『眠る男』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『眠る男』
Un homme qui dort by Bernard Queysanne

フラヌール-いつでも、そぞろ歩き: 君はまだ歩く、行き当たりばったりに
2015.2.1(日)~2.28(土)

  • アルファベットの「e」を使わずに書くなど、徹底した制約による実験文学で知られるフランスの小説家、ジョルジュ・ペレックの同名作品の映画化。本作は1974年、若手監督による独創的なフランス映画に対して贈られるジャン・ヴィゴ賞を受賞。
    パリの屋根裏部屋に住む25歳の男子学生は、自分を取り巻く世界から自らを隔て、無関心を決め込む。部屋に閉じこもりながら、空想のなかでひとりパリの街を彷徨うが、徐々に現実との境界が曖昧になってゆく。
    男子学生の声は聞こえず、原作の小説と同じくすべては二人称で画面の外から語られるのみという実験的でユニークな作品。第二の主人公ともいうべきモノクロームで描かれたパリの街並みが、絶えず観る者を魅了する。

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2015年は『フラヌール-いつでも、そぞろ歩き』をテーマにお届けいたします。2月は、夢かうつつか、空想の中でパリの街を彷徨う 『眠る男』を上映いたします。

 

『眠る男』Un homme qui dort by Bernard Queysanne

1974年/フランス/77分/モノクロ/35mm​

監督、原作: ベルナール・ケイザンヌ、ジョルジュ・ペレック
制作: ピエール・ヌリス
撮影: ベルナール・ジゼルマン
出演: ジャック・スピセール、リュドミラ・ミカエル(ナレーター)
音楽: フィリップ・ドロゴス、ウジェニー・クフラー
字幕: 松岡葉子
字幕監修: 海老坂武
配給: Dovidis
フォトクレジット:© Dovidis
 

作品について About Film

『眠る男』は、文学と映画の出会いから生まれた分類不可能な作品のひとつである。マラパルテ、ジュネ、マルローといった文学者たちと同じく、ジョルジュ・ペレックもこの作品でたったいちどだけ文学と映画の出会いに手を貸したのだ。

ペレックが、ベルナール・ケイザンヌとともに選んだのは(ふたりは最終的なミキシング作業まで共同でおこなった)、じぶんの小説を脚本化するかわりに、小説の短縮版をナレーションで聞かせる方法だった。登場人物はひとりだけ。しかも、ひとことも喋らない。筋らしい筋もなく、これといった展開もみられない。

ペレックのリスト好きは有名だが、この作品でも、日常的な身振りや品物をひとつずつ列挙することで、都会の孤独や虚脱感といったテーマが表現されていく。

カメラは無名の若い男によりそい、その視線と行動を記録していく。はじめは、男が住む小さな屋根裏部屋。次いで、男とともにパリの街をあてどもなくさまよう。それにつれて街の風景がリストアップされていく。メトロ、ビストロ、セーヌ川にかかる橋、オスマンがつくりあげた美しいパリの街並み。しかし、そんな型どおりのパリはすっかり色褪せ、それどころか今にも崩れ落ちそうな廃墟に見える。パリは、亡霊の徘徊する迷路となったのだ。男は心に虚しさをかかえ、うつろな瞳で歩きまわる。その空虚な心が、パリの風景に反映したのだ。

無気力な男のあとを追いつづける。そんな映画を見ていたら、わたしたちの心までからっぽになってしまわないだろうか。しかし、もしそうならば、この映画を見たときの陶酔感はどこから来るのか。

まずは、言葉の力。いつ果てるともしれない詩の言葉が、音楽的なリズムを響かせながら執拗につづいていく。次いで、無表情のまま沈黙する男の顔。その顔は、世界から逃れたいという観客自身の願いを鏡のように映しだす。ペレックの言葉を語る女の声は、その若い男だけでなく、わたしたちにも向けられている。

最後に、映画そのものの夢幻性がある。この夢幻性を生みだすのは、アラン・レネを思わせる場面の転換と反復であり、夢のなかの風景のように鮮明で奥行きのある映像である。さらに白黒のフィルムが非現実感を高める。『眠る男』は、長回しの末に冒頭と同じ風景で終わる。まるで、主人公の男が耐えがたく不毛な経験を経て、元の場所に戻ったかのようだ。おそらく、それは必要な経験だったのだ。眠る男が見たのは悪夢だったかもしれない。しかし、それはわたしたちの夢でもあったのだ。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
2月1日(日)、2月7日(土)、2月8日(日)、2月11日(水・祝)、2月14日(土)、2月15日(日)、2月21日(土)、2月22日(日)、2月28日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。