『フェミニテ』| エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Studio

『フェミニテ』
Féminités

ダンスⅠ
2007.1.27(土)~3.17(土)

ル・ステュディオは銀座メゾンエルメス10階にある40席のプライベートシネマです。

 

『フェミニテ』Féminités

1. マーサ・グラハム 映画による習作「哀歌」からの抜粋
Martha Graham Taken from 《A Motion Picture Study of Martha Graham from her dance Lamentation》
1941年/アメリカ/8分/35ミリ/カラー

監督:不詳
出演:マーサ・グラハム
音楽編集・伴奏:ルイス・ホースト

マーサ・グラハムは医師の父(ルシンダ・チャイルズの父も同様)から「動きは決して嘘をつかない」と言い聞かされて育ち、ごく若いころから振付家の仕事とは戦いであることを学んだ。戦前、ヒットラーからのベルリン・オリンピックへの招待を拒み、生涯自らの芸術的、知的選択に忠実にダンスを実践した。この動きに関する思想があったからこそ、彼女は未知の舞踊空間を次々とデザインし、これを飛び越えていくことができたのである。
彼女は自ら時間をかけて入念に改良を重ねたテクニックと方法に強いこだわりを持っていた。女性の肉体は解放され、無意識と自然が放つ活力と融和する。この絆ははっきりと肯定され、詩と神話に育まれた彼女の振付スタイルと情熱の表象を作り出す。ルース・セント・デニスのダンス、そしてとりわけマリー・ヴィグマンの表現主義舞踊から霊感を受け1931年、ニューヨークで創作されたソロ「Lamentation哀歌」では、布の中でもがく彼女の座った肉体に、一枚の布によって拘束された動きと緊張が走る。抽象的かつ肉感的で、禁忌と侵犯に満ちたこのダンスの暴力性は、舞踏からピナ・バウシュに至るまで現代の振付に霊感を与えてやまない。
ここできわめて大切なことをひとつ指摘しよう:マーサ・グラハムの肉体の緊張と動きは、へそと性器の間のゾーンから生じ排出されたものである。ここを東洋人は「気」の生じるところ(丹田)ととらえる。これこそが彼女の基本テクニックのひとつである。伝説的名ダンサー、ヨシコのような日本人パフォーマーが彼女のカンパニーの一員だった理由もおそらくそこにあるのだろう。

マーサ・グラハムの作品は電撃的な闇と目も眩むような真昼の光が交互に横切る、この激動空間で展開する。そこでダンスは聖なる儀式、まるで登山のように様々な外観をジグザグに横断するスローで危険な旅となる。


2. マリー・ヴィグマン 「4つのソロ」より抜粋 2つのソロ作品「夏の踊り」「魔女の踊り」
Mary Wigman Tanzt Taken from 《Quatres solos》Danse de l’Eté, La Danse de la Sorcièr
1929年/ドイツ/5分/35ミリ/モノクロ

監督:不詳
振付・出演:マリー・ヴィグマン
音楽:ハンス・ハスティング(ピアノ) メタ・メッツ(打楽器)

マリー・ヴィグマン(1886-1973)はドイツダンス界の偉大なレディである。エミール・ジャック・ダルクローズ(元来は音楽家で、ブルックナーとドリーブに師事し、ダンサーに全身を使ってリズムをとらせる「リトミック体操」を考案)に師事し、ルドルフ・フォン・ラバン(舞踊体操、および「ラバノーテーション」と呼ばれる舞踊記譜法の考案者)の助手を務め、イサドラ・ダンカンの訪独後、20世紀初頭のアカデミズムに抵抗する絵画、演劇の潮流に並行して、表現主義の中核で自らの進む道を次第に固めていく。
彼女はパントマイムとマスゲームの双方から汲み取った要素を「神秘的感情と悲劇的かつ悪魔的崇高さの混交」(アンドレ&ウラディミール・ホフマン著LE BALLETより引用)した死の舞踏の雰囲気に仕立て上げた。ドレスデンに学校を創設、たびたび渡米し、ベニントン・カレッジのサマー・スクールで教鞭をとり、ここでルース・サン・デニ、マーサ・グラハムと出会うことになった。ハンヤ・ホルムをはじめ、彼女の弟子たちの多くが、米国で彼女の仕事を引き継いでいる。
1936年、ベルリン・オリンピックで披露された作品のひとつ「死の舞踏」が、ドイツ、ヒットラー政権に反軍国主義的の嫌疑をかけられ冷遇される。しかし、ドイツに留まり、戦後創作を再開、以後死ぬまで精力的に活動を続けた。
4つのソロは、マリー・ヴィグマンの独特の陰鬱さを湛えた「魔女の踊り」(1914年作、彼女は仮面をつけている)と、陽気で叙情的な側面を打ち出した「移り変わる風景」シリーズからの3作品、「天使の歌」、「田園詩」、「夏の踊り」から成る。


3. シルヴィ・ギエム
Guillem
2000年/フランス/52分/ベータSP/カラー

監督:フランソワーズ・ア・ヴァン
制作:アルテ・フランス、ミスノ・プロダクション
協力:TDKコア株式会社

「(…)ダンスのない生活、それも当然あるはずです。なにか違うものが必ずみつかるはずですが、私にはわかりません。今は無理です。私が今、していることは途方もない悦びを私にもたらしてくれます。それが私の時間のほとんどを占めています。だから、もし私からその悦びと時間の両方を取り上げてしまったら、大したものは残らないでしょう。でも女としての人生からは、ダンサーとしての人生からと同じくらい多くのものが得られます。女であることはダンサーとしての私に多くのことを教えてくれるし、ダンサーであることは女としての私をとても豊かにしてくれるのです。
エルヴェ・デュアメルによるシルヴィ・ギエムのインタビュー(1998年) 


