『偉大なるムガル帝国』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『偉大なるムガル帝国』
Mughal-E-Azam

インド Ⅳ
2008.10.4(土)~12.20(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『偉大なるムガル帝国』Mughal-E-Azam

1960年(2004年デジタル復元+着色)/インド/185分/35mm/ウルドゥ語​

監督:K・アースィフ
脚本:K・アースィフ、アマン
撮影:R・D・マートゥル
音楽:ノウシャード
編集:ダラムヴィール
出演:プリトヴィーラージ・カプール、ディリープ・クマール、マドゥバーラー、ドゥルガー・コーテー、ニガール・スルターナー
フォトクレジット:© Sterling Investment Corporation Pvt. Ltd.
インド最大の王朝、ムガル帝国。その全盛期を統治したアクバル大帝にはたった一つ、望んでも得られないものがあった――息子である。
待望の後継者として生を受けた息子のサリーム王子は、父の計らいにより、しばらくの間、豪奢な宮廷から離れて戦場の第一線で鍛え上げられた。精悍な青年に成長したサリーム王子は、その帰りを待ち焦がれていた母に迎えられ、戦場から宮廷へと戻るが、両親との再会もつかの間、すばらしい踊り子でもある召使の一人、アナールカリーとの激しい恋に落ちる。最初はその類まれなる美しさに感銘を受けていたアクバル大帝だが、身分違いの二人の恋愛に気づくと怒りをあらわにし、アナールカリーを捕らえ、二人を引き裂こうとする。父と息子の軋轢は軍隊を巻き込んだ激しい戦争にまで至るが、それでも不和は、平行線のまま。大帝国を率いる指導者、そして息子を愛する父であるという、ふたつの現実の間でもがくアクバル大帝は、獄中のアナールカリーに身を裂くような悲しい決断を迫る。
 
『偉大なるムガル帝国』
人々の心に残るインド最高の歴史劇映画
松岡 環

インドの歴史劇映画は、1960年代まではかなりの本数が作られていた。中でも多かったのが、ムガル帝国時代を舞台にした作品である。1526年にバーブルが打ち立て、途中15年の中断を挟んで1858年まで続いたムガル帝国は、本作のアクバル大帝のほか、タージ・マハルを建造したシャー・ジャハーン帝、アクバル時代の音楽家ターン・セーン等が主人公となった映画で人々に親しまれている。
特にアクバルの長子サリーム(後のジャハーンギール帝)とアナールカリーの恋物語は、サイレント時代すでに映画化されており、「ザクロの蕾」を意味する名前「アナールカリー」を題名にした映画だけでも数本が作られている。そんな中、歴史大作の決定版として繰り返し上映されてきたのが本作である。
本作は9年の歳月をかけて完成した、と言われているが、巨額の費用で再現されたセットや衣裳はもちろん、かつて舞台俳優であったアクバル役のプリトヴィーラージ・カプールの独特なセリフ回しなど、他作品には見られない重厚さに溢れている。しかしながら、そこで描かれるサリームとアナールカリーの愛は瑞々しく、かつ大胆で、人々の胸を打つ。ノウシャードの美しい曲の力も加わり、こうして本作は古典的名作となったのである。
当初、有名な歌「愛すれば何を怖れよう」の巻と最後の巻のみカラー、というパートカラーのモノクロ作品として完成した本作は、2004年に全編がデジタル彩色されて再上映され、話題を呼んだ。その後2008年には、アクバルとヒンドゥー教徒の妻ジョーダーとの愛を描く『ジョーダーとアクバル』もヒットしたが、そこにも本作の影響が見て取れる。インド歴史劇映画の最高峰と言える作品である。
 

作品について About Film

インド伝説にもとづくこの完璧なメロドラマは、インド映画史の至宝のひとつでもある。
「偉大なるムガル帝国」の撮影は1944年に始まり、第二次世界大戦により中断された後、1951年に再開された。ムガル帝国の大帝アクバルは、息子サリーム王子と(女優マドゥバーラー扮する)宮廷の踊り子アナールカリーとの結婚に反対している。サリーム王子はある夜、宮殿で催された宴でこの美しい踊り子を見初め、激しい恋に落ちていたのだ。アナールカリーの踊りにすっかり魅了された王子は、身分の不釣合いな結婚を許さない父に戦いを挑むまでになる。いくつかの挿話をへて、父の有無を言わさぬ姿勢に反旗を翻したサリーム王子は、アクバル大帝を倒すべく起兵する。大帝はラクダ二千頭、馬四千騎、兵士八千人と多くの象を動員した壮大な戦いで息子を捕らえるが、その命は助ける。敗北し宮廷に連行された王子は、アナールカリーとの愛の誓いを違えることを拒む。だがこのとき、アナールカリーはすでに大帝に捕らえられ、投獄されていたのだった。
その後、さらに陰惨な予期せぬ出来事が相次ぎ、宮殿の衛兵たちは王子を死んだものと思い込み、置き去りにする。一方、大帝は温情的措置により、生涯追放の身となることを条件に息子の恋人の命を助けることにする……。
すでにお察しのとおり、重要なのは、この、ごくありきたりな物語ではなく、伝説と化した本作品の製作経緯である。映画は当初白黒で撮影された。だが1957年にテクニカラーがインドに到来したとき、監督(K. アースィフ)はまず歌一曲分をカラーで撮影し、その後1959年に、さらに三巻分をカラーで撮影することにした。
出来栄えに魅了された監督は、この手法で全篇を撮り直すことを望んだが、資金を調達できず、断念を余儀なくされた。
その後、さまざまな試みのすえ、映画は2004年、インド美術アカデミーの専門家らの芸術・科学監修のもとにカラー着色された。これにはインド映画史上最大規模のポストプロダクション費用が注がれた。なぜなら「偉大なるムガル帝国」の色彩は単なる装飾にとどまらず、映画に夢幻の様相を与えているからである。カメラワークの硬さと緩慢なストーリー展開が、絢爛豪華なセット、美しい歌や音楽、女優たちが身につけた優雅できらびやかな宝石によって相殺されている。ゆえに、私たちはこの残酷な伝説の、迷路のように曲がりくねった筋立てを夢中になって辿るうちに、強い幻覚状態に陥る。そして、この幻覚自体が映画の原動力と化す……。ひとりの高級娼婦の踊りが、宝石のようにはめ込まれた鏡の断片に無限に映し出される、魔法のような瞬間が二度訪れるのは偶然ではない。「偉大なるムガル帝国」の語るストーリーと情緒は、あくまでもゆっくりと展開する。あたかも静止した眩暈(めまい)のように。

パトリック・バンサール(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
10月4日(土)、10月11日(土)、10月18日(土)、10月25日(土)、11月1日(土)、11月8日(土)、11月15日(土)、11月22日(土)、11月29日(土)、12月6日(土)、12月13日(土)、12月20日(土)、12月27日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。