『短編オムニバス ― 大地、海、そして空』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『短編オムニバス ― 大地、海、そして空』
Short Film Selection – Sur terre, en mer, dans les airs

2015.8.1(土)~8.30(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2015年は『フラヌール - いつでも、そぞろ歩き。』をテーマにお届けいたします。
8月は「旅」にまつわる5本の短編セレクション。旅を通して知る出会いや別れ、人はどこから来て、そしてどこへと向かうのか……。
アニメーションや実写など、バリエーション豊かな手法を用いて、大地へ、空へ、そして海へと繰り広げられる旅や冒険を、ユーモラスに、時にシニカルに、また時には優しい目で見つめた作品たち。是非お子様とご来場ください。

 

『短編オムニバス ― 大地、海、そして空』Short Film Selection – Sur terre, en mer, dans les airs

*5作品連続上映 (約56分)
*本プログラムは10歳以上のお子様にもご参加頂けます。

1. 『大熊座号の乗客』 Les Passagers de la Grande Ourse 
1943年/フランス/9分/カラー/35mm

監督:ポール・グリモー

2. 『大西洋横断』 La Traversée de l'Atlantique à la rame 
1978年/フランス/21分/カラー/35mm

監督:ジャン=フランソワ・ラギオニ

3. 『渡り鳥の珍道中』 La grande migration
1995年/フランス/7分/カラー/35mm

監督:ユーリ・チェレンコフ

4. 『マダガスカル旅日記』 Madagascar, carnet de voyage 
2010年/フランス/11分/カラー/35mm

監督:バスティアン・デュボア

5. 『トランス・ムンディア・エクスプレス』 Trans Mundia Express 
2014年/フランス/8分/カラー/HD
監督:アンヌ=ソフィー・デルセリ 
製作:La Fémis, École nationale supérieure des métiers de l'image et du son
フォトクレジット:© Studiocanal / © La Fémis
 

作品について About Film

ハラハラドキドキの大冒険。大地と海と空を舞台に、5つの旅の物語がはじまる。5本の短篇アニメーションに登場するのは、勇猛果敢な探検家、好奇心いっぱいの旅人、思いがけず船に乗りこんだ子供たち、迷子になった渡り鳥……。わたしたちもそんな登場人物とともに、かれらに命を吹きこんだ映画監督、アニメーター、美術監督の想像の世界へと旅立とう。

『大熊座号の乗客』は、はからずも飛行船の乗客となった少年と犬の物語である。主人公のひとりと1匹は、空に浮かんだ豪華客船のなかで謎の万能ロボットに遭遇する。ポール・グリモーは、科学を象徴するこのロボットを初めは恐ろしい存在として描く。しかし最後の場面で、ほんとうは心優しい友人であることが明らかになる。
本作は、広告用のアニメーションを制作していたポール・グリモーが初めて手がけたフィクション作品であるが、すでに後年の特徴となる繊細な詩情が感じられる。グリモーは、しばしば、ウォルト・ディズニーに比較されてきた。たしかに、ふたりのアニメーションには共通点がある。動画のなめらかさ、はっきりと描かれた輪郭線、動物が主要キャラクターとして登場するコミカルで親しみやすい物語などは、どちらの作品にも共通する特徴である。
グリモーの作品はいつもシュ―ルレアリスム的な雰囲気をもち、ほとんど抽象画のように見えることもある。斬新なフレーミングと極端に強調された遠近法が、ゆたかな表現力と目もくらむほどの躍動感を生みだす。ディズニーがシュールレアリスムの巨匠サルバドール・ダリとともに数年後に企画した未完の作品『デスティーノ』で目指したのも、まさにそのような作品だった。

『大西洋横断』という題名は、アスリートが偉業をはたす波瀾万丈の物語を期待させる。しかし、この作品は冒険心とも武勇伝とも関係がない。ただひと組の男女が、まるで散歩でもするように静かに航海をつづけていく。果てしなく広がる水平線に感動することもなく、小さな「愛と勇気」号のうえでなんの変哲もない日常をいとなむ。おしゃれをして、音楽を楽しみ、愛をささやき、言い争いをする。
素朴な画風と水彩画のおだやかさがメランコリックな雰囲気をかもしだし、物語はしだいに夢の世界に近づいていく。現実とは思えない不気味な出来事がつづき、難破船の残骸や幽霊楽団が不吉の前兆のようにどこからともなく現れる。
この航海は人生を象徴している。長い旅の果てには避けようのない結末が待ち受けていて、船上のふたりもそのことを知っている。
幸いにも、この作品は悲しみや不安を感じさせるものではない。むしろ、映像の美しさと登場人物の人間性が見る者の心をうつ。作者のジャン=フランソワ・ラギオニは、偉大なるポール・グリモーの弟子なのである。

『渡り鳥の珍道中』は、冬をむかえた鳥たちが南へ旅する物語である。ところが、そのうちの1羽がうっかり仲間からはぐれてしまう……。
悲しげな表情でコミカルな動きをする1羽の渡り鳥が、旅の途中で迷子になり、方角を見失い、かずかずの災難にみまわれる。ロシア・アニメの伝統を継承するユーリ・チェレンコフは、その旅の様子をぎこちない線で描きだす。不意に仲間を見失い、空と海の見分けもつかない茫漠とした空間にとり残された不安を、繊細なユーモアをもって表現する。しかし、たとえ天地をさかさまに取り違えようとも、仲間といっしょならば何も心配することはない。

『マダガスカル旅日記』は、題名どおりの作品である。旅日記の絵が動き、バスティアン・デュボア監督がマダガスカル島を初めて旅する様子が語られる。作品には、監督本人が好奇心いっぱいの旅人として登場し、島の住民やその風習に惹かれ、自然の懐深くに入りこんでいく。
デュボア監督は、現実を美化するためにアニメーションを選んだわけではない。むしろ、観光パンフレットや絵葉書とは違うものの見方をしようとする。ページが進むにつれて、絵のスタイルは変化し、色合いもカラーから白黒に変わる。絵には文章も添えられる。この旅日記には、生命力と躍動感、率直さと遊び心がつまっている。バスティアン・デュボアはデジタル技術も用いながら、肖像画家を思わせる優れた技術でひとびとの表情を描きわけ、まるで飛行機で空撮したように風景を俯瞰する。旅日記の最後のページが閉じられるとき、わたしたちも旅を終えた気分になる。

『トランス・ムンディア・エクスプレス』に乗っているのは、絵に描かれた人物ではなく生身の人間である。どの乗客も蝋人形のように見えるが、間違いなく生きている。では、なぜ、この列車は硬直した乗客でいっぱいなのか。乗客が倒れるたびに、冷静に元の場所へ戻してまわる乗務員は何者なのか。
誰かが人形を操っているようなこの謎めいた作品は、映画美術の学生だったアンヌ=ソフィ-・デルスリが大学の卒業制作として完成させたものである。デルスリ監督は、この作品で昔の列車の雰囲気を再現しようとつとめた。その独特の雰囲気は、アルフレッド・ヒッチコックやアガサ・クリスティからウェス・アンダーソンにいたる多くの監督や作家たちの想像力を刺激してきた。デルスリ監督の幽霊列車は、映画美術のスタッフも映画監督やアニメーターと同じく、物語を創造し、登場人物に命を吹きこめることを見事に証明してみせた。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
8月1日(土)、8月2日(日)、8月8日(土)、8月9日(日)、8月15日(土)、8月16日(日)、8月22日(土)、8月23日(日)、8月29日(土)、8月30日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。