4. 大野一雄
KAZUO OHNO
1995年/日本・スイス/15分/ 35ミリ/カラー

監督:ダニエル・シュミット
出演:大野一雄、大野チエ
撮影:レナート・ベルタ
製作:ユーロスペース、T&Cフィルム
企画:愛知芸術文化センター

男性と女性が初めから分かれていたかというと、私は、そうではなくて、元は男性も女性も一つだった、という思いがあるんですよ。だから、男性の中には女性がすんでいるし、女性の中には男性がすんでいるという関係は、昔からあるのではないかと思うんです。そういうものを両性具有という言葉を使いますけど、男性だけが、女性だけが、というのではなくて、互いの性の中に異なる性がすんでいると。お互いに大事にしあって、じゃあどういうふうに大事にしあうか、ということになると、限りなく、限りなくですよ、男性が女性を、女性が男性を大事にする。昔は、男と女の差別がなかった時代があったかもしれませんし。男性は女性の恩恵を受けとめるし、女性は男性の恩恵を受け止めている。男性と女性、どちらが上だとか下だとかということはないわけで、男性の持てるものを女性がガチッと受けとめる、女性の持てるものをビシッと受けとめる、愛、愛そのものといいますかね。私は、それは日常生活の中においても大切なものであると。互いに愛し合って、両性具有というか、限りを尽くして愛し合うんですよ。
AAC-Aichi Arts Center 12 (発刊1995.4 愛知芸術センター) より引用
 

作品について About Film

『シルヴィ・ギエム』
フェミニテあるいは「モダンダンス」の四大人物

彼女は現代で最も謎めいた女性ダンサーの一人であろう。
私は、彼女のおかげでクラシック・バレエが好きになった。
それはオペラ座ガルニエでのヌレエフ版「白鳥の湖」だった。
カーテンコールでルドルフは彼女を伴ってステージにあらわれて挨拶をした。そのとき彼女はまだエトワール・ダンサーではなかった。しかし、いつだって観客は正しい。彼女にいつ果てるともしれない喝采を贈ったから。彼女の名はすでに皆の話題にのぼっていた。彼女の評判も然り ─ いったんこうと決めたら、なにものにも動じない反抗的なプリンセス。彼女と知遇を得たとき、私はその迎合、妥協を拒む姿勢に納得し、感服した。クラシックダンスにお決まりの窮屈な規範をはみ出してしまう、彼女の特異な側面も気に入った。彼女は今もなお、ステージで忘我の境地へと駆り立てる、あのすばらしい夢にとり憑かれている…。

フランソワーズ・ア・ヴァンの映画は名人芸の裏側、反転、分裂したイメージを見せつける。シルヴィ・ギエムはこの映画に自ら進んで参加した。カメラは日常のダンスの仕事、感嘆すべきギレーヌ・テスマールとの稽古、あらわな肉体、汗、期待、疲労などに迫ってゆく。言葉はほとんどない。あるのは視線、ステップを踏む音、呼吸、通路、楽屋、鏡…。
ダンスの真実、時としてその恩恵は、この裸体と沈黙を代償にしなければ得られない。

1929年に無名の映画作家によって撮影された2つのソロで、ドイツ表現主義の代表的振付家マリー・ヴィクマンはわれわれに苦行を見せつける。ミニマルでほとんど不気味ともいえる、稀にみる映像である。月光を浴びたマリー・ヴィグマンの肉体が、霊の出現さながらの力を湛えて闇から浮かび上がる。ソロ2作品のひとつ、「魔女のダンス」は後にシルヴィ・ギエムによって再演されることになる…。

大野一雄はマリー・ヴィクマンに師事した江口隆哉からダンスを学び、土方巽とともに1950年代、舞踏運動を創始した。その彼を世界的に有名にしたのは「ラ・アルヘンチーナ頌」(1977)、大野、75歳のときの作品である。
それより何年もたってから私が東京で大野に会ったとき、彼は胸に大事そうに抱えていた書類入れをそっと開いてみせた。そこにはラ・アルヘンチーナ頌の古い写真ばかりが入っており、それを彼は私に熱っぽく語ってくれた。
舞台上で大野は深遠な儀式を繰り広げながら、ラ・アルヘンチーナ頌に「なりつつ」あった。暮れなずむ横浜港の薄明かりの中で演じる天才的ソロ。監督はダニエル・シュミット。

未公開映像、それはアメリカン・モダンダンスの始祖、マーサ・グラハムを写したもの。1931年に創作された伝説的振付「哀歌」はマリー・ヴィグマンのダンスからもインスピレーションを受けている。動きの束縛と暴力、青白い肌と唇の赤が日本の能面を思わせる美しい顔…。

パトリック・バンサール(ル・ステュディオ プログラム・ディレクター)
 

上映スケジュール Schedule

上映日
2007年1月27日(土)~3月17日(土) 毎週土曜日

上映時間
11:00/14:00/17:00
 

会場 Access

銀座メゾンエルメス  ル・ステュディオ
(東京都中央区銀座5‐4‐1 10階 TEL: 03-3569-3300)
 

予約 Reservation

※このプログラムの上映は既に終了いたしております。