コンダンサシオン:アーティスト・イン・レジデンス展 ― エルメスのアトリエにて | エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Forum

コンダンサシオン:アーティスト・イン・レジデンス展 ― エルメスのアトリエにて
CONDENSATION: artists in residence in Hermès workshops

2014.3.20(木)~6.30(月)

展覧会概要

「コンダンサシオン」(Condensation*)展は、夢解釈と錬金術という二つの世界の出会いを想起する展覧会です。響きあう「形」と共鳴する「物語」――エルメス財団のアーティスト・イン・レジデンス・プログラムにて制作された作品たちは、「素材」の核心へ、そして多様な芸術的変化へと観る者を導きます。
2010年より、16人の若手アーティストたちは、エルメスのさまざまな工房(クリスタル、革、銀、シルク、靴)に滞在し、卓越した職人技の助けを借りながらそれぞれ独自の作品を制作しました。「技術と知識の共有」という原則に基づくこのプログラムは、制作という重大な課題を抱える若いアーティストたちにとって、エルメスのもつ最高の素材や道具、製法などを活用できる機会となりました。
工房という、どこか秘密めいた、特別な時間の流れる世界。火の燃えたつ音、銀の触れ合う金属音、革を突き抜ける針の音、検分される革たちが擦れ合う音。都会の遠心力から逃れた場所で、アーティストたちの夢想が、錬金術の言葉と出会います。

レジデンス・プログラムに参加した16名の作家の作品を紹介する本展は、2013年パリのパレ・ド・トーキョーでの開催に続くものです。それぞれの作品の「形」と「物語」によって紡がれる、白昼夢のような「コンダンサシオン」、その展覧会という場において、観る者は若きアーティストたちのヴィジョン、レジデンスでの特異な体験を共有することになるでしょう。

 

アーティスト・イン・レジデンス

 
本プログラムは、フランス国内のエルメスの工房と密接に協力しながら実施されています。レジデンス・アーティストの選考は「メンター制度」をとっており、経験豊かで国際的に活躍する4人のアーティストによる推薦によって選ばれます。2010~2013年のレジデンスには、リチャード・ディーコン、スザンナ・フリッチャー、ジュゼッペ・ペノーネ、エマニュエル・ソーニエを「メンター」として迎えました。4人は高い指導能力、素材の取り扱いの経験、そして何よりも高度な芸術性を備えたベテランの作家であり、4年に渡って、毎年新しいアーティストを推薦する役目を引き受けました。

このプログラムは、意欲のある若手アーティストたちに、エルメスの工房が有する高い技術や素材を使って、作品を制作する機会を与えることを目的としています。2010~2013年の4年間を通じて、毎年4人のアーティストがフランスにあるエルメスの工房に滞在しました。なお、工房における円滑なコミュニケーションの必要性から、フランス語を話す若いアーティストが対象となっています。

ドキュメンタリー:エルメス財団のアーティスト・イン・レジデンス
(2014年/フランス/25分/仏語音声/日本語字幕)

アーティストプロフィール Artist Profile

エリザベス・S・クラーク Elisabeth S. Clark (サヤ皮革工房)
ブノワ・ピエロン Benoît Piéron (アトリエAS)
オリヴィエ・セヴェール Olivier Sévère (サンルイ・クリスタル)
シモン・ブドヴァン Simon Boudvin (アルデンヌ皮革工房)

マリン・クラス Marine Class (ピュイフォルカ)
セバスチャン・グシュウィンド Sébastien Gschwind (サン=タントワーヌ皮革工房)
小平篤乃生 Atsunobu Kohira (サンルイ・クリスタル)
エミリー・ピトワゼ Émilie Pitoiset (ピエール=ベニト皮革工房)

オリヴァー・ビアー Oliver Beer (サンルイ・クリスタル)
オ・ユギョン Oh You Kyeong (ピュイフォルカ)
フェリックス・パンキエ Félix Pinquier (ペレイ皮革工房)
アンドレス・ラミレス Andrés Ramirez (アトリエAS)

