタリア/96分/カラー/ブルーレイ​

監督: マルコ・フェレーリ
脚本: エンニオ・フライアーノ、ジャン=クロード・カリエール、マルコ・フェレーリ
撮影: マリオ・ヴルピアーニ
音楽: フィリップ・サルド
出演: カトリーヌ・ドヌーヴ、マルチェロ・マストロヤンニ、ミシェル・ピッコリ、コリンヌ・マルシャン
フォトクレジット:© STUDIOCANAL
奇妙な男女の孤島での日々を描いた、鬼才フェレーリの異色作。喧嘩をした恋人から逃れ、エーゲ海の無人島にやってきた、透き通るように美しい女、リザ(カトリーヌ・ドヌーヴ)。その島で、文明から遠く離れて孤独に暮らす男、ジョルジュ(マルチェロ・マストロヤンニ)。いつしか共に暮らし始める二人だが、その関係は次第に歪んだ形を見せ始める……。人との関わりを捨てた男女が孤島でめぐり逢い生まれた、幻想的な愛の軌跡。当時恋愛関係にあった二人の大胆な演技が話題を呼んだ、ドヌーヴ最大のヒット作。
 

作品について About Film

女は犬のごとく首輪につながれ、従順に男の手をなめる。そんな場面を描いた『ひきしお』のような映画は、今日ではもう作れないかもしれない。しかし、自由主義の風が吹いた1960年代から1970年代にかけては、およそどんなことでも表現できたのだ。とりわけ、イタリアとフランスで活躍したマルコ・フェレーリは、世の道徳など一顧だにせず、あらゆることを自由に表現した。
フェレーリは、タブーを冒すことも意に介さず、一作ごとに西洋社会の恥部を暴いた。その作品に描かれたのは、食欲の限りを尽くす金持ちの男たち(『最後の晩餐 (La Grande Bouffe)』)であり、食料支援のために訪れたアフリカで現地人に食われる若者たち(『白人はうまい (Y'a bon les blancs)』)であった。あるいは、妊娠をのぞむ若妻の飽くなき性欲(『女王蜂 (L'ape regina)』)や、フェミニズムの犠牲となった男の自己去勢(『最後の女 (La dernière femme)』)を描いた。このような極端な物語をつうじて、フェレーリは私たちの常識や苦悩をえぐったのである。
『ひきしお』にはそこまでの過激さはないが、この作品もまたフェレーリが得意とするテーマのひとつ、男女のあいだの所有と愛情の関係をあつかっている。
支配と従属というテーマは、他の監督であれば婉曲に表現したりスキャンダラスに描いたりするようなテーマかもしれない。しかし、フェレーリは一片の曖昧さもセンセーショナリズムも交えずに正面から切り込んでいく。その直截的な姿勢が、ジャズのメロディとあいまって、この作品に冷静なユーモアをもたらす。
半球形のトーチカを隠れ家にする現代のロビンソン・クルーソーと、白いサンローランのスーツを身にまとって海から現われ、すこしずつ「雌犬」(イタリア語版の原題)に変わっていくブロンドの美女。この奇妙なカップルを、ヨーロッパの映画界を代表するふたりの俳優が演じた。かれらの演技はおどろくほど自然で、物語の倒錯性にもかかわらず、いやらしさをまったく感じさせない。
現実から逃避して暮らすふたりも、戦争の気配を感じ、パリでの暮らしを思い出すときなどに、外の世界を意識する。しかし、世界から隔絶された孤島で、男と女はふたりきりで向き合って生きるほかない。ふたりが幸せになれるとしたら、その幸せはこの島でみつかるのだろうか。天国のような砂浜も、白い岩も、彼らを理想郷にみちびいてはくれない。恋人たちはふたりの世界のうちにユートピアを見つけなければならないのだ。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
10月1日(土)、10月2日(日)、10月8日(土)、10月9日(日)、10月10日(月・祝)、10月15日(土)、10月16日(日)、10月22日(土)、10月23日(日)、10月29日(土)、10月30日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。