『カプリス』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『カプリス』
Caprices

ダンスⅣ
2007.7.14(土)~9.1(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『カプリス』Caprices

『マース・カニングハム』Merce Cunningham
1964年/フランス/10分/モノクロ/35mm


監督:エチエンヌ・ベッカー、ジャクリーヌ・ライナル、パトリス・ワイヤー
出演:マース・カニングハム、ロバート・ラウシェンバーグ、ヴィオラ・ファーバー、ジョン・ケージ

彼の名を引用することなしに、舞台上で繰り広げられた前衛的な芸術運動は語れないといってよい。モダンダンスを代表するマーサ・グラハム舞踊団の主役ダンサーとして活躍後、1942年以降、音楽家、ジョン・ケージと組み、多くの作品を生み出してきた。53年にはマース・カニングハム・ダンス・カンパニーを設立、現在もなお精力的に活動を続けている。
また、造形作家とのコラボレーションも実験的に行っており、ロバート・ラウシェンバーグは本作品の美術・衣装・照明を担当している。
「チャンス・オペレーションズ(偶然性)」という概念をダンスに取り入れた彼は、いわゆるポストモダンダンスと呼ばれる新しい領域を切り開いた。

「舞台上で踊るということは、非常に特殊な行動である。いつでも自分のベストな状態ではなく、一番人間らしい状態でいなくてはならない。」

『アンディ・ウォーホルのEPI』Andy Warhol’s Exploding Plastic Inevitable
1967年/アメリカ/12分/カラー/16mm


監督・編集:ロナルド・ナメス
出演:ニコ&ヴェルヴェット・アンダーグラウンド

アンディ・ウォーホルは1966年4月に、イーストビレッジはセントマークスプレイスにあるポーランド系コミュニティのクラブを借りる。こここそが、EPIと呼ばれたミクストメディアのハプニングが行われた「ドム(Dom)」である。ポスターの見出しには、こうあった。

Live - Andy Warhol – Live – The Velvet Underground – Live dancing – Films – Party event now.

ウォーホルの頭脳そのものが現れていたといえるEPIは、フィルモアやエレクトリック・サーカスに先駆けてユニークな存在のディスコであった。また、それを撮影した本作品は、監督のロナルド・ナメスによって単なるイベント映像を超えたものになったといえる。それはウォーホルのライブと同様、ナメスの映像も体験するものであり、概念的なのものではないことによる。まさに、ポップライフの精神がナメスの幻惑的で動的なこの傑作にみごとに表されている。

『カポエィラ ディアスポラのダンス』Capoeira -Dance of the Diaspora-
1994年/イギリス/4分/モノクロ/16mm


監督:トーマス・ロヴェル・バロー

ロンドンの若手監督による、この実験的な卒業制作映画は、カポエィラのさまざまな要素を提示している:ビリンバウ、パーカッション、ポリフォニー歌唱、格闘ダンサーの身振り……。
カポエィラはダンスであると同時に格闘技であり、ブラジルのバイーア地方に連れてこられたアフリカ人奴隷たちによって始められた。同地方では今でも盛んに行われ、大学などでも継承されている。世界各地に四散したカポエリスタたちは、この典型的なブラジル式表現を世界中に伝え、見応えのある競技へと発展させた。シネマテーク・ドゥ・ラ・ダンスが見出した若手監督バローは、白黒の明暗を絶妙に使い分ける技量と抜群のフレーミングのセンスを備えており、モンタージュを駆使してこの格闘技の肉体の力学をあますところなく再現した。

『キャプティヴ(スゴンムーヴモン』Captives (2nd mouvement)
1999年/フランス/12分/カラー/ヴィデオ


監督・振付:N+N Corsino (ニコル・コルシノ、ノルベール・コルシノ)
音楽:ジャック・ディエネ
3Dセット/デジタル編集:パトニック・ザノリ
アニメーション・エンジニア:クレア・ペゴリエ

ニコルとノルベール・コルシノはステージ上のダンスではなく、スクリーンあるいはインスタレーションを通じて舞踏的なフィクションを作り出す。三人の女性ダンサーの動きはモーションキャプチャを通じて、クローンに移しかえられ、ヴィデオゲームのような3Dの世界に移植された。そこで物語を語るのは彼女たちの身体であり、ダンスである。その一連の動きは、我々が今フィクションの世界にいることを強く意識させるのか、それとも仮想の中を漂うことでより現実へと還元させるのか……。 非現実感、不確かさという“レアリスム”は、実写映画で使われる古典的テクニック(ロングショット、俯瞰、あおりなど)を使用することで、かえって強調されている。『キャプティブ』において、身体性は、我々を目撃者としてのみ成立させ、視覚を通じた知覚(認識)の生理学を経験するゲームとして機能する。