ガブリエル・チアリ Gabriele Chiari (アトリエAS)
マルコス・アビラ・フォレロ Marcos Avila Forero (ノントロン皮革工房)
マリー=アンヌ・フランクヴィル Marie-Anne Franqueville (サンルイ・クリスタル)
アンヌ=シャルロット・イヴェール Anne-Charlotte Yver (ジョン・ロブ)

制作過程

参加アーティストは同じ作品を二つ制作します。一つはアーティストが所有、もう一つは財団の所有とし、工房や展覧会にて展示されます。先入観に左右されず、「白紙」の状態から作品を作ってほしいとの願いから、アーティストにはまず、2~3か月の滞在が始まる前に、工房をじっくりと観察する時間を設けています。レジデンスの期間中、財団はアーティストに、奨学金の給付と制作の支援を行います。工房側も積極的に協力をし、アーティストを技術面、物質面において支えるだけでなく、彼らの日常生活にも寄り添います。エルメス財団は、この活動を「カイエ・ド・レジデンス」などの出版物や展覧会などを通じて広報し、アーティストを多くの人に知ってもらうようにも努めています。

アーティストと職人は、この出会いから新たな対話を生み出し、お互いに切磋琢磨しています。それぞれが自分たちの慣習を変えたり、想像力を豊かにしたりすることで、様々な変化や成長が導かれてゆくのです。この出会いは、プロフェッショナルとして、またひとりの人間として、相互にとって必ず実りある経験となるでしょう。それこそが、エルメス財団が大切にしている価値観なのです。

 

エルメス財団

エルメス財団(FONDATION D’ENTREPRISE HERMÈS)は、人々や組織が技術を学び、習得し、伝承することをサポートし、その技術と創造性によって現代社会の発展に寄与するとともに、新たな未来を作り出すことを目的としています。職人の持つ熟練の技と現代美術の創造性という赤い糸に導かれ、財団は「技術と創造」と「技術と伝承」、この二つが出会い、相互に発展し合う世界への貢献を目指しています。
造形美術の分野では各国での展覧会や「アーティスト・イン・レジデンス」、舞台芸術の分野においては「ニュー・セッティングス」、デザイン分野では「エミール・エルメス賞」、生物多様性の分野では新プロジェクトの公募など、財団は独自のプログラムを展開し、また、これらの分野で活躍する世界中の団体を支援しています。
エルメス財団の多岐にわたる活動は、すべて共通の理念『我々の行いが、我々を創造する』を原点としています。

2010年の夏より、エルメスの工房で始まった「アーティスト・イン・レジデンス」は、現代美術と優れた職人技を連携させたいと願うエルメス財団によって運営されています。これまでもエルメス財団はフォーラムや世界各地にあるギャラリーでの展覧会をはじめ、舞台芸術と造形美術の融合をめざした独自のプログラムなど、広範囲にわたる活動、作品制作への支援を通じ、アーティストと密接に関わってきました。

この「アーティスト・イン・レジデンス」において、エルメス財団は滞在制作へのサポートだけではなく、そこで生み出されたアート作品を広く紹介してゆくことでも、参加アーティストたちを応援しています。これまでの4年間で制作された16人による作品を、ガエル・シャルボーのキュレーションによって紹介するこの「コンダンサシオン」展も、その試みの一つです。

 

展覧会タブロイド(PDF版)

 

開館時間 Opening Hours

月~土曜11:00~20:00(最終入場19:30)
日曜 11:00~19:00(最終入場18:30)

基本情報 Information

会期
2014年3月20日(木)~6月30日(月)
休館日: エルメス銀座店の営業日に準ずる
入場料:無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5‐4‐1 8階 TEL: 03-3569-3300)
主催: エルメス財団
後援:  在日フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
キュレーター: ガエル・シャルボー
アーティスト: エリザベス・S・クラーク /ブノワ・ピエロン / オリヴィエ・セヴェール /
シモン・ブドヴァン / マリン・クラス / セバスチャン・グシュウィンド / 小平篤乃生 /
エミリー・ピトワゼ / オリヴァー・ビアー / オ・ユギョン / フェリックス・パンキエ /
アンドレス・ラミレス / ガブリエル・チアリ / マルコス・アビラ・フォレロ /
マリー=アンヌ・フランクヴィル / アンヌ=シャルロット・イヴェール

