『音楽サロン』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『音楽サロン』
Jalsaghar

インド II
2008.4.19(土)~7.5(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『音楽サロン』Jalsaghar

1958年/インド/モノクロ/99分/35mm/ベンガル語​

監督・脚本:サタジット・レイ
原作:タラションコル・ボンドパッダエ
撮影:シュブロト・ミットロ
美術:バンシ・チャンドラグプタ
音楽:ヴィラーヤト・カーン
出演:チョビ・ビッシャス、ポドマ・デビ、ベーガム・アクタル、ゴンガポド・ボシュ、ローシャン・クマーリー
フォトクレジット:© Films Sans Frontières
時は1920年代、時代の変化の中で、旧地主階級(ザミンダール)のビッションボルは所有していた広大な土地もほとんど失い、没落のただ中にいた。今や彼の唯一のよりどころは家族と、芸術を愛でること。音楽のパトロンと自負する彼にとっては、新興富裕層のモヒムなど取るに足らぬ存在であった。モヒムの経済力に物言わせた祝い事に招待されても、かたくなに断るだけ。それどころか、自らも音楽会を開いて対抗するのだった。ところが音楽会の最中、不穏な嵐が起こり、一家に悲劇がもたらされる。

家族を失ったビッションボルは芸術に対する愛も失い、抜け殻のような4年間を過ごす。ある日、自邸に「音楽サロン」を造ったモヒムが彼を招待しようとやってくる。しかし、モヒムの慇懃無礼な態度に、彼の心に再び情熱が芽生える。

音楽サロンの扉を開けろ、シャンデリアに火をともせ、酒を用意しろ―ふたたび音楽会を開くのだ!
 

作品について About Film

映画、『音楽サロン』はインド映画芸術の代表作のひとつとして、プレスの絶賛を浴びた。あらすじは数行にまとまる。主人公はとある領地を支配する、無口で不思議な魅力をたたえた初老の男。彼の富が減っていくにつれ、死の影が知らず知らずのうちに忍び寄り、彼の宮殿の部屋や廊下に巣食うようになる。映画の三分の二が過ぎたころ、彼の溺愛する妻と若い息子が旅行中の事故で死んでしまう。それ以来、彼は憂いと孤独に浸り心を閉ざし、その悲しみは次第に無感動、無関心へと変わっていく。
だが、ある日、礼儀をわきまえない成金の隣人が、彼の壮麗な邸宅を買い取ろうとするのに対抗して、彼は手許に残った財産をすべて投げ打ち、最後のコンサートで客人をもてなそうと決心する。一種の妄想に駆られ、己れの伝説的な音楽サロンの扉を今一度だけ、開けるのである。クリスタルのシャンデリアとろうそくの炎に照らされた鏡がまばゆく輝き、部屋を幽玄の光で満たす。はてしない夢想に身をゆだねた観客の前で楽士たちがラーガを奏で、荘重な美しさをたたえたひとりの踊り子が巧妙な身振りで、時の歩みを、忍び寄る主人公の死を、一歩一歩、告げているかのようである……。この魔法の夜からほどなく、はてしなく広がる大海原を臨みながら愛馬を駆って最後の疾走をするとき、死が勝ち誇り、彼を連れ去る。
無駄を削ぎ落とした見事なフレーミング、計算されたカメラの遅い動き、いずれも素晴らしい俳優たちの荘厳な演技を通して、映画はひとつの消えゆく世界の最後の炎を鋭く考察する。消えゆく世界、それは領地と大邸宅を所有するインドのザミンダール(大地主)階級。彼らの権力と富は風前の灯である。
まさしく空想と夢の世界の貯蔵庫である音楽サロンが、まもなく永遠にその扉を閉ざそうとしているそのとき、ひとつの社会全体が反転し、不確実で不吉な予感に満ちた未来の淵に落ちていこうとしている。そこでは、美はいやおうなしに禁じられるであろう。この映画で強く胸を打つのは、物語のなかでは次第に希薄化していく生命(いのち)が、同じ動きでもフィルムの上では思いもよらぬほど鮮やかに震え、輝いてみえるところである。
美意識と道徳の証言である『音楽サロン』は、ほぼ同時代のまったく別世界、すなわちイタリア社会の風俗を描いたアントニオーニの映画と同じように、きたるべき喪失の歌でもある。
『音楽サロン』の調べはわたしたちの胸にいつまでも響き続ける。

パトリック・バンサール(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
4月19日(土)、4月26日(土)、5月3日(土)、5月10日(土)、5月17日(土)、5月24日(土)、5月31日(土)、6月7日(土)、6月14日(土)、6月21日(土)、6月28日(土)、7月5日(土)

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。