『短編オムニバス ― イリュージョン』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『短編オムニバス ― イリュージョン』
Short Film Selection – Illusions

メタモルフォーズ―変身 : イリュージョン
2014.11.1(土)~11.30(日)

ル・ステュディオは銀座のメゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2014年は『メタモルフォーズ―変身』をテーマに、さまざまな角度から映画をお届けします。

11月のテーマは「イリュージョン」。ジョルジュ・メリエスが見せた映像トリックとイリュージョン。それから100年以上がたち、アニメーションはもちろん、光と影の生み出す影絵、特殊視覚効果やCGグラフィックスなど、今日の映画の技術の進歩は「イリュージョン」への飽くなき探究であるとも言えるでしょう。
11月は、様々なテクニックから生まれた短編オムニバスで、メタモルフォーズする世界を体感してください。

 

『短編オムニバス ― イリュージョン』Short Film Selection – Illusions

『ミュンヒハウゼン男爵の幻覚』 Les hallucinations du Baron de Münchausen
1911年/フランス/10分31秒/モノクロ/35mm

監督:ジョルジュ・メリエス
原作:G. A. ビュルガー
配給:Lobster Films
酒に酔った男爵は摩訶不思議な夢を見る。古代から地獄を思わせる場所まで舞台はめくるめく移り変わり、ドラゴンや蜘蛛女など様々な怪物に遭遇する。

『へんてこなオペラ』 Magical Maestrio
1952年/アメリカ/6分30秒/カラー/35mm

監督:テックス・アヴェリー
製作:フレッド・クインビー
声:カルロス・ラミレス、ドーズ・バトラー
人気オペラ歌手に共演を断られ、腹を立てた手品師。仕返しに、魔法の杖を使って公演中いらずらを仕掛ける。オペラ歌手の愛嬌あふれる七変化に注目。

『プリンス & プリンセス』 Prince et princesse
2000年/フランス/13分/カラー/35mm

監督・脚本:ミッシェル・オスロ 製作:ディディエ・
ビュルネール、ジャン=フランソワ・ラギオニ
音楽:クリスチャン・メイル 字幕:寺尾次郎
ミッシェル・オスロ独特のファンタジックな影絵アニメーション。王子と王女の愛のおとぎ話が、光と影のイリュージョンによって幻想的に浮かびあがる。

『ルーズ・コーナー』 Loose Corner
1986年/アメリカ/10分/カラー/16mm

監督:アニタ・サッチャー
配給:Microscope Gallery
「ルーズな」部屋の隅で、女の子が伸びたり縮んだり、犬が現れたり消えたり。三次元のルールが宙吊りになり、私たちの知覚を翻弄するヴィデオ・アート作品。

『オブラス』 Obras
2004年/フランス/12分/カラー/35mm

監督:ヘンドリック・デュソリエ 製作:ニコラ・シュ
マルキン 音楽:ジャン=フランソワ・ヴィギエ
アニメーション:NoBrain
バルセロナを舞台に、時間・空間を超えて街の破壊と再建を辿る。アニメーションを交え、都市の変化がバーチャルかつ詩的に描き出される。

『ノイズ』 Noise
2011年/ポーランド/7分/カラー/デジタル

監督・製作・脚本・編集:プルズミズロウ・アダムスキ
撮影:プルズミズロウ・アダムスキ、カタジナ・キイェク
協力:ショートショート フィルムフェスティバル&アジア
「音」に形を与えるとどうなるか?ポップなアニメーションによって日常の音を視覚化するとともに、私たちの視覚や想像力がいかに音に影響されるかを気づかせる。

『さなぎと蝶』 La chrysalide et le papillon
1901年/フランス/1分59秒/モノクロ/35mm

監督・脚本:ジョルジュ・メリエス
配給:Lobster Films
巨大な芋虫を蛹の中に放り込むと、美しい蝶に変身した。男は蝶を捕らえようとするが……。映画の魔術師メリエスによる、エキゾチックなファンタジー。
フォトクレジット:© Lobster Films © 2000 Les Armateurs / Studio O / La Fabrique / Gebeka Films © 1986 Anita Thacher / Courtesy of the artist and Microscope Gallery © Hendrick Dussolier © Lobster Films
 

作品について About Film

映画は、ひとをあざむく。この世にありえないことを真実と思わせるために、現実を歪めることもいとわない。観客であるわたしたちも、未知の映像をもとめ、信じがたいものを進んで受け入れ、現実では許されない夢や幻想を生きようとする。今月は「イリュージョン」と題して、奇妙な出来事(ほとんどの場合それはおもしろい出来事でもある)を特殊撮影によって実現する短編作品をそろえた。プログラムは、スクリーンの魔術師と呼ばれるメリエスの作品で始まり、同じメリエスの作品で終わる。特殊撮影にも多様なスタイルとテクニックがあるが、メリエスによって発見されたいくつもの方法は、その後の映画監督や映像作家に多くのインスピレーションをあたえた。突き詰めて言えば、かれらはメリエスの世界や発明を現代風にアレンジしているだけなのかもしれない。