Condensation (→con-denser) 1.凝縮、圧縮、凝結;(凝縮した)水分、復水。►~de la vapeur d’eau en rosée 水蒸気の結露、noyau de~《物理》凝結核:大気中で水蒸気の凝結の中心となる微粒子。  2.(思想、表現などの)簡潔化、要約。  3.集中、結集。 4.《有機化学》(分子の)結合。 5.《生物学》縮約:個体発生で、系統発生上の複数段階が一つにまとめられること。 6.《精神分析》圧縮:いくつかの表象での諸要素が1つの表象の中に押し込められていること。[後期ラテン語 conden・sātiō, ōnis]    出典:小学館ロベール仏和大辞典

 

会場風景/キュレーターからのメッセージ

1. アーティストの紹介

2010年滞在アーティスト

エリザベス・S・クラーク Elisabeth S. Clark
1983年生まれ。パリ、およびロンドン在住。ゴールドスミス・カレッジ、ロンドン大学スレード美術学校を卒業。2011年、フランスのリヨン・ビエンナーレに出品。2012年にはドイツ、バートエムスのKünstlerhaus Schloss Balmoralにてレジデンス・プログラムに参加している。

ブノワ・ピエロン Benoît Piéron
1983年生まれ。2007年にパリ国立高等美術学校を卒業(造形芸術表現上級ディプロマ)、審査員であったリチャード・ディーコンから特別な祝辞を受ける。人類学、文学、芸術精神分析を学んだ後、ケベックで数年を過ごす。2011年には、カサ・デ・ヴェラスケス(マドリッド)で別のレジデンス・プログラムにも参加している。

オリヴィエ・セヴェール Olivier Sévère
1978年生まれ。パリ在住。パリ国立高等美術学校(エリック・ディエットマン、エマニュエル・ソーニエに師事)を卒業した後、リモージュの研究所CRAFTにて磁器の作品を制作。2010年にセーヴル陶芸都市にて展覧会を開催した。

シモン・ブドヴァン Simon Boudvin
1979年生まれ。パリ国立高等美術学校および国立建築学校を卒業。最近の展覧会には「Anastyloses et Reconversion」(レ・ゼグリーズ 現代美術センター、シェル、2011年)、「Soudain déjà」(ENSBA、パリ、2011年)、「Plus de croissance, Un Capitalisme ideal」(フェルム・デュ・ビュイソン、ノワジエル、2012年)などがある。2010年にはレ・ザトリエ・デ・ザルク(ロット県)のレジデンス・プログラムに参加している。

2011年滞在アーティスト

マリン・クラス Marine Class
1983年生まれ。ナント在住。2007年にパリ国立高等美術学校を卒業。2009年、サラ・ドムナックとともに「Biennail of Young Creators of Europe and the Mediterranean」(マケドニア、スコピエ)に選出される。2010年、L’ H du Siège(ギャラリー兼アトリエ、ヴァランシエンヌ)招聘アーティスト。

セバスチャン・グシュウィンド Sébastien Gschwind
1973年、フランス、オー=ラン県サン・ルイ生まれ。1999年、ナンシーのエコール・デ・ボザールを卒業。長くフランスとベルリンを行き来し、Happyfew Gallery(2005–2010年)を共同設立、経営。2010年からは彫刻制作に専念。主な展覧会に、「Places」(ギャルリー・エドゥアール・マネ、ジュヌヴィリエ、2011年)、第3回彫刻ビエンナーレ「Inventer des Mondes Singuliers」(イェール、2011年)など。

