『ジキル博士とハイド氏』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ジキル博士とハイド氏』
Dr. Jekyll and Mr. Hyde

メタモルフォーズ―変身:闇の彼方へ
2014.4.5(土)~4.29(火・祝)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『ジキル博士とハイド氏』Dr. Jekyll and Mr. Hyde

1932年/アメリカ/96分/モノクロ/35mm​

監督:ルーベン・マムーリアン
脚本:パーシー・ヒース、サミュエル・ホッフェンシュタイン
撮影:カール・ストラッス
出演:フレドリック・マーチ、ミリアム・ホプキンス
字幕:水谷美津夫
配給:アイ・ヴィー・シー
フォトクレジット:アイ・ヴィー・シー
科学実験によって、人間の魂を「善」と「悪」に分ける新薬を開発したジキル博士。薬を飲み、邪悪な怪物「ハイド」に変身しては、夜霧に浮かぶロンドンの街を本能のままに彷徨いだす。豪邸に住み、大学での講義も大盛況、美しいフィアンセとの将来も約束された人生だったが、次第に「ハイド」という邪悪な人格が、ジキル博士の高潔な精神を蝕んでゆく……。
ロバート・ルイス・スティーブンソンの同名の小説を映画化した本作。トーキー初期とは思えないカメラワークやリズムのよさ、特殊メイクと圧巻の変身シーンとともに、人の心に潜む闇の深淵、精神の葛藤の悲劇を描き出している。ジキル博士とハイド氏、一人二役を演じ切ったフレドリック・マーチは、本作で第5回アカデミー賞主演男優賞を受賞した。
 

作品について About Film

ルーベン・マムーリアンが『ジキル博士とハイド氏』を撮影したのは、トーキーがサイレント映画を忘却の淵に追いやってからまだ2年もたたない1931年のことだった。トーキーの出現はたしかに急激な変化をひきおこした。音声がもたらしたリアリズムに為す術をしらず、ただセリフだけを優先して映像を犠牲にする映画監督もすくなくなかった。
マムーリアンは、この新しい表現手段をまえにして怖じ気づくようなことはなかった。かれはこの作品で、映像の美しさと技術の革新を実現するとともに、言いようのない不安を感じさせる斬新な音響を考えだした。

映像の表現力を極限まで押しすすめたサイレント映画の遺産を受けつぎ、『ジキル博士とハイド氏』は、映像の力強さ、夜の場面における表現主義的なライティングとセット、二重露出、技巧的なカメラワークを手にいれた。一人称的なカメラによって撮影された2つの場面で、ジキル博士とハイド氏の顔があいついで鏡に映しだされるのは、観客がジキル博士という穏やかな紳士に感情移入するだけでなく、怪物のようなその分身にも同一化するよう仕向けているからではないだろうか。わたしたちはこのような演出によって、善悪をめぐる心の葛藤、心身の変化、登場人物の苦悩の内奥へと入りこんでいく。

ぷらん、ぷらんと女が足を揺する。ハイド氏のアップになった顔に獣のような表情があらわれる。快楽をもとめて束縛をふりはらった男のみにくい顔に雨がしたたる。怪しげな雰囲気を漂わせるこの場面には、淫らな欲望があからさまに描かれている。
『ジキル博士とハイド氏』は、この種の仄めかしがハリウッドで検閲の対象となる直前に撮られた作品であり、そこにはヴィクトリア時代の抑圧的な社会に生きる人びとのジレンマがよく表現されている。かれらの欲望は、社会慣習や道徳を歯牙にもかけない存在、つまり自分とは正反対の分身によってしか満足させられることがなかったのだ(ちなみに、ハリウッドの検閲は1960年代まで続いた)。

ロバート・ルイス・スティーブンソンの小説を映画化した作品は、それがシリアスな作品であれ、パロディ風のものであれ、どれも「変身」のシーンをどのように表現するかという問題に挑んでいる。特殊撮影をつかってはっきりと見せるべきか、モンタージュによって見せずにすますか。マムーリアンはメーキャップとカラーフィルターを組み合わせることによって、変身の場面をひとつのカットで切れ目なく表現している。しかしそのテクニックは長いこと秘密にされてきた。その秘密を明かすことは、純真な観客の目のまえで映画の正体を暴露することになっただろうし、観客たちはむしろ純真なままでいるべきだったのだ。
当時はまだ、デジタル技術を駆使した「モーフィング」という技法はなかったが、不完全であることでかえって映像に神秘性や詩的な美しさが生まれた。観客であるわたしたちは想像力をたくましくして、幻影にとらわれる喜びにひたればいいのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
4月5日(土)、4月6日(日)、4月12日(土)、4月13日(日)、4月19日(土)、4月20日(日)、4月26日(土)、4月27日(日)、4月29日(火・祝)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。