『泳ぐひと』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『泳ぐひと』
The swimmer

スポーツは素敵!:惑わす水
2013.7.6(土)~7.28(日)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『泳ぐひと』The swimmer

1968年/アメリカ/95分/カラー/35mm​

監督:フランク・ペリー
原作:ジョン・チーバー
脚本:エレノア・ペリー
撮影:デイヴィット・クエイド
出演:バート・ランカスター、ジャネット・ランドガード、ジャニス・ルール
字幕:太田国夫
配給:ムービーマネジメントカンパニー
フォトクレジット:© 1968, RENEWED 1996 HORIAON MANAGEMENT, INC. ALL RIGHTS RESERVED
夏のある日曜の午後。高級住宅地に水泳パンツだけという姿で現れたネッド・メリル(バート・ランカスター)は、友人ダンの家を訪れる。友人夫婦は前夜のパーティでくたびれており、一緒に泳ごうというネッドの誘いを断る。かつては一緒に泳いだ仲であったのに。ネッドは、プール伝いに泳いで自分の家まで帰ろうと、ダンのプールを泳ぎはじめる。
ネッドは次にベティ・グレアム家のプールを訪れる。かつてネッドが恋したベティは、新築のプールを自慢し、小市民生活に満足しきっている。彼は幻滅を感じながら、ハマー夫人の家へ向かう。
隣人たちの見せる態度は、次第に奇異なものとなってゆく……。
 

作品について About Film

久しぶりに故郷カリフォルニアに戻ってきたネッド・メリルは、友人知人宅のプールを次々に泳ぎながら家まで帰り着くという奇想天外な計画を思いつく。この空想の大河をさかのぼり、水から上がって友人たちの邸宅に水泳パンツ姿で現れては、再び塩素入りの青い水に潜っていくネッド。この旅路を通じて過去との出会いを果たせるはずだったが、夢は色あせ、失望にとってかわられていく。アメリカンドリームの矛盾を描き続けた作家、ジョン・チーヴァーの小説を原作とする『泳ぐひと』は、ハリウッドが自らの神話を破壊することをためらわなかった時代、バート・ランカスターのようなスターが鍛え抜かれた自らの肉体を苛み、いつも演じていたヒーローのイメージを覆すことを恐れなかった時代を映し出している。

『泳ぐひと』はうわべと内面の違いについての映画であり、幻想の終わりについての映画である。映像はのどかで日差しに溢れているし、カリフォルニアのプールサイドで寝そべりながら、心地よさげに身を震わせる日焼けした肉体は健全そのもの。しかしその陰で、危機と悲劇が忍び寄る。フランク・ペリー監督の本作は1966年に制作されたが、10年前なら日の目を見ることはなかっただろう。当時、ハリウッドの主流作品はまだ、理想化された明るいアメリカのイメージを伝え続けていたからだ。理性によって困難を乗り越え、「サクセスストーリー」がハッピーエンドで終わっていた時代だった。
風変わりで意表をつく『泳ぐひと』は忘れられた映画の一つだ。ヨーロッパのヌーヴェル・ヴァーグに影響を受けた若い監督たちが、社会の機能不全とアメリカンドリームの裏側を暴こうと試みた「ヌーヴェル・ハリウッド」台頭期の作品であるにもかかわらず、興行的には大失敗を喫した。
制作の2年後にようやく配給された本作品に観客が非常に当惑したのは、これが伝統を破壊し尽くし、あらゆるしきたりに挑戦する映画だったからだ。アメリカの物質主義と自己愛を描いているだけでなく、設定はシュルレアリスム的でありそうもないし(プールづたいに一つの地域を横断するとは!)、さまざまな疑問が謎のまま放置されてもいる。
『泳ぐひと』からもう一つ見て取れるのは、ある種のスターたちが曖昧さや弱さを備えた人物や絶望した人物を演じ、大胆に自分のイメージを壊そうとしたことだ。ブランド、ニューマン、イーストウッドは一種のマゾヒスティックな喜びをもってそれを行った。カウボーイや軍人、海賊の役で知られたバート・ランカスターは、『成功の甘き香り』(A.マッケンドリック監督、1957年)のふてぶてしい劇評コラムニストや『山猫』(L.ヴィスコンティ監督、1963年)の老いていくシチリア公爵など、ヒーローとはいえない役を進んで演じた戦後初期の俳優の一人だった。
『泳ぐひと』では映像の最初から最後まで、53歳にして輝くようなランカスターが鍛えられた肉体を誇らしげに見せつけるが、弾けるような笑顔と張り切った筋肉の陰には待ち受ける衰退の兆しが垣間見えている。美しい外見の裏側にある、傷つき疲れた肉体が少しずつ露になっていく。このありえない泳ぎ手は自称冒険家だが、実は過ぎ去った時代の思い出を生きる、敗者にも夢想家にも居場所を与えない社会で迷ってしまった男に過ぎないのである。

アレキサンドル・ティケニス(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
7月6日(土)、7月7日(日)、7月13日(土)、7月14日(日)、7月15日(月・祝)、7月20日(土)、7月21日(日)、7月27日(土)、7月28日(日)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。