小平篤乃生 Atsunobu Kohira
1979年、広島県生まれ。2006年にパリ国立高等美術学校を卒業し、2010年にはフランス、トゥールコワンにあるル・フレノワ国立現代芸術スタジオを卒業。主な展覧会に、「Imaginez maintenant」(トゥールーズ、2010年)、「Panorama 12」(ル・フレノワ、トゥールコワン、2010年)、「Made in Choi」(アトリエ・ショワ、パリ、2011年)、「Drôle de Temps」(ギャルリー・ジュンヌ・クレアシオン、パリ、2011年)、などがある。主に彫刻家でありながら、CKINOCOといった写真プロジェクトにも取り組んでいる。

エミリー・ピトワゼ Émilie Pitoiset
1980年、フランス、ノワジー=ル=グラン生まれ。パリ国立高等美術学校を卒業、現在はパリとボルドーを往復する生活を送る。近年の展覧会に、「Devon Loch」(ズーギャラリー、ナント、2011年)、「Soudain」「Déjà」(いずれもENSBA、パリ、2011年)、「Vous Arrivez trop trad」「CérémonieChelles」(いずれもレ・ゼグリーズ 現代美術センター、シェル、2012年)、「Les actions silencieuses」(フラック・シャンパーニュ=アルデンヌ、ランス、2013年)などがある。

2012年滞在アーティスト

オリヴァー・ビアー Olivier Beer
1985年、英国ケント生まれ。パリ在住。オックスフォード大学ラスキン・カレッジ卒業。2009年にサーチ・ギャラリーのNew Sensations賞を受賞。2011〜2012年にかけて、パレ・ド・トーキョーにアーティスト・イン・レジデンスとして滞在。近年の展覧会に、「The Resonance Project: Pay and Display」(イコン・ギャラリー、バーミンガム、2011年)、「Klang」(パレ・ド・トーキョー、パリ、2012年)、「第二回ベルヴィル・ビエンナーレ」(パリ、2012年)などがある。2013年にはニースのヴィラ・アルソンにアーティスト・イン・レジデンスとして滞在した。

オ・ユギョン Oh You Kyeong
1979年生まれ。ソウル在住。パリ国立高等美術学校卒業。近年の展覧会に、「Métamorphose」(韓国文化センター、パリ、2007年)、「Jeunes creation」(ヴィレット、パリ、2008年)、「Dream of Material」(OCI美術館、ソウル、2011年)、「From a Distance Keep a Distance」(Sungkok美術館、ソウル、2011年)、「Distances」(岡山アートセンター、岡山、2012年)、「Butterflies Out of Eden」(フェリーニ・ギャラリー、ベルリン、2013年)などがある。

フェリックス・パンキエ Félix Pinquier
1983年、パリ生まれ。ジャンティイ在住。2010年、パリ国立高等美術学校卒業。近年の展覧会に、「Le Vend d’après」(ENSBA、パリ、2011年)、「Environs = Surroundings」(レ・タヌリー、アミイー、2011年)、「Relâche」(ギャルリー・ラ・フェロヌリー、パリ、2012年)、「Panorama」(ブールジュ・ビエンナーレ、ブールジュ、2012年)がある。

アンドレス・ラミレス Andrés Ramirez
1981年、コロンビア、ボゴタ生まれ。パリ在住。2008年にパリ国立高等美術学校を卒業。1999年、リヨン国立高等舞踊学校の学位取得。2007年以降、エリーズ・ヴァンドヴァルと共同で作品を発表している。最近の展覧会としては、「Suddenly Last Summer」(ボーシュリー・サン・マルタン、2010年)、「Place!」(ギャルリー・エドゥアール・マネ、ジュヌヴィリエ、2011年)、「We Sacrfice our Future as we Sacrifice our Past」(第56回サロン・ド・モンルージュ、2011年)がある。

2013年滞在アーティスト

マルコス・アビラ・フォレロ Marcos Avila Forero
1983年、パリ生まれ。コロンビア国籍。2010年、パリ国立高等美術学校卒業。パリ、およびコロンビア在住。近年の展覧会として、「Le Vent d’après」(ENSBA、パリ、2011年)、「Jeune création」(パリ、2012年)、「Nuit Blanche」(パリ、2012年)、「Maku & Ruperto」(カサ・ラ・レダダ アート・センター、ボゴタ、2012年)、Andantes(ギャルリー・ドヒャン・リー、パリ、2013年)、Zuratoque(パレ・ド・トーキョー、パリ、2013年)がある。

