「木村伊兵衛のパリ」展 | エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Forum

「木村伊兵衛のパリ」展
Kimura Ihei in Paris: Photographs 1954-1955 by Konstantin Grcic

2006.10.28(土)~2007.1.21(日)

2006年10月、銀座メゾンエルメスのリニューアルオープンを飾る展覧会として、木村伊兵衛による1950年代のパリの写真展を開催いたします。 エルメスの2006年のテーマは「エール・ドゥ・パリ」、ありのままの「パリの空気」が持っている多彩な表情は、日常へとつなぎとめられ、かつ解き放たれる瞬間の連続で成り立っているともいえるでしょう。空気感を何よりも大切にした木村。彼による50年代のパリのカラー写真は、その雰囲気をあますところなく伝える幻の作品で、2004年アルル国際写真フェスティバルにて新たな評価を得ました。
カルティエ=ブレッソンを通じての、ロベール・ドアノーとの出会い。当時、職人街といわれたパリ19区メニルモンタンの下町の表情。移り変わる光の中で繰り広げられるささやかなワンシーン。

本展覧会は、2006年夏、朝日新聞社より出版された『木村伊兵衛のパリ Kimura Ihei in Paris: Photographs, 1954-1955』で紹介されている作品の中から選定された約100点で構成するもので、不変ともいえるパリの残像を現代のインクジェットの技術で再現しようという試みです。
展覧会の構成に際し、新進気鋭のインダストリアルデザイナー、コンスタンティン・グルチッチを空間デザイナーに迎え、新たな木村伊兵衛の世界を創造します。そこに見えるのは変わらないために変わり続けること、まさにパリの空気とともに進化し続けたいと願うエルメスからのメッセージでもあります。

アーティストメッセージ

パリへ

今のパリは天候すこぶる悪く暗やみのパリとなる。しかしパリ情緒は身にしみて来た。しぐれもようとでもいうのか、さあっと雨が降っては止み、時々雲の切れ間から太陽がさす。その瞬間はぬれた舗道が光ってみごとだ。良い場所でこんな瞬間にぶつかればしめたものだが、不幸にしてまだぶつからない。ここでよい写真をとるには相当ねばらなければだめなので、私のようなせっかちは我慢するのに一苦労する。気をながくしてパリの空気を身につけないといけないらしい。
(「撮影日記」『木村伊兵衛外遊写真集』朝日新聞社、1955年)


カルティエ=ブレッソンと

カルティエさんのパリの生活は非常に忙しくて、ゆっくりと話もできない始末であった。それを察して、よかったら4、5日、自分のいなかのうち(彼の仕事場)へ行って遊ぼうと誘ってくれた。場所はパリから自動車で3時間ほど行ったブロアという古い町である。その近くのルイ十四世の時の重臣が住まっていたシャトー(城)がそれである。


ブロアの町へ着いてから、私に写真を撮らせようと思った心づかいは身にあまる思いであった。実は欧州旅行でカルティエさんに対面する前は気持が落ち着かず、ろくな写真が撮れなかった。このブロアの町の親切さと、彼の撮影ぶりをみて、私の気持ちがパッと明るくなったせいか、それ以後はどんどん写真が撮れるようになった。
(「パリであった彼の印象 アンリ・カルティエ=ブレッソン」『カメラ毎日』1957年5月号、毎日新聞社)


ドアノーという人

裏街に行かぬとほんとのパリ祭の面影が残っていない。ドアノーは、昼間自身で私にみせようというところをすっかり自動車でロケハンしてくれ、そして前夜祭に、一緒にパリ情緒の残っているメニルモンタン(「赤い風船」のロケーションをしたところ)とサンマルタン運河付近(映画「北ホテル」でおなじみの場所)へ出かけた。

それについても面白いのは、ドアノーという人の人柄である。そういう下町の人に本当に可愛がられている写真家である。だから細い横丁に行っても、ドアノーは自動車で乗り入れるが、他のものが乗り入れようものならひっくり返される。ところがドアノーだといえば道を開いてくれる。自動車をなぜ乗り入れるのかというと、自動車の屋根に乗らないとうまく写せないのだ。彼の自動車の屋根には鉄のテスリがちゃんととりつけてある。私もドアノーと一緒に屋根に乗って写した。
(「ヨーロッパ撮影記」『木村伊兵衛第2回外遊写真集 ヨーロッパとその印象』1956年、朝日新聞社)
2006年10月28日

 

アーティストプロフィール Artist Profile

木村伊兵衛 Ihei Kimura

1901年、東京・下谷に生まれる。子供の頃おもちゃのカメラを手にして、写真に興味を持ち、成人してアマチュア写真クラブに入る。1930年、花王石鹸のためにリアルな広告写真を撮ることでプロとしての活動を始める。雑誌「光画」に発表した下町のスナップや「ライカによる文芸家肖像写真展」が話題を呼ぶ。以後「ライカ使いの名手」として戦前戦後を通し、スナップ、ポートレート、ドキュメントと多彩な分野で第一人者として活躍。東京人らしい「粋」と独自の「間」を持った写真は多くのファンを魅了した。1974年没。

コンスタンティン・グルチッチ Konstantin Grcic

1965年、ドイツ・ミュンヘン生まれ。英国のパーナムカレッジでキャビネット職人としての訓練を経て、88~90年までロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)でデザインを学ぶ。91年にミュンヘンに自身のデザインオフィスを設立。以来、クラシコン、フロス、クルプス、ラミー、マジス、無印良品など世界の多数のトップ企業とプロジェクトを展開している。2006年はロッテルダムおよびミュンヘンで大規模な展覧会を開催する予定。
 

開館時間 Opening Hours

月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日   11:00~19:00(最終入場は18:30まで)

基本情報 Information

会期
2006年10月28日(土)~2007年1月21日(日)
休館日: エルメス銀座店の営業日に準ずる
入場料:無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5‐4‐1 8階 TEL: 03-3569-3300)
空間デザイン: コンスタンティン・グルチッチ