『殯の森』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『殯の森』
La Foret De Mogari by Naomi Kawase

自然 ― 軽やかなギャロップ:生ける者、死せる者
2016.4.3(日)~4.30(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2016年は「自然 ― 軽やかなギャロップ」をテーマにお届けいたします。
4月は、家族、生と死をテーマに作品を撮り続ける河瀨直美監督による、『殯の森』です。

 

『殯の森』 La Foret De Mogari by Naomi Kawase

2007年/日本=フランス/97分/カラー/35mm

監督・脚本・プロデュース:河瀨直美
撮影:中野英世
照明:井村正美
録音:阿尾茂毅
美術:磯見俊裕
音楽:茂野雅道
ピアノ演奏:坂牧春佳
出演:うだしげき、尾野真千子、渡辺真起子、ますだかなこ、斉藤陽一郎
配給:組画
フォトクレジット:ⒸKUMIE/Celluloid Dreams Production/Visual Arts College Osaka
自然豊かな里山に、旧家を改装したグループホームがある。ここで介護スタッフとともに生活を営む認知症患者の一人、しげきは、33年前に妻を亡くして以来、彼女との思い出の中に沈んでいた。新任の介護福祉士の真千子もまた、我が子を亡くし、夫と別れ、心を閉ざして生きていた。戸惑いながらも、次第に心うち解け合っていく2人は、ある日しげきの妻の墓参りへ出掛ける。辿り着いたのは「殯の森」。森の奥へ奥へと、2人は死者の面影を求めて彷徨ってゆく……。
奈良県東部の山間地で撮影された官能的で静謐な自然が美しい、第60回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。
 

作品について About Film

老人は、33年前に亡くした妻の思い出に今もとらわれている。無口で、認知症を患わっており何をしでかすか分からない。若い女は子供の死によって心を閉ざし、罪の意識に苛まれている。それぞれに悲しみを抱えたふたりは、思いがけないことから共に旅をすることになる。ふたりは死者に少しでも近づこうと歩みを進め、それにつれてお互いの距離も少しずつ縮まっていく。

河瀨直美は、作品の冒頭から大きな問いを投げかける。最愛の者を失ったとき、わたしたちはどうやってその悲しみから立ち直ればいいのか。人生にはどんな意味があるのか。

『殯の森』は、生きる者たちと死んだ者たちの世界をはっきりと分けて描く。ふたつの世界は物語の展開においても映像のスタイルから言っても明確に区別されるが、同時に、目に見えない糸によってしっかりと結びつけられている。生きる者の世界は、茶畑に囲まれた老人ホームと同じく、あの世への入口にすぎない。そこは、人生の最期をおだやかに迎えるための場所であり、人間の手で丹念に整えられた周囲の自然に似て、語られる言葉はあくまで優しく、苦痛は遠慮がちに表現される。

逆に死者の世界は、野生の自然の側にあり、そこでは苦しみや痛みがむき出しのまま表現される。しげきと真千子は、植物の迷宮を思わせる森の奥深くで、文字どおり未開のままの自然に包まれる。森は湿気に満ち、ざわざわと樹々が揺れうごく。耳に聞こえるのは、風のうねりと、草木のざわめきと、川を流れる水の音だけ。ずっと喪に服してきたふたりのまえに、まるで森の化身のように、最愛のひとの幻影があらわれる。

迷いなく歩きつづける老人とその後ろを不安気に追いかける若い女の関係は、いつしか逆転する。逃げる者が案内役となり、ふたりは森のなかを進んでいく。しげきにとってそれは終着地をめざす旅であり、真千子にとっては通過儀礼の旅となった。

大地に深く根を下ろし天に向かってまっすぐ伸びる森の樹は、ふたりにとって、命あるすべてのものと死者の魂とをつなぐ架け橋にほかならない。最初は怖ろしく思えた原初の森が、今はふたりを守ってくれる。ついに喪が明ける。冒頭に映しだされた長い葬列によっても、時の流れによっても果たし得なかったことが、森のなかで果たされたのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

上映スケジュール Schedule

上映日
4月3日(日)、4月9日(土)、4月10日(日)、4月16日(土)、4月17日(日)、4月23日(土)、4月24日(日)、4月29日(金・祝)、4月30日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。