ガブリエル・チアリ Gabriele Chiari
1978年、オーストリア、ハライン生まれ。2002年にパリ国立高等美術学校を卒業、パリ在住。近年の展覧会に、「L’art dans le chapelles」(シャペル・サン=ドレデノ、サン・ジェラン、2009年)、「Gabriele Chiari」(ギャルリー・ベルナール・ジョルダン、パリ、2011年)、「En regards」(Domaine de Kerguéhennec、ビニャン、2011年)、「Formes d’équilibre d’une masse fluide」(ギャルリーAL/MA、モンペリエ、2012年)、「Wasser/Spiele」(ガレリー・フレイ、ウィーン2012年)、「Jamais, toujours le même」(文化センター、ジャンティイ、2012年)などがある。

マリー=アンヌ・フランクヴィル Marie-Anne Franqueville
1981年、パリ生まれ。パリ在住。2009年、パリ国立高等美術学校卒業。最近の展覧会としては、「第53回現代美術サロン」(モンルージュ、2008年)、「Plus léger que l’art」(ニーム国際現代美術ビエンナーレ、2011年)、「Inquiétante étrangeté」(ギャルリー・リシャール・ダント、パリ、2012年)、「第8回Parcours d’Art Contemporain」(ラ・クレイェット、2012年)がある。

アンヌ=シャルロット・イヴェール Anne-Charlotte Yver
1987年、サン=マンデ生まれ。2011年、パリ国立高等美術学校卒業。パリ在住。近年の展覧会に、「Mécanismes parallèles」(ギャルリー・アン・シテュ / ファビエンヌ・ルクレール、パリ、2012年)、「Géographies nomades」(ENSBA、パリ、2012年)、「Mutations 13」(ギャルリー・デュ・クルース、パリ、2013年)がある。

2. メンターの紹介

チャード・ディーコン Richard Deacon
1949年、ウェールズ、バンガー生まれ。作品は抽象的で、自然や人間の身体という、繰り返し登場するテーマが暗示的に表現されている。自らの仕事の仕方を熟練工や職人のそれに例えるディーコンは、自らを彫刻家というより「製造者」と形容する。

2010 ブノワ・ピエロン (アトリエAS )
2011 マリン・クラス (ピュイフォルカ)
2012 フェリックス・パンキエ (ベレイ皮革工房)
2013 マリー=アンヌ・フランクヴィル (サンルイ・クリスタル)

スザンナ・フリッチャー Susanna Fritscher
1960年、オーストリア、ウィーン生まれ。モントルイユ在住。ミニマル・アーティストとして知られるフリッチャーは、微妙な形が建築そのものと影響し合い、空間の感覚を刷新するような作品を制作している。

2010 エリザベス・S・クラーク (サヤ皮革工房)
2011 エミリー・ピトワゼ (ピエール=ベニト皮革工房)
2012 オリヴァー・ビアー (サンルイ・クリスタル)
2013 ガブリエル・チアリ (アトリエAS )

ジュゼッペ・ペノーネ Giuseppe Penone
1947年、イタリア、ピエモンテ生まれ。イタリア在住。アルテ・ポーヴェラ(「貧しい芸術」)の流れに属する彫刻家。ペノーネの作品は、彫刻について、また彫刻と人間と自然の関係について問いかけるものである。

2010 シモン・ブドヴァン (アルデンヌ皮革工房)
2011 小平篤乃生 (サンルイ・クリスタル)
2012 オ・ユギョン (ピュイフォルカ)
2013 マルコス・アビラ・フォレロ (ノントロン皮革工房)

エマニュエル・ソーニエ Emmanuel Saulnier
1952年、フランス、パリ生まれ。ソーニエは作品のなかで、抑圧、共同体の共犯関係、さまざまな地理的、歴史的文脈における記憶あるいは忘却といったテーマを追究している。