『ワン・フラット・シング・リプロデュースド』One Flat Thing, Reproduced
2006年/フランス/26分/カラー/ヴィデオ


監督:ティエリー・ドゥ・メイ
音楽:トム・ウィレム
振付:ウィリアム・フォーサイス
提供:ニューセレクト株式会社
フォトクレジット:© 2006 MK2 TV – Arte France – The Forsythe Company – Forsythe Foundation – Arcadi

『ワン・フラット・シング・リプロデュースド』は、ダンスの舞台を映像という別の方法で“再演”(リプロデュースド)したものである。
これは、19世紀を代表する工業建築であるボッケンハイマーの倉庫 にて、スーパー16mmカメラでアクション映画を撮るように撮影された。構成は本映像用に特別に考案されたため、舞台での上演形態とは異なっている。
監督であるティエリー・ドゥ・メイは、映像という手段でダンスを転写すべく、特別なカメラワークと編集で今までにない革新的な構造を綿密に作り上げた。とりわけ、ダンサー間でやりとりされる視覚的合図が、映像言語に変容していく様は、フォーサイス作品に顕著な音楽や技術面での繊細かつ緻密な特性が巧みに投影されている。そこで見えてくるのは動きのリズムや韻、形の美学やジェスチャーにおける意図、あるいはある種のヒューマニティまでもが含まれている。
この“再演”は、『ワン・フラット・シング』という舞台作品が、全く別のメディアで、かつ劇場ではない場所でも、感知可能なものであることを示唆するだけでなく、ダンスの「記録」ではなくダンスの「再現」として重要な意味を持つに違いない。
 

作品について About Film

『カプリス』は、型破りな舞踊や振付表現を、映画とともに辿ってゆく曲がりくねったプロムナードである。60年代アメリカを象徴するようなポップの精神からストイックにそぎ落とされたコンテンポラリーダンスまで。いうなれば、映像という形式で歴史や時間を横断してゆく、身体表現のパノラマであるといえるだろう。

『マース・カニングハム』の“表現”を拒絶し、純粋な動きのみにフォーカスをあてた実験的手法、そして『カポエィラ ディアスポラのダンス』に見られるフォルムの抽象化と動きと光の強烈な乱入。これらの作品を通じて、我々は、ダンスとは動きの分解であり、空間へ動きを再配置するドラマであることを目のあたりにする。そうした観点からとりわけ興味深いのは『キャプティヴ(スゴンムーヴモン)』である。この作品は、モーションキャプチャを通じて、実際のダンサーの動きをデジタル映像として再現している。一度分解された動作は再構築可能となり、型どおりの単純な自発性を装うことをやめ、(従来のパフォーマンスにつきものの)現実の偶発性から解放された新しいジャンルの動きが生まれるのである。

また、動きそのものを抽出してみると、本質、あるいは純粋な色の発現となることもある。たとえば、『アンディ・ウォーホルのEPI』における「ポップ」のヒエログリフ(象形文字)、解読不能な揺れ動くフォルムのように。

ベルギーの映画監督ティエリー・ドゥ・メイとアメリカ人の振付家ウィリアム・フォーサイスのコラボレーションはノルベール&ニコル・コルシノの仕事の延長線上にある。フォーサイスは、テーブルを介することで、ダンサーの身体を空間の中にまんべんなく行きわたらせる。『ワン・フラット・シング・リプロデュースド』で彼は、空間を構造化し、ダンスをフレーミングすることにより、ダンスの根源やその誕生に立ち戻るが、その上でもなお、ダンスを分解して手なずけたいという欲望を明らかにする。

カメラは好奇心の赴くまま奔放に動きながらも、振付表現を確実に捕らえ、「頑固な目」でその力学を明かす。そのとき、カメラはダンスの表現における大いなる触媒として作用している。それが『カプリス』が辿る道筋だ。一見さまざまな要素が混在しているように見えるこのプログラムが映像を通じて語るのは、実は動きそのものであり、欲求そのものである。つまり、ダンスを記録し、しぐさを保存し、骨組みを抽出したいという欲求なのだ。

ロマン・ボジャール
 

上映スケジュール Schedule

上映日
2007年7月14日(土)~9月1日(土) 毎週土曜日

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。