『追い越し野郎』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『追い越し野郎』
Il sorpasso 

フラヌール - いつでも、そぞろ歩き: アクセルを全開に
2015.9.5(土)~9.27(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2015年は『フラヌール - いつでも、そぞろ歩き。』をテーマにお届けいたします。
9月は、イタリアが誇る巨匠ディーノ・リージが、ローマを舞台に描く傑作コメディ『追い越し野郎』です。

 

『追い越し野郎』Il sorpasso 

1962年/イタリア/105分/モノクロ/35mm​

監督:ディーノ・リージ
脚本:ディーノ・リージ、エットレ・スコーラ、ルッジェーロ・マッカリ
製作:マリオ・チェッキ・ゴーリ 
音楽:リズ・オルトラーニ
出演:ヴィットリオ・ガスマン、ジャン=ルイ・トランティニャン、カトリーヌ・スパーク、クラウディオ・ゴラ、ルチアーナ・アンジョリッロ
フォトクレジット:© Surf Film srl
8月のある午後、生真面目な法学生ロベルトは見知らぬ男(ブルーノ)に電話をかけて欲しいと頼まれる。お礼にと飲みに誘うブルーノだったが、そこから二人のドライブ珍道中が始まる。ロベルトの叔父を訪ね、ブルーノの別居中の妻と娘に会いに出かけ……。声が大きく、自信家で横柄なスピード狂のブルーノに嫌気がさしつつも、どこかで惹かれている正反対のロベルト。そんな矢先、思いもかけない出来事がふたりを待ち受ける……。
 

作品について About Film

ブルーノは、ランチアのオープンカーを全速力で走らせる。アクセルをめいっぱい踏み込み、クラクションを鳴らし、女の子にむかって口笛を吹き、修道女やホームレスをけちらす。助手席のロベルトは、まじめな学生で、予想外のドライブに初めのうちは口数も少なかったが、無遠慮で冗舌なブルーノに戸惑いつつも惹きつけられていく。
ブルーノ(ヴィットリオ・ガスマン)は、口達者で、身振りも大きく、存在感があり、一方のロベルト(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、思慮深く、落ち着いている。正反対のふたりが一緒に旅をするのは、映画や文学でおなじみのシチュエーションだが、ブルーノは、新たな快楽をもとめて遠足気分で旅に出かけ、ロベルトはこの旅をつうじて人生を学び、世界をまったく新たな眼で見るようになる。

1960年代に入り、イタリア映画は黄金時代を迎えた。とりわけ喜劇の分野では、戦後の貧困からようやく抜けだしたイタリア社会を背景に、ドタバタ劇や諷刺をドラマと組み合わせた数多くの傑作が作られた(『困難な人生』『イタリア式離婚狂想曲』『いつもの見知らぬ男たち』など)。
ローマの真新しい街の一画に、古びた一軒の邸宅が建っている。壁の色も褪せたこの住宅は、すべてのイタリア人が奇跡的な経済発展の恩恵にあずかったわけではないことを示している。ディーノ・リージ監督は、イタリア人が過去と現在のあいだで引き裂かれる様子を、あるいは、ツイストやビキニや水上スキーを楽しむ姿を映しだす。

ブルーノは、悲劇的な人物である。ル・ステュディオで2013年に上映したフランク・ペリー監督の『泳ぐひと』の主人公と同じく、その自信にあふれた態度は、孤独と心の弱さを隠す仮面にすぎない。個人主義者で、ずる賢く、粗雑で、平気で他人の世話になり、女たちのあいだを飛びまわる道楽者。しかし徐々に、その魅力が明らかになる。プレイボーイのマッチョな厚かましさも、突き抜ければかえって笑いを誘う。時おり、繊細な観察眼をみせることもある。最終的にはブルーノに心酔してしまう誠実なロベルトも、ブルーノ自身も、簡単に割りきれる人間ではないのだ。こういったところにも、リージ監督がエットレ・スコーラとともに書いたシナリオの素晴らしさがあらわれている。
本作は、封切り時に大成功を収めた。しかし、およそコメディーらしからぬ結末に、批評家たちは戸惑いを隠さなかった。もし彼らが、1972年の「ポジティフ」誌に掲載されたリージ監督自身の言葉を読んだとしても、特に驚くことはなかっただろう。「ガスマンは破壊的な男を演じたのだ。この男は、何かを築くということができないのである。薄っぺらなファシスト。典型的なイタリア男。精神的な深みを欠いた好戦的な男なのだ」。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
9月5日(土)、9月6日(日)、9月12日(土)、9月13日(日)、9月19日(土)、9月20日(日)、9月21日(月・祝)、9月22日(火・祝)、9月23日(水・祝)、9月26日(土)、9月27日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。