2010 オリヴィエ・セヴェール (サンルイ・クリスタル)
2011 セバスチャン・グシュウィンド (サン=タントワーヌ皮革工房)
2012 アンドレス・ラミレス (アトリエAS )
2013 アンヌ=シャルロット・イヴェール (ジョン・ロブ)

 

経験の夜明けと塩

「コンダンサシオン」展 キュレーター
ガエル・シャルボー

「最も長く夢想し、物質に価値を付与した人々の作品にわれわれのイメージを探し求めに行こう。錬金術師のもとに赴こう*」

芸術家とは作る人々である。常にそのことで頭がいっぱいで、そのため他の全ては当然ながら犠牲になる。芸術家が迷い、苦悩し、「何をすればいいのか、何を?」と自らに問いかけ、夜も憑かれたように考え続ける時でさえ、実は来るべき作品は既に準備されつつある。作品はいつでも生まれつつあり、形をとりつつある。
芸術家を助けるために私たちができることは何だろうか? それは、芸術家を理解しようとしたり裸にしようとしたり、論文を書いたり理論を組み立てたりすることではない。作品を宣伝したり、そう、できるなら売ったりすることを別にすれば、芸術家が創作活動を行えるようにすることが一番の手助けである。創作する者として腹の底から湧き出てくる、芸術家の最も自然な答えは、珍しいものではない。回りくどい言い方をされることもあり、はっきりと口に出されるとは限らないが、その答えとは、「仕事をさせてくれ!」である。
若い芸術家の創作の手助けをするというのは、彼らがこれからの人生で作ってゆく作品の織りなす迷宮の中で、いくつか近道ができるよう導くことである。例えば、新しい素材を提供したり、全身全霊で打ち込み、もてる限りの芸術的手段を用いて取り組まなければならない新しい問題(そうなると「これが何の役に立つのか?」といった問題は問題でなくなる)を提供したりすることだ。エルメス財団のレジデンス・プログラムでは、若い芸術家たちはエルメスの工房へ入り、優れた職人とともに働く機会を与えられる。目的は、視点や物語や技術を分かち合った結果として新しい作品を生み出すことである。このレジデンス・プログラムに参加する機会を得た造形作家たちは、リチャード・ディーコン、スザンナ・フリッシャー、ジュゼッペ・ペノーネ、エマニュエル・ソルニエという4人の著名な芸術家の助言を受けることになった。
若い芸術家たちは、都会の遠心力を逃れ、より秘密めいた、どこか時間の止まったような、工房という世界に入る機会を与えられた。革製品やシルク製品が作られる場所、ピュイフォルカの貴金属工房、そして、溶鉱炉から溶けた材料が昼夜を問わず流れ出す、サンルイのクリスタル工房の暗い深みにまで。