『ミュンヒハウゼン男爵の幻覚』/『さなぎと蝶』
ミュンヒハウゼン男爵は夢のなかでさまざまな場所を訪れ、次から次へと奇怪な生き物におそわれる。メリエスが得意とした波瀾万丈のおとぎ話。だが、物語そのものは幻想的な変身のための口実にすぎない。この世界では、登場人物と舞台装置がいっぺんに姿を変える。しかめつらのお月さまが象に変わり、天国が地獄に変わる。単純なカットインによって時間と場所が置き換わるのは、映画の草創期によく使われたテクニックである。『ミュンヒハウゼン男爵の幻覚』はモンタージュのお手本といってもよい作品だが、メリエスはさらに舞台芸術でもちいられる仕掛けを作中にとりいれた。ウディ・アレンが撮った『カイロの紫のバラ』の主人公と同じく、ミュンヒハウゼン男爵は寝ているあいだに「スクリーン」を通りぬけ、フィクションの世界に足を踏みいれるのだ。このとき、夢と現実の区別はあいまいになり、物語は映画そのもののメタファーとなる。映画は、わたしたちを「催眠術」にかける。別の言い方をすれば、映画の観客は眼をあけたまま眠るのである。
この作品の10年前に、メリエスは巨大な芋虫が「蝶/女」へ二重に変身するさまを想像した。それはメリエスの作品のなかでもっとも短く、もっとも成功した作品となった。驚異と創意と見せかけの素朴さが混じりあったメリエスのスタイルが、この作品でみごとに調和したのである。

『へんてこなオペラ』/『プリンス&プリンセス』
絵であれば、どんなことでも好きに描くことができる。アニメーションはその絵の力によって現実の縛りから解き放たれ、大いなる自由を手にいれるのだ。『へんてこなオペラ』と『プリンス&プリンセス』は、共通のテーマと正反対のスタイルをもつ作品だが、どちらの場合も登場人物がいきなり超現実的な変身をとげるのである。
アメリカンコミックの黄金時代につくられた『へんてこなオペラ』は、手品師のおおかみが魔法の杖をつかってテノール歌手のブルドッグと闘うお話である。作者のテックス・アヴェリーは、動物たちをさんざんな目にあわせる。どの動物も擬人化されているが、ディズニー風の理想化からはほど遠い。顔も体も凶暴にデフォルメされ、どんな大げさな表現もゆるされる。激しい暴力でさえ、展開の早さと不条理なほど馬鹿げたユーモアで相殺される。
ミッシェル・オスロは、王子様とお姫様がカエルや他のいろんな動物になるという紋切り型の物語をあらためてとりあげる。オスロがもし影絵のスタイルと切り絵のテクニックを使わなければ、『プリンス&プリンセス』はありふれた作品になっていたかもしれない。青と黒の2色で描かれた様式的なシルエットは、ロッテ・ライニガーの有名な無声映画『アクメッド王子の冒険』(2007年5月-6月 ル・ステュディオにて上映)へのオマージュである。

『ルーズ・コーナー』
アニタ・サッチャーは、ひとが空間をどうとらえるかといったことをテーマに作品をつくる。映像でもインスタレーションでも、サッチャーは観客の感覚をまどわせるように「線」や「角」をあやつり、思いがけないかたちで縮尺(大小)を変え、位置(内部/外部)をずらし、素材の質感(不透明/透明、現実/仮想)を変化させる。『ルーズ・コーナー』は、二重写しのテクニックと観客の目からは決して見えない光学装置をもちい、撮影用のセットとその縮尺模型をつかって撮影されている。
サッチャーがこどもの世界を舞台にえらぶのは、その作品が遊びに近いからだろうか。それとも彼女自身が、どんな奇妙なことでもやすやすと受け入れる子供たちの眼や感覚、その記憶をとりもどそうとしているからなのだろうか。

『オブラス』/『ノイズ』
デジタルで撮影された『オブラス』と『ノイズ』は、『ルーズ・コーナー』よりもずっと滑らかに、そして自然に、異質なものをひとつの画面に共存させる。デジタル画像の出現は特殊撮影の常識をくつがえし、映画における空間のありようを刷新した。以来、バーチャルなカメラは重力にも障害物にもとらわれず、どこまでも途切れなく移動する映像を可能とした。3Dアニメーションと画像合成によってどんな映像もつくれるようになり、そのためにかえって視覚にばかり訴える作品が増えたが、『オブラス』と『ノイズ』はこの新しい道具をあくまでクリエイティブな想像力と物語を実現するために用いるのである。
スペイン語で「工事現場」を意味する『オブラス』は、バルセロナの街の変化を早送りで見せる。ヘンドリック・デュソリエは、バルセロナの建物と住民を4年間にわたって写真と映画のフィルムに収め、いくつもの場所の記憶と時間をつらぬくようにそのフィルムのすべてをつなぎ合わせ、ひとつづきの目もくらむような映像にまとめあげた。映画は、灯りのついた窓がならぶ夜の建物から始まり、ほぼ同じ場面で終わる。旧市街の窓は外にむかって開かれているが、新しい街は大きなガラス窓のむこうで孤独にふるえているようにみえる。
『ノイズ』は、目に見えない感覚を映像化しようとした作品である。音を見えるようにするには、どうすればよいのか。プルズミズロウ・アダムスキは音を図形で表したり、物音の発生源を映したりすることで、その難問に対処した。映画は、偏執狂的な主人公が隣人の騒音に悩み、じぶんの想像力に押しつぶされそうになっている姿を追い、その心のうちを文字どおり物理的に表現するのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
11月1日(土)、11月2日(日)、11月3日(月・祝)、11月8日(土)、11月9日(日)、11月15日(土)、11月16日(日)、11月22日(土)、11月23日(日)、11月24日(月・祝)、11月29日(土)、11月30日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
※7作品連続上映(約62分)
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。