「振動を宿すもの」 眞田岳彦展 | エルメス - Hermes

GINZA MAISON HERMÈS

Le Forum

「振動を宿すもの」 眞田岳彦展
La vibration refermée by Takehiko Sanada

2002.10.25(木)~12.29(土)

生と死とを隔てているのは、何か。眞田は事物が「ふるえている」か「ふるえていない」かがその違いだといいます。生物は「ふるえている」。たとえば光は身体を透過しますが、その光は電磁波であり、電磁波は波であり、波とは「ふるえている」ものです。その電磁波が無数に開いた皮膚の穴から循環し、内部を弱電流が流れることによって、「ふるえて」私たちは生きていることになります。

眞田の制作テーマは、身体を軸に様々な境界を融合させ、内と外とを開放するという志向をもちますが、身体とは生きているもの、つまり「ふるえている」ものと解釈されます。本展覧会では、ガラスブロック壁に囲まれたフォーラムは光を受け「ふるえて」いる身体空間と捉えられ、無数の穴を開けられた手紡ぎのウールがさながら皮膚のように内壁を覆います。ウールの皮膚の穴を通して空間は差しこむ光の振動をのみこみ、またのみこまれた振動は増幅し反復しながらやがて、内部空間に点在する獣毛フェルトの量塊に満たされます。鑑賞者は、壁面を覆う縮絨のウールによって身体空間の内側から光を受けとめながら、同時に肉体の象徴としてのフェルトの量塊を外側から眺めることになり、内にいながら外にある、というパラドキシカルな体験を味わうことになります。
境界が開放され、そこに現出する新たな空間は、、眞田が開放し融合させたいという境界と、身体を包む皮膚へと帰結します。
皮膚とは肉体と空間との境界であり、肉体を存在させるための「器」です。そのことは、作品に用いる素材が獣の原毛というケラチンを成分とするものであることにも表れています。
すなわち、眞田はそれを単なる素材としてではなく、生きている段階から確認し、その風合いから生い立ちや気候風土に想像を廻らせ、手で梳き、紡ぐ行為を通して一個の生命として扱うのです。ケラチンを紡ぎ、あるいはかためて出来上がる造形(器)は、眞田の手によってもとの姿から跡形もなく変質させ、解体され、再生した新たな生命/皮膚なのです。たとえば、一見「ふるえていない」羊毛フェルトの造形物であるが、これが「ふるえている」羊1頭とまったく同質量のモノとして作りあげられたとき、その造形物は再び私たちに境界への問いを喚起します。何よりも自らの身体を使ってモノを作り出すという行為自体、「生」という命題を孕むものですが、そのうえで眞田の表現行為は、紡ぐという原始時代にまで遡る最も素朴な手法と、圧倒的な素材の力で、正面から「生」を問い続けるのです。

アーティストメッセージ

生物、鉱物、物質、光。 すべては振動の差異からなる。

生命とは、私たち生物の身体感覚では、認識不可能な空間にある。

面体を区切る内と外は存在しない。内面は、外面へと続き、外面は、内面へと続く。
線は、集合体として面となり、存在の場を作る。
「私」と「他者」を区切るものも無く、全てに共有された面、あるいは場に、私たちは外包、内包され存在する。

身体にある、目、口、鼻、皮膚や、表皮にある無数の孔は、光を透過し、身体内部にある世界と、外部の環境とを繋ぐ「開かれた」場、「生命を開放」する場となる。

眞田岳彦
2002年10月​

アーティストプロフィール Artist Profile

眞田岳彦 Takehiko Sanada

1962年東京生まれ。桑沢デザイン研究所卒業。1992年より、アラスカ最北端ポイントバローを始め世界十数カ国を旅する。1995年までグリーンランド、イギリスに滞在。彫刻/造形技術をアートカレッジの短期技術コースで学び、彫刻家リチャード・ディーコンの助手を務める。以降、原毛を梳き、紡ぐという手仕事の中で物質との対話を重ねながら概念を形づくっていく制作表現を行なっている。2001年より女子美術大学芸術学部助教授、桑沢デザイン研究所非常勤講師。

 

開館時間 Opening Hours

月~土 11:00~20:00(最終入場は19:30まで)
日   11:00~19:00(最終入場は18:30まで)

基本情報 Information

会期
2002年10月25日(木)~12月29日(土)
休館日: エルメス銀座店の営業日に準ずる
入場料:無料
会場: 銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都中央区銀座5‐4‐1 8階 TEL: 03-3569-3300)
企画協力: 米山佳子