素材と製法
工房とは一体どんな場所なのだろうか。想像するのは難しい。動作、まなざし、技が一つのモノの上に集中し、そのモノは手から手へと移りながら、そのたびに姿を変え、育ってゆく。単純な美は、謙虚さと質素さから生まれる。ウィリアム・モリスの言葉を思い出す。「君の家に、有用でないもの、美しいと思わないものは何一つ置くべきではない」。この美というものは20世紀の芸術界では不信や疑惑の的となったが、職人たちの働く工房では、まるで嵐から守られる炎のように、中心となって燃え続けてきたのである。
芸術家は、素材へ傾ける細心の注意や、正確さと厳密さをこれほどまでに追求する情熱と近く触れ合ったとしても、単なる飾りだとか安心できる「綺麗な」作品に流れるわけではない。この体験の特殊性は、きわめて今日的な芸術的関心と、物質の変化についての深い知識とが一つのモノの周囲に集まり、創造性に溢れた緊張関係が生じるところにある。こうして、ガブリエル・チアリは顔料と結合材の大きな染みを織物で再現し、長い時間をかけ、細心の注意を払って一本一本織る。エリザベス・S・クラークは、白い革で完全に覆った直径4メートル以上の輪を制作する。協力した職人たちはこの作品のために全く新しい技術を編み出さねばならなかった。オリヴァー・ビアーと小平篤乃生は、ガラス吹き職人とガラス彫刻職人の傍らで、クリスタルの音響性を追究し、物理的耐性を試す。オリヴィエ・セヴェールはクリスタルを、意表を突く、あるいは同語反復的な形で提示し、マリー=アンヌ・フランクヴィルはクリスタルで拷問台の器具を形作る。ブノワ・ピエロンとアンドレス・ラミレスは繊細なシルクを、インダストリアルな素材で構築された複雑で多義的なインスタレーションに組み込む。彫刻や研磨にあたる職人のそばでは、オ・ユギョンとマリン・クラスが銀という金属を抽象彫刻の領域へ向かわせる。セバスチャン・グシュウィンド、エミリー・ピトワゼ、フェリックス・パンキエ、アンヌ=シャルロット・イヴェールは、革のあまり知られていない特性を生かし、その強靭さと柔軟性を試したり、セメントのような粗野で意表を突く素材と組み合わせたりすることにより、ハイブリッドな彫刻を制作する。シモン・ブドヴァンは皮革の性質そのものを裏返して鋳型として用いる。マルコス・アビラ・フォレロは革に装飾を施し、歴史の詰まったパレンケの太鼓に張る。

新しい音
このように、キュレーターに託された素材はユニークで貴重なものばかりである。本展覧会は、展示される作品もその数も先に決まっていたため、通常の展覧会とは逆向きの組み立てられ方をした。まさに夢を解釈する時のように、材料は全て、宙づりになった状態で揃っているのだが、物語の筋書きだけが見えないようなものだ。至る所に意味のつながりや反響、証拠、かたち、性質があり、一つに溶け合っているのだが、全てが何を意味するのかを解き明かすには、ゆっくりと澱を沈ませなければならない。「コンダンサシオン」は、銀河系か群島のような形態の展覧会だ。交流とコンテクストの大陸が共通の土台から盛り上がって出現し、基盤はつながっているのだが目には見えないのである。ここで、夢の言葉が錬金術の言葉と出会う。全ての作品はその表現であり、工房の物音――火がごうと燃え立つ音、銀の触れ合うカチャカチャという金属音、革を貫き通る針の音、裁断の前に検分される大きな革が擦れ合う音などが奏でる遠いコンサートから生まれたのだ。地図のような動物の形から鉱物の固定、換骨奪胎したおとぎ話の形をとったディスクール、エロティシズム、時間、空間、偶然。これらの作品は間違いなく、瞠目に値する荒々しい力を孕んでいる。それらは、正確な形を飽くことなく追求する意志(物質を最後に支配下に置くのはこれなのだ)を伴った思考の産物である。縮重、いす張り、染色、補強材、装身具、融解、はんだぬれといった、素人には耳慣れない名のさまざまな新しい音から生まれた作品なのだ。
こうして、変身の「今」が舞台に登場し、パレードが始まる。

* ガストン・バシュラール『空と夢――運動の想像力にかんする試論』法政大学出版局(叢書・ウニベルシタス)、1968年、392ページ

ガエル・シャルボー Gaél Charbau
1976年生まれ、パリ在住。同地を拠点として活動。
美術評論家、インディペンデント・キュレーター。雑誌『パーティクル』(Particules)を創刊、2010年まで主宰。2009年よりサロン・ド・モンルージュの編集ディレクターを務める。近年キュレーションを行った展覧会としては、リカール財団のRituels(パリ)、ダリア・ド・ボーヴェ(Daria de Beauvais)との共同キュレーションNeïl Beloufa, Les Inoubliable Prises d’Autonomie(パレ・ド・トーキョー)、アラン・ベルラン(Alain Berland)との共同キュレーションL’Arbre de vie(コレレージュ・デ・ベルナルダン、パリ)、The French Haunted House(ソンウン・アートスペース、ソウル)がある。