『トムボーイ』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『トムボーイ』Tomboy

メタモルフォーズ―変身:男の子/女の子
2014.6.1(日)~6.29(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。
2014年は『メタモルフォーズ―変身』をテーマに、さまざまな角度から映画をお届けします。
6月はセリーヌ・シアマ監督の『トムボーイ』をご紹介します。

 

『トムボーイ』Tomboy

2011年/フランス/82分/カラー/35mm​

監督・脚本:セリーヌ・シアマ
音楽:パラ・ワン
撮影:クリステル・フルニエ
編集:ジュリアン・ラシュレー
出演:ゾエ・エラン、マローン・レヴァナ、マチュー・ドゥミ
字幕:加藤リツ子
配給:Films Distribution
フォトクレジット:©Hold-Up films
フランスの小さな田舎町に引っ越してきたばかりの、10歳の少女ロール。少年のような格好で自らを「ミカエル」と名乗り、近所の子供たちに自分を「男の子」だと信じ込ませる。やがて仲間の一人リザは、「ミカエル」に異性としての好意を抱き始めるが‥‥‥。
子供たちの残酷さ、大人たちの戸惑いによって浮かび上がるジェンダーの問題や、少年少女たちに芽生えたばかりのセクシュアリティの戸惑い、脆さと瑞々しさが、緑と水辺の美しい真夏の風景の中で描かれてゆく。
自然で伸びやかな子供たちの演技も素晴らしい。思春期の多感で繊細な少女の心を、極めて丁寧な描写で綴った本作は、2011年のベルリン国際映画祭でテディ賞審査員特別賞を受賞するなど高い評価を受けている。
 

作品について About Film

ロール? それとも、ミカエル? 二重のアイデンティティをもちながら、そのときどきで男の子になったり女の子になったりする。ロールはそうやって暮らすために、じぶんの世界をふたつに区切り、それぞれの側で、周りにいるひとたちの振る舞いに合わせていく。家の外では、友だちといっしょに緑ゆたかな自然のなかで男の子の遊びに興じ、家にいるときは、家族のなかで気兼ねなく長女の役割をはたす。ふたつの世界は厚い壁とガラス窓に隔てられていて、けっして交わることがない。ふたつの世界が交わるとしたら、それは真実が白日のもとにさらけ出されるときだろう。観客はその瞬間がくることを怖れ、待ち望む。

ロールの嘘は、重い結果をもたらすかもしれない。しかし奇妙なことに、映画はほとんど軽やかな調子でその嘘を描いていく。感動の涙を誘うこともなく、ロールの行いを正当化することもない。ただ、ごく普通の家族のきずなをそれとなく示していく。父親はいつも長女のことをそっと気にかける。家族が心待ちにする母親の出産。その出来事は、ロールが踏み越えている生物学的な秩序をあらためて思い起こさせる…。

映画は「子供の目線」で撮影される(映画のなかの大人たちも、子供と同じ高さに立つようになる)。逸話にながされることなく、簡潔に物語をつむぎ、フィックスショットを多用したシンプルな映像でまっすぐに本質と向きあう。この姿勢から生まれる厳粛な重々しさは、ロールの超然とした態度と対照をなす。ロールは冷静に、苦もなく表と裏を使いわけているようにみえる。『トムボーイ』は低予算で製作されたにもかかわらず、フランスで大ヒットを記録した。その一方で毀誉褒貶もはげしく、ある人びとは、持って生まれた男女の違いを否定していると言ってこの映画に腹をたて、逆に、男の子と女の子のどちらになるかは各人が自由に決めることだと考える人たちは賛辞をおくった。

思春期という壊れやすく矛盾にみちた時期を描くことで、セリーヌ・シアマ監督はたしかに、性の同一性がどうやって生まれるかを問いに付している。さらに、シアマ監督はいっさいの価値判断を交えることなく、男女の違いを見分けるための「しるし」や、わたしたちの振るまいを決定づける社会慣習、身体的な特徴を数えあげる。

シアマ監督はさりげなく、冒頭のシーンから観客を罠にかける。車のハンドルをにぎるこの髪のみじかい子どもは、男の子か、女の子か。答えはすぐには明かされない。「わたしたちは何者か。その答えは他者の眼差しによって決まるのです」(セリーヌ・シアマ)。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
6月1日(日)、6月7日(土)、6月8日(日)、6月14日(土)、6月15日(日)、6月21日(土)、6月22日(日)、6月28日(土)、6月29日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。