『ライフ・イズ・ビューティフル』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『ライフ・イズ・ビューティフル』
LA VITA E BELLA

語りつがれる“ものがたり” Ⅱ
2010.4.3(土)~5.29(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『ライフ・イズ・ビューティフル』LA VITA E BELLA

1997年/イタリア/カラー/117分/35mm/イタリア語​

監督・脚本・主演: ロベルト・ベニーニ
出演: ニコレッタ・ブラスキ、ジョルジオ・カンタリーニ、ホルスト・ブッフホルツ、ジュスティーノ・ドゥラーノ
撮影: トニーノ・デリ・コリ
音楽: ニコラ・ピオヴァーニ
美術: ダニーロ・ドナーティ
配給: 松竹株式会社/アスミック・エース エンタテインメント株式会社
フォトクレジット:© 1998 MIRAMAX FILM CORP.ALL RIGHTS RESERVED.
1939年のイタリア。第二次世界大戦の戦火の波が人々の生活に一歩ずつ近づいてくるなかで、グイドは書店を開店するために、叔父の住むトスカーナに引っ越してくる。そこで偶然出会った小学校教師のドーラに恋に落ち、持ち前のユーモア溢れるロマンチックなアプローチで、婚約者から彼女を奪い、めでたく結婚する。
やがて二人の間には一人息子のジョズエが生まれる。幸せな日々もつかの間、戦局が悪化し、グイドと叔父と5歳になったばかりのジョズエは強制収容所に送られてしまう。その事実を知り、ユダヤ人ではないのにもかかわらず、自らの意志で収容所行きの列車に乗り込むドーラ。ところが、列車から降りるやいなや、男女は別々の場所に連れられ、彼女は他の家族と引き裂かれてしまう。収容所では過酷な労働と狂気の殺戮が繰り広げられていた。そんな絶望の現実を幼い息子に悟られないよう、グイドはいくつものやさしい嘘を思いつく。
2010年のエルメスのテーマは「語りつがれる“ものがたり”」、第2作目は、ロベルト・ベニーニ監督・主演作品『ライフ・イズ・ビューティフル』を上映いたします。1999年のアカデミー賞受賞の記憶も色あせない現代の名作といえるでしょう。

二度と繰り返すべきではない戦争の記憶は、我々の語りつぐべき大きな「ものがたり」であることは間違いありません。戦争の悲劇や狂気、歴史の再解釈は数多くの映画となってきましたし、今なおどこかで続いている紛争やテロの惨劇は、情報となって我々のもとに届けられています。ところが、穏やかな日常の延長線上を横切るように届けられる戦争の現実は、日々の情報と一緒に並べられ、人々の記憶から簡単に消滅してしまうということはないでしょうか。

「これは素朴な物語」というフレーズではじまるこの作品のなかでは、決して素朴という言葉では形容できない歴史の事実が語られています。監督のロベルト・ベニーニの父親は強制収容所での生活を強いられたことがあったといいます。「語る」ということ、それは事実に対する当事者の記憶と体験、そして伝える相手への想いが絡み合った人間独自の能力です。父親の肉声を通じて語られた過酷な日々についての「ものがたり」はベニーニの記憶のなかに深く刻まれ、映画製作に脈々と流れる血液となっています。彼は父親の記憶を起点にしつつも、ホロコーストについての歴史的事実を調べ、また生存者に直接話を聞き、彼らの証言を取り入れるなどして、細かい部分まで当時の世界を描きますが、その一方で、あくまでもこの作品は「歴史的な記録ではなく、寓話の文体で描く」ことを心にとどめていました。

知るほどに暗澹たる歴史的事実。それでも「ライフ・イズ・ビューティフル」というタイトルを付し、悲劇を笑いに変えて語る姿勢の背後には、ベニーニの記憶に深く刻まれた言葉がありました。

皆さんは、なぜこんな悲しい、今世紀最大の恐怖を笑いの種にするのかと言われるでしょう。しかし、これは物ごとの悲劇性を和らげる物語、深刻さを軽減する映画なのです。なぜって、人生は美しいものなのですから。恐怖の中にも希望の芽があり、あらゆる禍いに抵抗する何かがあるのです。トロツキーを思い出しました。彼が耐え忍んだすべてのことを。彼がメキシコ・シティーのトーチカの中でスターリンの刺客を待っていたこと。庭にいる妻を見つめながら、「いろいろなことがあるけれど。人生は美しい。生きるに値するものだ」と書いたことなどを。
笑うということは、私たちを救います。物事の別の面、非現実的で楽しい面を見たり、その別の面を想像することができれば、小枝のように折られたり、ひきずられずにすむのです。長く長く感じられる夜をやり過ごすこともできます。
それにだれかを攻撃しなくても笑わせることはできます。
 

(ロベルト・ベニーニの言葉 「ベニーニ、映画を語る」、『ライフ・イズ・ビューティフル』、ロベルト・ベニーニ、ヴィンチェンツォ・チェラーミ著 吉岡芳子訳 角川文庫より)


人生に対する愛、それは決して平和な日々のなかだけでのみ輝くものではありません。ロシアの革命家、トロツキーが忍び寄る暗殺者の足音を聞きながらも、人生を賛美するように、残虐な戦争の日々のなかでこそ、家族がともに幸せでいようと望むこと。人生の恵みに全身で応え、そして幸せを望む限り、『人生は美しい』と言う権利があるのです。

悲劇を過度に神聖化するのではなく、笑いが起こる場所の断片として描くこと。ここにコメディアンとしてのベニーニの本質が注ぎ込まれています。映画監督のフェデリコ・フェリーニがベニーニのことを「今すぐ遊んでほしくて、狂ったようにはしゃぐコッカー・スパニエルのようだ・・・が、それは自らの中に閉じ込めた悲しさを大事に隠しておくためなのだ・・・。彼には偉大な道化としての純潔、カリスマ的権威が感じられる。白いクラウン(憂い顔の道化)とアウグスト(陽気でおっちょこちょいの道化)とが、彼の中で一体になっているのだ・・・」(『ライフ・イズ・ビューティフル』上映時パンフレット内 吉岡芳子著より)と評しているように。

父親から、ベニーニ本人、そして映画という形をもって我々に届けられる現代の寓話に、私たちは史実のなかで静かに光る、人間の底知れぬ希望を見るのです。
 

上映スケジュール Schedule

上映日
4月3日(土)、4月10日(土)、4月17日(土)、4月24日(土)、5月1日(土)、5月8日(土)、5月15日(土)、5月22日(土)、5月29日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。