『青いパパイヤの香り』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『青いパパイヤの香り』
L’odeur de la papaye verte by Tran Anh Hung 

自然 ― 軽やかなギャロップ:家の中
2016.3.5(土)~3.27(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2016年は「自然 ― 軽やかなギャロップ」をテーマにお届けいたします。
3月は、サイゴンの美しい自然をセットで再現した、トラン・アン・ユン監督のデビュー作『青いパパイヤの香り』です。

 

『青いパパイヤの香り』L’odeur de la papaye verte by Tran Anh Hung

1993年/フランス=ベトナム/104分/カラー/ブルーレイ​

制作総指揮:クリストフ・ロシニョン
監督・脚本:トラン・アン・ユン
撮影・照明:ブノワ・デローム
音楽:トン・タ・ティエ
美術:アラン・ネーグル
出演:トラン・ヌー・イェン・ケー、リュ・マン・サン、トルゥオン・チー・ロック、グェン・アン・ホア、ヴォン・ホア・ホイ
字幕:古田由紀子
フォトクレジット:©1993 LES PRODUCTION LAZENNEC
1951年ベトナム、サイゴン。とある資産家の家に奉公人として雇われた10歳の少女ムイは、一家の雑事を懸命にこなしていた。ある日ムイは長男の友人クェンに出会い、彼に淡い恋心を抱く。それから10年が経ち、美しく成長した少女は、音楽家になったクェンの家に奉公に出る。ムイの献身的な愛情と感性は、クェンの心に変化をもたらしてゆくが…。
雨上がりの土、露に濡れた緑、通りの喧騒とまばゆい日差し。自然が美しく香るサイゴンの風景は、実は全篇がフランス郊外スタジオでのセット撮影。1993年カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)、1994年セザール賞新人監督賞を受賞した本作は、ベトナム系フランス人、トラン・アン・ユン監督のデビュー作である。
 

作品について About Film

トラン・アン・ユン監督は、ひとりで物思いにふけるような子どもだったにちがいない。つねに五感を開き、鳥の声に耳を傾け、熱帯のあざやかな緑を見つめ、調理場で野菜を炒める匂いに心を奪われていたのではないだろうか。13歳でフランスに移り住んだトラン監督の心の底には、ベトナムでの少年時代に出会った色や音、味や香りが深く刻みこまれているのだろう。『青いパパイヤの香り』という題名からも、そのことはよく伝わってくる。

パリ郊外のスタジオで、細部にまでこだわって見事に再現されたサイゴンの一軒の家を舞台に、映画はいっさいの無駄な言葉をはぶき、視線と身体の動きだけで、この家をとりまく自然の趣きを表現する。虫かごに入れられたコオロギ、どこにでも顔をだす虫たち、食卓での礼儀作法、屋内と屋外の見分けがつかなくなるほど屋敷の至るところに置かれた椰子や檳榔樹の鉢植え。トラン監督は、当時のベトナム社会の規範に則ってしつらえられたこれらの風物を映画の素材として用い、その音や姿をつうじて主人公の少女の感覚を表現する。

男たちは趣味や仕事に没頭し、しばしば家を留守にする。一方、家庭のなかで自然に関わるものはすべて女たちの領分である。もっと言えば、それは女中たちのものである。幼いムイは年かさの女中に見守られながら、植物に水をやり、旬にあわせて野菜を収穫し、その野菜をきちんと料理する方法を身につけていく。不平も文句も言わずに、いつも静かに台所と野菜畑で働き、その時々の主人に仕える。実際のところ、ムイに他の選択肢はない。たとえ主人が同じ年頃でも、ムイはおとなしく主人にかしずくのである。

パパイヤは、主人の食卓へ出すために大切に育てられ丁寧に調理される。その果実は、ムイの置かれた境遇と内なる官能の目ざめを象徴する。ムイがパパイヤの身をふたつに切りわけ、微笑をうかべながら白い果肉にさわるとき、そこには性愛の萌しがみてとれる。

カメラはそんなムイの姿を葉越しにそっと追いかけながら、心の微妙な動きを映しだす。窓越しに、あるいは蚊帳や衝立てを透かして、最後は束縛から解放される少女の人生をたどっていく。『青いパパイヤの香り』は、女性特有の魅力と感性を映しながら、官能と闘争の物語を描くのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)

上映スケジュール Schedule

上映日
3月5日(土)、3月6日(日)、3月12日(土)、3月13日(日)、3月19日(土)、3月20日(日)、3月21日(月・祝)、3月26日(土)、3月27日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。