『気狂いピエロ』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『気狂いピエロ』
Pierrot le fou by Jean-Luc Godard

フラヌール-いつでも、そぞろ歩き: 解き放たれて
2015.1.10(土)~1.31(土)

  • 自らの退屈な人生に辟易していたフェルディナンは、昔の恋人マリアンヌと一夜を共にするが、翌朝、その部屋で死体が見つかる。容疑がかったふたりは、強盗を繰り返しながら南仏へと逃避行の旅に出る。ギャングに追われながらも充実した生活を送るフェルディナン。一方そんな生活に嫌気がさしたマリアンヌは、兄であるという男とともにいつしかフェルディナンを裏切るが…。
    幸福と絶望、自由と愛が、破滅へと向かって疾走してゆく。ランボーの詩をはじめとする引用や修辞を用い、全編シナリオなし、即興演出で撮影された、鬼才ジャン=リュック・ゴダールの傑作かつヌーヴェル・ヴァーグを代表する作品。瞬間の美しさの連続からなる映像の中で、若きアンナ・カリーナの役どころが際立っている。

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2015年は『フラヌール-いつでも、そぞろ歩き』をテーマにお届けいたします。幕開けには、果てなき逃避行、鬼才ジャン=リュック・ゴダールの傑作 『気狂いピエロ』を上映いたします。

 

『気狂いピエロ』Pierrot le fou by Jean-Luc Godard

1965年/フランス、イタリア/110分/カラー/35mm

監督・脚本: ジャン=リュック・ゴダール
製作: ジョルジュ・ド・ボールガール、ディノ・デ・ラウレンティス
音楽: アントワーヌ・デュアメル
撮影: ラウール・クタール
出演: ジャン=ポール・ベルモンド、アンナ・カリーナ
字幕: 関美冬
配給: Tamasa Distribution
フォトクレジット:© StudioCanal
 

作品について About Film

『気狂いピエロ』には、ふたつの「彷徨」が登場する。主人公のマリアンヌとフェルディナンは、散歩でもするようにフランス中をさまよい、犯行を重ねながら地中海にいたる。映画『Badlands』の仏語版タイトルを借りて言えば、それはまさに「地獄の逃避行」だった。テレンス・マリックのその映画でも、逃亡する恋人たちは大自然のなかに隠れ家をみつける。だが、そのふたりがまるで取り憑かれたように殺人をくりかえすのとはちがって、ゴダールの恋人たちを突き動かしたのは社会への反抗心だった。

もうひとつの「彷徨」は、ヌーヴェル・ヴァーグの旗手ゴダールが1960年代の社会へ向けた眼差しのうちにみられる。ゴダールのヌーヴェル・ヴァーグは、世界へ開かれている。シャブロルはブルジョアの退廃を描き、ロメールは教訓話を得意とし、トリュフォーは情熱的な恋愛ドラマを好んだ。ゴダールは現実を注意ぶかく見つめ、社会にコミットしながら、街を歩きまわる。消費社会、芸術、政治、メディアを観察し、コメントをくわえる。そして、ゴダールは映像と物語の両面で、それまでの映画の文法をくつがえした。インサートや「つなぎ間違い」を多用し、赤や青のモノクロームの画面を気まぐれに挿入する(少なくとも表面的には「気まぐれ」にしか見えない)。物語から解きはなたれた映像は、文化的な価値や象徴性をとりもどし、いわば「造形的な素材」に変貌する。ゴダールは映画監督であるだけでなく、画家であり社会学者でもあるのだ。

『気狂いピエロ』という作品は、オープニング・クレジットからすでに「色彩」を感じさせる。画面にひとつずつあらわれるアルファベットは、赤と青の抽象的な記号に見える。次いで、ゴダールは文学趣味を誇示し、その一方で当時の大衆文化(マンガ、広告、ポップアート、ポスター)にカメラを向ける。60年代のアートから20世紀初頭の絵画まで、ゴダールはキャンバスに絵を描くように、フィルムにさまざまな色彩を取り込んでいく。ゴダールはそうやって「現代」という時代のありようを問いなおし、美術史をふり返りながら絵画の規則と向き合うのである。

『気狂いピエロ』は、ゴダールの第一期の掉尾をかざる作品である。ゴダールのキャリアのなかでもっとも物語的かつ「商業的」な時期が終わり、ジャン=ポール・ベルモンドとともに歩んだ時代が過ぎ去った。ラストシーンでは、そのベルモンドが顔に青いペンキを塗りたくる。青く塗られたその顔は、ただそれだけで自由をあらわす。その顔は、ゴダール自身のそれまでの映画に対する訣別であり、ゴダールの映像がつねにひとつの記号であることの証しである。ベルモンドの最後の身振りは、現代美術のパフォーマンスと同じように政治的な意味をにない、ゴダールの来るべき作品を予告するのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
1月10日(土)、1月11日(日)、1月12日(月・祝)、1月17日(土)、1月18日(日)、1月24日(土)、1月25日(日)、1月31日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。